楽しみながらも厳しい競争世界に身を置いたからこそ分かることがある。人生の中でつらく苦しいときが必ずあることを。それでも根底に「楽しい」と思えるからこそ踏ん張れる。野球でも同じだ。まずは小さいころに本当に野球が楽しいと思える時間をつくる。 文=椎屋博幸 写真=BBM 
みんな笑顔でピースをする子どもたち。楽しさが伝わってくる
自ら率先できる空気感
楽しくないと子どもたちは積極的に行動には移せない。自分の意見も言葉にして出てこない――。「オレがベースコーチやるよ」「いや、オレがやるよ、〇〇はバッターが回ってくるからさ」。自ら率先してランナーコーチスボックスへ向かう子どもたちがそこにいた。
「一塁ベースコーチは何をやっているんだ!」「何で三塁ベースコーチは走者を回さないんだ!」と首脳陣が、厳しい声を投げかける学童野球チームもまだまだ多い。コーチに指名された選手がコーチスボックスに向かい緊張の面持ちで立っている。“間違ったら怒られる”という恐怖心で、大きな声は出せない。
そんな悲壮感など一切ない空間が出来上がっている。「回れ! 回れ!」の声がグラウンドに響く。走者も果敢にホームを狙っていく。躍動する選手たちがフィールド内を駆け巡る。それを見守る父親、球場の外では母親も笑顔で見守っている。
GAA Baseball Clubはチームとして毎週土曜日、2~3時間のみの活動。各連盟には所属せず、大会にも出場していない。年に数回、練習試合を組めるかどうか、だという。現在の学童チームの多くは、土日の週末をすべて使ってしまい、中には両親の負担の大きいチームもいまだにある。家族の時間が減る傾向があり、共働きが増えている現代では、家族旅行などの時間が取れない状況がある。
さらに練習には参加するけれど、勝利至上主義のため試合に出られない子どもたちもいるのが実情だ。その現実が地域に知れ渡り・・・
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