
サイ・ヤング賞候補のミジオロウスキーを中心にチームで隙のない野球をし、現地時間9月7日時点で、ナ・リーグ最高勝率のブリュワーズ。相手チームからも徹底ぶりに称賛の声もあるが、数字としても結果を残している
ポストシーズンでドジャースが最も警戒すべき相手はどこか。ブレーブス、フィリーズも強い。
だが現地時間9月7日終了時点でナ・リーグ最高勝率を誇るのは、89勝56敗のブリュワーズだ。ドジャースを上回り、投手陣にはサイ・ヤング賞候補の剛腕ジェイコブ・ミジオロウスキーもいる。8月の直接対決でもドジャースは1勝3敗と負け越した。
カブスのクレイグ・カウンセル監督は、9月の古巣との対戦後にこう語った。「彼らに勝つには、ほとんどすべてを正しくやる必要がある」。その強さをドジャース側も認めている。クリス・ウッドワード一塁ベースコーチは筆者に「彼らの野球は好きだ」と切り出した。
「全力でプレーし、走塁も優れている。打席の質も高く、簡単には屈しない。投手陣もブルペンも良い。すべての要素で大きなプレッシャーをかけてくる。特定のスターだけではなく、それをチーム全体でやっている」
打者は四球を選び、左右を問わず逆方向へ打つ。2ストライク後も粘る。そして出塁すれば、投手と守備に休む暇を与えない。
「彼らはほぼ一番から九番まで走れる。投手のモーションが大きいと、二塁も三塁もと、次の塁を積極的に狙ってくる」
その印象はスタットキャストにも鮮明に表れる。今季の走塁得点価値(Baserunning Run Value/選手やチームの走塁が、平均的な走者と比べて得点を何点増やしたか、または減らしたかを示す指標)はブリュワーズが+8.6でメジャー3位。ドジャースは+2.4で22位だ。盗塁を除き、安打や外野への打球で余分な塁を奪った価値は、ブリュワーズが+7.0で両リーグトップ。ドジャースは+1.0で13位だった。
ブリュワーズの怖さは、単に盗塁が多いことではない。外野手の位置や肩、送球を見て、もう一つ先の塁を奪う。規定となる10回以上の競争的走塁(competitive run/走者が本気で走る必要のあったプレー。具体的には本塁打を除き、二つ以上の塁を走ったプレー、さらにはボテボテのゴロや弱い打球で、本塁から一塁まで走ったプレー)を記録した選手では、ブリュワーズは18人中12人がスプリントスピード28フィート毎秒以上。ドジャースは20人中4人にとどまる。
しかし、長打力ではドジャースが上だ。予測長打率(Expected Slugging Percentage/打球速度、打球角度などから算出)はドジャースが.428でメジャー1位、ブリュワーズは.394で16位。バレル率も8.5%対7.3%だった。
「私たちには素晴らしい打者がそろっている。彼らには私たちほどの長打力はない。でも、それを別の方法で補っている」とウッドワードコーチ。ドジャースがひと振りで試合を動かすなら、ブリュワーズは9人全員で90フィート(約27.43メートル)を積み重ねる。
カブスの左腕、
マシュー・ボイドも「彼らは絶対にあきらめない。守備、走塁、投手のゾーン内での勝負、打者のゾーン管理と、野球のあらゆる部分を非常にうまくやる」と評した。投手陣が試合をロースコアに持ち込み、攻撃では相手の小さな隙を得点に変える。ウッドワードは「私たちの投手陣なら抑えられると思う。ただ、簡単に勝てる相手ではない」と警戒する。
首位ブリュワーズの強さは、スターに頼らず、9人全員が相手に「ほぼ完璧」を要求するところにある。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images