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荒木大輔のPitching Analysis

巨人・井上温大 力強いボールが魅力的な左腕 経験を積めば先発3本柱の一角に入る可能性も/荒木大輔のPitching Analysis

 

自己最速の153キロを記録するなど抜群のボールを投げ込んだ井上[写真=矢野寿明]


 前半戦最後のカードであるヤクルト戦(神宮)で初戦の巨人の先発を任されたのが4年目左腕・井上温大投手でした。今季2試合目の登板で初回から自己最速の153キロをマークするなど、150キロ超えを連発。この試合での直球の平均球速は149.3キロでしたが、その力強さには目を見張るものがありました。何よりも空振りが奪える直球である点が素晴らしい(今季は直球を77球投げ、奪空振り率は9.1%)。身長175cmと上背はありませんが、低い位置からの独特な直球の軌道も打者がとらえ切れない感じなのでしょう。

 ただ、まだ安定感という面では物足りなさがあります。例えば初回、一死一塁の場面で三番・サンタナ選手に対しては初球のスライダーが外角低めへのボール球となりましたが2球目から直球を外、内と投げ込みカウント1-2と追い込みました。勝負球の4球目も直球でしたが外角いっぱいに構えた大城卓三捕手のミットに寸分違わず投げ込み、サンタナ選手はまったく反応できず見逃し三振に。これは素晴らしい投球でした。しかし続く四番・村上宗隆選手も空振り三振でしたが、最後はすっぽ抜けたスライダー。いいボールと悪いボールがまだはっきりしています。

 変化球もチェンジアップはよく抜けてキレ味がありますが、スライダー、カーブはコントロールし切れていません。そのあたりがレベルアップしていけば、勝てる投手になっていくはずです。

 対するヤクルトの先発は新外国人左腕のピーターズ投手でした。この日は制球力が抜群。7回3安打1失点で4勝目を手に入れましたが、井上投手との違いは力任せのピッチングだけではないというところです。

 例えば4回、巨人のクリーンアップを三者凡退に打ち取りましたが、三番・秋広優人選手、五番・大城卓選手に対するピッチングが見事でした。秋広選手にはカウント1-1からツーシームをうまく打たせて詰まった二ゴロ。大城選手にはカーブを2球続けてカウント2-1となったところで内角低めへ直球を投げ込み、こちらも詰まった二ゴロ。打ち気を誘ったり、緩急を使ったり、経験が詰まったピッチングでした。

 井上投手は4回、前の打席で三振を奪った先頭のサンタナ選手に二塁打を浴びたのをきっかけに2失点。やはり“勢い”だけでは2、3巡目で主力級を抑え切ることはできません。これから経験を積んで、ピッチングを覚えていく必要はあります。

 この日は4回73球でマウンドを降りましたが、まだまだ投げられるスタミナは感じられました。前半戦最後のカードで中継ぎ投手をつぎ込める状況にあり、余力を残しながらも早めの交代となったのでしょう。ただ、大いなる可能性を秘めているのは間違いありません。順調に成長を果たしていけば、先発3本柱に名を連ねてくれそうな期待感にあふれている左腕なのは確かです。

■7月15日ヤクルト戦の井上温大の球種リポート

※データ提供=Japan Baseball Data


■7月15日ヤクルト戦の井上温大の投球成績

PROFILE
荒木大輔/あらき・だいすけ●1964年5月6日生まれ。東京都出身。早実から83年ドラフト1位でヤクルト入団。96年に横浜に移籍し、同年限りで引退。その後は西武、ヤクルト、日本ハムでコーチを務める。現役生活14年の通算成績は180試合登板、39勝49敗2セーブ、359奪三振、防御率4.80。
荒木大輔のPitching Analysis

荒木大輔のPitching Analysis

高校時代は甲子園で活躍、プロ入り後は主にヤクルトで現役生活を送り、西武、ヤクルト、日本ハムでコーチを務めた荒木大輔氏が鋭い視線でピッチングを分析する。

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