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【MLB】レイズとブリュワーズが変える MLBの勝利の方程式

 

長打で得点を奪っていくのが得点効率がよいとデータが示す野球をする現代。だが、個々の適材適所で最大限の力を発揮しチーム野球で戦う2チームが今年のワールド・シリーズに進出


 資金力で劣る2球団が、メジャーの頂点を争う。現地時間10月19日、レイズがア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)第6戦でガーディアンズを7対3で破り、6年ぶり3度目のワールド・シリーズ進出を決めた。ナ・リーグではブリュワーズがドジャースを4連勝で退けた。ともに球団史上初の世界一を目指す両チームの対決は、現代MLBの新しい潮流を象徴するものになるかもしれない。(※ブリュワーズが現地時間10月28日、レイズを通算4勝1敗で下し、球団史上初のワールド・シリーズ制覇を達成)

 レイズの野球を象徴していたのがALCS第5戦だった。3対1で勝った試合で12安打のうち10本が単打。内野安打や四球を絡め、少しずつ得点を重ねた。第2戦では俊足チャンドラー・シンプソンが高く弾むゴロを内野安打にすると、一塁走者ビクター・メサJr.は三塁のベースカバーがいない隙を見逃さず、一気に三塁へ進んだ。

 一方、第6戦ではジュニオール・カミネロとヤンディ・ディアスが終盤に2ランを放った。走塁やコンタクトだけでなく、長打でも勝てる多彩な攻撃が持ち味だ。しかし、レイズの本当の強さは、個々の選手が万能でなくても、異なる能力を組み合わせることでチーム全体の力を最大化できる点にある。シンプソンの走力、テーラー・ウォールズの守備力、カミネロの長打力。それぞれに得意、不得意があるが、適切な役割を与えれば大きな戦力になる。

 開幕時の年俸総額は約9100万ドルで、同地区のヤンキースの1/3以下。生え抜き選手の割合もわずか18%だった。他球団で評価されなかった選手を獲得し、能力を引き出して戦力に変える。メッツで不振だったフレディ・ペラルタはチェンジアップを磨いて復活し、ALCSのMVPに輝いた。まさに「継ぎはぎ」のチームだが、それは弱さではなく、強さを生み出す方法なのである。

 その背景には独特の組織文化がある。選手の弱点をすべて矯正するのではなく、長所を見抜き、最も力を発揮できる役割を与える。元日本ハムのニック・マルティネスは投球能力だけでなく、チームメートを結びつける人間性も評価されて獲得された。高度なデータ分析を使いながら、選手の個性を尊重し、互いの信頼関係を築く。データと人間性は対立するものではなく、互いを補い合っている。

 この哲学はブリュワーズとも重なる。積極的な走塁で「90フィートを奪う野球」を展開し、強力なドジャースを圧倒した。走力、守備力、コンタクト、パワーを組み合わせ、チーム全体で勝つ。興味深いのは、ブリュワーズで8年間プレーしたペラルタが、レイズの育成方法について「両球団はとてもよく似ている」と語っていることだ。

 ブリュワーズの編成トップ、マット・アーノルドもレイズ出身。ESPNのジェフ・パッサン記者は、両球団を定義するのは「どれだけお金を使うかではなく、何を生み出すかだ」と指摘した。近年のMLBでは本塁打と三振が増え、スター選手の圧倒的な能力が注目されてきた。しかし、両球団が示しているのは、昔ながらのスモールボールへの回帰ではない。データ分析を駆使して選手の能力を引き出し、それぞれの個性を組み合わせる、現代的な総合野球である。レイズとブリュワーズの対決は、野球という競技にまだ十分に引き出されていない可能性があることを教えてくれる。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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