昭和世代のレジェンドの皆さんに、とにかく昔話を聞かせてもらおうという自由なシリーズ連載。巨人、近鉄で渋い左打者として活躍した淡口憲治さんの2回目は入団したころの巨人と、同期の湯口敏彦投手の思い出を伺いました。
文=落合修一

湯口とは同じ部屋だった

──1971年にドラフト3位で三田学園高から巨人へ入団しました。

淡口　6年連続優勝した時点での入団です。強かったです。不安だらけでした。巨人の外野は柴田勲さん、高田繁さん、末次民夫(のち利光)さんと固まっていて、レギュラーを獲るのは難しい。でも大学に進んだつもりで4年間は頑張ってみようと思い直しました。

──実際に入って、どうでしたか。

淡口　最初はファームです。1年目(71年)の一軍出場は2打席だけ。それでも2年目、3年目と徐々に試合に出ることが増えていきましたね。一軍を経験すると、ファームとの待遇の違いを実感するわけですよ。これは一軍にしがみつかないといけないと必死になりました。

──やはり違いましたか。

淡口　遠征の移動やホテルが違うし、食事も違う。何より、一軍選手には自分の時間がありました。二軍の若手だと練習道具の後片付けをしたり、ボールを拭いたり、チームのための雑用があるんです。一軍では自由な時間にテレビを見たり、思いついたらバットを振ることもできる。

──間近に見た長嶋茂雄さん、王貞治さんはどうでしたか。

淡口　やっぱりスーパースターでしたよ。テレビで見ていたとおり。声も掛けられなかったです。そばを歩いてきたら直立不動。ロッカールームで着替えている姿さえもスターでした。何なんだろう。何をしても輝いているし、自然体だけどオーラがあったんですよね。

──なるほど。ところで、淡口さんと同期のドラフト1位で73年3月22日に亡くなった湯口敏彦投手(岐阜短大付高、現岐阜第一高)について、覚えていることを教えていただけますか。

淡口　寮では2人部屋で、湯口はルームメートでした。入寮した日に「明日からプロの練習、頑張ろうな」と誓い合ったのを覚えています。彼はその年の「高校生三羽ガラス」の1人と言われていただけのことはあり、何球投げてもバテないし、いい球を投げていました。

──どういう性格の方でしたか。

淡口　食べ物に執着する人でした。多摩川の二軍の試合で・・・