
享栄高からドラフト1位で入団した中日・近藤真一は巨人の最後の打者・篠塚利夫を見逃し三振に打ち取るとガッツポーズを見せた[捕手・大石]
試合開始の2時間前に先発を告げられる
「今日、投げてみるか?」
中日のルーキー・近藤真一が投手コーチの
池田英俊からその日の先発を告げられたのは、練習が終わった午後4時過ぎのことだった。試合開始は午後6時20分。直前と言っても過言ではない。近藤は一瞬絶句した。
1987年8月9日。その日、ナゴヤ球場では中日対巨人の一戦が行われることになっていた。3連戦の3戦目である。ここまでの対戦成績は1勝1分け。3.5ゲーム差で首位巨人を追う中日としては、絶対に落とせないゲームだった。
二軍では7試合に登板し3勝0敗、防御率1.29と結果を出していた近藤だったが、前日に登録されたばかりの一軍ではまだ1試合も投げていない。こんな大事な試合にオレでいいのか……と思った。それでも近藤は「投げさせてください」と答えた。
「ゲームが始まるまでの2時間がものすごく長く感じました。めちゃくちゃ緊張していました」(近藤)
近藤が先発に選ばれた理由。それはほかにいなかったからである。当初先発として考えていた
江本晃一は、延長戦に突入した2戦目の10回にリリーフで投げてしまっていた。その試合のあと、池田はナゴヤ球場の風呂場で監督の
星野仙一に明日の先発はどうするかと聞いた。湯船に浸かっていた星野は平然と返した。
「池さん・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン