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キーマンインタビュー2024

ヤクルト・高橋奎二インタビュー 新しい自分に出会う「良かったころに戻すのではなく、今の自分を理解して、どう投球につなげていくか」

 

次期エース候補と言われて何年がたっただろうか。通算22勝22敗。期待の大きさからしてみれば、これまで残してきた成績には物足りなさが残る。Bクラス転落から2年ぶりのペナント奪取へ、誰もが待ち望んでいるのが左腕の完全開花だ。この男の快投なくして、歓喜の秋は想像できない。
取材・構成=小林篤 写真=宮原和也、高原由佳、BBM


手応えありの春


 2023年は実りの1年となるはずだった。21、22年と日本シリーズで好投し、23年開幕前には侍ジャパン日本代表の一員としてWBC世界一を経験。しかし、シーズンでは持ち味のストレートが精彩を欠くなど本来の姿とは程遠く、成績は4勝9敗。負けが大きく先行し、リーグ3連覇に挑んだチームも5位に沈んだ。「負けてチームは強くなる」とは高津臣吾監督の言葉。過去は変えられないが、生かすことはできる。高橋奎二も昨季の経験を糧にしながら、今年こその思いで開幕へ向けて準備を進めている。

──WBCに出場した昨年とは違い、ペナントに照準を合わせて春季キャンプを過ごせたのではないでしょうか。

高橋 そうですね。それこそ去年はWBCに向けて調整も早かったですし、中継ぎでの対応という違いもありました。今年はWBCもないですし、自分のペースで調整を進めることができています。

──昨年は4勝9敗の成績に終わりました。結果から見ても、投球の感覚はよくなかったのでしょうか。

高橋 率直に言うと、投球に対してはキャッチボールも含めて、いい感覚が一度もありませんでした。

──それは投球フォーム自体の感覚がよくなかったのでしょうか。

高橋 速い球を投げたい気持ちが強いあまり、フォームを崩していきました。また、WBC球に苦戦したのもあります。前年(22年)の良かったころのフォームに戻そうと試行錯誤したのですが、バラバラになってしまって……。最後まで治ることはなくシーズンが終わってしまいました。

昨季はリーグワーストの20被本塁打。不本意な結果は受け止めつつ、力に変えていくしかない


──これまでは速い球を投げたい気持ちを持ちつつ、納得のいく球が投げられていたのでしょうか。

高橋 速い球というより、真っ向勝負をしていく気持ちですかね。ただ、去年に関しては勝負に挑んでも打たれてしまいました(昨季ストレート被打率.276)。そこで、「去年(22年)、一昨年(21年)とは違う球なんだ」と気づき、いろいろと試したのですが、どれもうまくフィットしなくて。打たれると、速い球を投げたい思いも強くなり、さらにフォームが乱れてしまう悪循環でした。

──昨季はポストシーズンの戦いがありませんでした。長いオフ期間は何を考え、意識して取り組まれたのでしょうか。

高橋 まずはしっかり休むことを一番に過ごしました。また、新しいことも取り入れようと思い、ジムを新しく変更して、今までとは違うメニューにも取り組みました。

──どういったメニューに取り組んできたのでしょうか。

高橋 今までは高負荷のウエート・トレーニングで体の土台をつくっていたのですが、今回は野球のプレーにつながる動作に対して少しの重りを担ぐことがメーンになりました。より野球に特化したトレーニングを取り入れました。

──野球に特化したトレーニングはこれまでは少なかった、と。

高橋 そうですね。シーズンを通して腰痛に苦しんでいて、パフォーマンスを発揮できない悩みがありました。どうしても、力が抜けて腰に負担がかかる癖があったので、その点をトレーナーさんと相談して、腹圧を入れながら行うメニューを取り入れたりしました。

──オフを終えて、春季キャンプでの投球の手応えはどうでしたか。

高橋 手応えは感じています。自分のやりたいように投げられているのかなと。クールが経つにあたって、キャッチボールの感覚も、ピッチングの精度も徐々に良くなってきました。出力をもっと高くできる感覚もあります。力を入れずにいい球を投げることをこのオフにしっかり取り組んできたので、そこが徐々に結果として出てきているのかなと。

ペナントレース一本で調整を進めた春季キャンプでは、キャッチボールから手応えのいく球を投じた


──目指すのは、これまでの良かったころを取り戻すのか、また違った新しいものをつくるのかどちらになりますか。

高橋 これまでとは違う自分になりたいと思っています。去年に関しては、22年の自分を追い求め過ぎて失敗してしまったので。目指すのはそこではないと感じたんです。毎年体の状態は違ってきますし、今年に関してはトレーニング法も変わっています。良かったころの昔の自分に戻すのではなく、今の自分の体を理解して、それをどう投球につなげていくか。そこを目指してやっています。

結果を残すしかない


 昨季はチーム防御率、先発防御率ともにリーグ最下位に終わっただけに、投手陣の奮起は必須。もちろん高橋にも先発の柱としてフル回転が求められる。過去8シーズンで規定投球回到達は一度もないが、春季キャンプ、オープン戦の投球を見れば、今年こそと思わせる雰囲気が漂う。「あいつは先発しかできないから」と言うのは指揮官。このメッセージは先発として一本立ちしてほしい切実な願いだ。その思いに今年こそ応えたい。

