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【MLB】ガーディアンズ・クワンが「パワー」を捨てて蘇った理由 現代野球が教える「自分だけの正解」

 

並外れたコンタクト力と守備力でメジャーの舞台で活躍するガーディアンズのクワン。パワーが重要視される現代において、自身の強みを生かし、存在感を出している


 アメリカ野球専門サイト「ベースボール・プロスペクタス」のマシュー・トゥルーブラッド記者が「The Power of Giving Up(あきらめることの力)」と題して、ガーディアンズのスティーブン・クワンの興味深い変身を取り上げている。

 現地時間6月21日時点で打率.206、出塁率.316、長打率.251。メジャー屈指のコンタクトヒッターが、前年後半からほぼ1年間にわたって低迷していた。ところが翌22日に左腕先発を相手にスタメンを外れてから一変。その後は打率.345、出塁率.432、長打率.421と本来の姿を取り戻した。何を変えたのか。答えが面白い。新しい武器を手に入れたのではない。逆に「パワー」を捨てたのである。

 もともとクワンは空振りが極端に少なく、広角に打ち分けるタイプだった。しかし長打全盛の時代である。本人も「リーグは長打で動いている」と考え、2024年にはバットスピードと打球速度の向上に取り組んだ。打者有利のカウントではコンタクトを優先せず、強く振って引っ張った打球を上げる。その試みは成功し、自己最多の14本塁打、打率.292、OPS.793を記録した。

 ところが25年後半から歯車が狂い始めた。同年は右手首を痛めた影響もあったが、翌26年に入るとさらに深刻になった。春には再びバットスピードを上げるトレーニングに取り組んだが、結果につながらない。

 そこでクワンは再度方向転換した。「大きな転換は24年のアプローチから離れることだった」と本人は振り返っている。速球を無理に引っ張らず、ボールを深くまで呼び込み、逆方向からセンターへ運ぶ。空中へ引っ張ることもやめ、ライナーを打つことに徹した。

 結果は現代野球の常識とは逆だった。6月22日以降の平均バットスピードは62.1マイルでメジャー最遅。アタックアングル(インパクト時のバットの入射角)も0度で最も低い。それでもヒットが出るようになった。強く振らないからこそ、クワン最大の武器であるバットコントロールがよみがえったのである。

 今季はわずか3本塁打、平均打球速度83.7マイル、バレル率0.4%。いずれも最低レベルだ。それでも打率.277、出塁率.375。守備力にも優れ、ベースボールリファレンスのWARは5.0。総合的には十分に価値のある野手であり続けている。

 この話から思い出すのがイチローだ。打球速度や長打が重視される現代なら、単打の多かったイチローは昔ほど活躍できないという議論がある。しかし今回のクワンの例を見ると、そんなに単純な話ではないと思う。もちろん2人は同じタイプではない。イチローの武器は単打そのものではなく、並外れたバットコントロールで難しい球までとらえ、俊足で凡打になりそうな打球まで安打に変える能力にあった。

 しかも非力だったわけではなく、必要なら引っ張って本塁打にする力もあった。もし今、現役だったなら、データを生かして打者有利のカウントや得意なゾーンでは強く振り、追い込まれればコンタクトに徹する。そんな打撃に進化していた可能性もある。

 すべての打者に同じ正解があるわけではない。クワンはパワーを捨て、自分最大の武器を取り戻した。「現代ならイチローは通用しない」のではなく、現代なら現代に合った「イチローにしかできない打撃」を完成させていたのではないか。そう想像するのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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