──「力を入れずいい球を投げる」とありましたが、力感ある投球が高橋投手の持ち味でもあると思います。

高橋 力が入るところは入りますけど、それでは(体力が)持たないので。力を入れなくてもいい力感で、いかにキレのあるボールを投げられるかを追い求めていきたいんです。あとは変化球も握りを変えたりして取り組んでいます。徐々に完成していければ、また新しい自分に出会えるのではないかと思います。

──握りを変えるのは、どの球種ですか。

高橋 スライダーですね。それこそWBCでダルビッシュさん(ダルビッシュ有、パドレス)にアドバイスをいただいたので。どうすれば自分の理想どおりに曲がるのか、1球ごとに角度であったりを確認しながら、どれが一番いいかを探っています。

──理想のスライダーはどういう変化球になりますか。

高橋 どちらかと言うと縦気味に曲がるスライダーですね。スピードも求めていて、130キロぐらいは欲しい(昨季平均球速125.9キロ)。カウントも取れて、空振りも奪える球を目指しています。

──新しい高橋投手が見られる期待も膨らむ今季ですが、今年で27歳と中堅選手へと移行していく時期でもありますね。

高橋 27歳の年になると言われたら、結構年を取ったなと思いますね。ただ、ランニングをしていても年下の選手にはまだ負けていませんし、気持ちでは23、24歳ぐらいだと思ってやっています(笑)。年下の選手もどんどんと力が伸びてきていますし、そこに負けないようにしたい。というよりも僕が抜いていく気持ちでやらなければいけないとも思っています。

──後輩に負けないことよりも、先輩を追い抜く気持ちが大事だと。

高橋 先発投手だと、石川(石川雅規)さんや小川(小川泰弘)さんが長年チームを引っ張られている中で、そこに頼ってばかりではいけない。僕たち世代がもっとレベルを上げて追い越していかないとダメだと思っています。僕がその1人として引っ張っていければ、僕だけではなく、チームも強くなっていくと思いますから。

──期待されるのは先発ローテの一角で1年間を投げ抜くことだと思います。実現へ大切にしたいことは何でしょうか。

高橋 負けてしまった、打たれてしまったときは次の登板まで、練習をすごく頑張るんですけど、勝ったときはどうしても気持ちが抜けやすくなってしまいます。そこでいかに気を引き締められるか、ですかね。いい投球をしたときこそ次へ向けて「もっとレベルアップしないと」という気持ちにならないと、そのままズルズル行ってしまう。勝ったからOKじゃなくて、勝ったときこそもっとやる。でないと上達はしていかない。1試合を大切に、そこに向けての1日も大切に過ごしていきたいです。

3月3日の中日とのオープン戦[バンテリン]では3回完全投球と相手を圧倒。最速151キロを計測したストレートで押しこんだ


──V奪回へ、高橋投手にかかる期待も大きいと思います。そのプレッシャーとはどう向き合っていきますか。

高橋 期待をプレッシャーに感じることはありません。日本シリーズの舞台でも、普段通りに投げてきました。もちろん、緊張することはありますよ。でも「やばい、どうしよう」のようなマイナス方向に動くようなことはない。いい緊張感を持って投げたいと思います。

──契約更改交渉後の会見では、「死に物狂いで」という言葉もありました。今季にかける意気込みを教えてください。

高橋 去年は1試合もいい投球ができず、悔しいシーズンでした。ただ、その中で悪いなりにもいろんなことを試すこともできましたし、新しい発見もありました。伊藤(伊藤智仁、投手)コーチには「生かすか生かさないかは自分次第だ」と言っていただきましたし、今年はやり返す気持ちでいます。力を伸ばしている若い選手にも負けてはいられません。結果を残すしかない立場であることは自覚しています。チームのために、そして自分のためにも、しっかりと腕を振りたいです。

気迫のこもるブルペン投球からも、今季に懸ける強さや思いがひしひしと伝わる


──毎年、目標の数字を掲げてシーズンに臨んでいましたが、今年は目標をどこに設定しますか。

高橋 数字に関しては、今年は設定しないでおこうかなと思っています。毎年のように『2ケタ勝利』と言ってきましたが、実現することは簡単ではないのは分かっています。ただ、1試合1試合を大切に投げていけば、自ずと結果もついてくると思っています。とにかくやり返す気持ちで、投げたいと思います。

【S担の視点】「自分のため」の先に


 敬語の中に混ざる関西弁よりも印象に残ったのが、家族に対しての思い。インタビューでは時折「家族」というコメントが飛び出す。オフの出来事を振り返ってもらったときも、練習内容ではなく「家族サービス」のフレーズが一番に出た。20年以上の野球生活で変わりゆくものを問えば「自分のためじゃなく、家族のためにという気持ちになったことですかね」。夫として、1児の父として。「自分のためにも腕を振りたい」の言葉の先には、大切な存在が見えた。(AK)

PROFILE
たかはし・けいじ●1997年5月14日生まれ。京都府出身。180cm83kg。左投左打。龍谷大平安高では2年春に同校初のセンバツ優勝に貢献。2016年にドラフト3位でヤクルトへ入団。3年目に一軍デビュー。日本一を達成した21年は日本シリーズ第2戦でプロ初完投初完封を挙げ優秀選手賞を獲得した。22年は自己最多8勝を記録し、日本シリーズでは2年連続白星。昨季は侍ジャパン日本代表としてWBC世界一を経験も、シーズン成績は振るわず。今季は先発投手陣の柱としてフル回転の活躍が期待される。
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