
1994年、中日との「10.8」決戦を制して名古屋の夜空に舞う長嶋茂雄監督。日本球界が最高の盛り上がりを見せた
球史に残る「10.8」
【90年代成績】715勝600敗2分勝率.544(リーグ1位) 10年のうち7年間の長嶋政権下で数々のドラマチックなシーンが印象に残る90年代は、藤田
巨人の圧倒的強さから始まった。90年は前年優勝の勢いのまま88勝42敗、2位・
広島に22ゲーム差をつける史上最速V。2ケタ勝利5人、チーム完投数70の史上最強投手陣が原動力となった。しかし、日本シリーズでは一転、
西武に4連敗の屈辱を味わう。悪夢を引きずるかのように91年は攻守に精彩を欠き、12年ぶりのBクラスに転落。
92年は序盤、最下位に低迷するも、西武から移籍してきた救世主・
大久保博元の活躍で盛り返して同率2位に。
藤田元司監督はこの年限りで退任し、長嶋茂雄監督が13年ぶりに現場に戻ってきた。甲子園のスター、星稜高の
松井秀喜をドラフトで引き当てる強運も発揮し開幕前から話題を独占したが、優勝争いには絡めず3位に終わる。敗因はリーグ最少得点、12球団最低打率の貧打だった。FA制度が導入されたオフには、打線強化に
落合博満を補強。以降、FAで多数の大物選手を獲得していく。ドラフトでも93年から逆指名制度がスタート。巨人にとって戦力補強に有利な追い風が吹いていった。
球団創立60周年の記念イヤー94年は、球史に残るシーズンとなった。打線の爆発で開幕ダッシュに成功すると、5月18日の広島戦で
槙原寛己の完全試合達成など投手陣も踏ん張り首位を独走。しかし、夏場から調子を落とし、残り5試合で2位・中日に並ばれる。10月8日の最終戦で、史上初の同率首位同士の直接対決が実現。日本中が注目した世紀の一戦に勝利して劇的優勝を果たすと、日本シリーズでも長嶋巨人初制覇を遂げた。
大型補強を敢行した95年は3位に終わるも、
斎藤雅樹が投手タイトル独占の好投。最終戦で
原辰徳が「私の夢には続きがあります」の言葉を残し、現役生活に別れを告げた。
「メークドラマ」完結
96年はまたもや球史に残る展開が待ち受けていた。7月上旬には首位・広島と11.5ゲーム差をつけられ優勝は絶望的と思われたが、ここから60試合を43勝17敗と大反撃。リーグ史上最大のゲーム差を逆転して優勝を成し遂げ「メークドラマ」が完結した。プロ4年目、開幕四番も務めた松井がMVPを受賞。日本シリーズは
オリックスに敗れるも「絶対にあきらめない」ミスターの執念が実ったリーグVだった。
西武から
清原和博を獲得してさらなる補強を試みた97年は4位。清原は四番の重圧に苦しみ、
桑田真澄は683日ぶりの勝利をマークした。98年は東京六大学の本塁打記録を塗り替えたドライチ・
高橋由伸が打率.300と非凡なセンスを見せ、松井が34本塁打、100打点で初の本塁打王&打点王の2冠を獲得した。99年はルーキー・
上原浩治が大車輪の活躍。最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の3冠に、沢村賞と新人王を獲得しタイトルを総ナメしたが、上原以外の先発陣は不調で2位に終わった。
優勝3度と日本一1度を成し遂げた90年代。Bクラスは2回のみで安定した強さを誇ったが、FAとドラフト逆指名制度導入による戦力の偏りも浮き彫りとなった。
■年度別成績 ■90's GIANTS ベストナイン ■ベストオーダー △は左打ち 打順/位置/選手名 1(二)
仁志敏久 2(左)△
清水隆行 3(右)△高橋由伸
4(中)△松井秀喜
5(一) 清原和博
6(三)△
岡崎郁 7(遊)
川相昌弘 8(捕)
村田真一 9(投) ―――
■ベスト投手陣(先発6、中継ぎ3、抑え1) △は左投げ 選手名/試合/勝利/敗戦/セーブ/防御率 <先発> 斎藤雅樹/241/126/72/0/2.90
桑田真澄/228/99/79/7/3.48
槙原寛己/278/94/73/44/3.27
△
宮本和知/198/58/49/4/3.59
ガルベス/100/46/37/0/3.31
上原浩治/25/20/4/0/2.09
<中継ぎ> 水野雄仁/170/13/8/14/2.82
木田優夫/255/48/56/20/3.68
西山一宇/167/20/16/12/3.69
<抑え> 石毛博史/229/24/17/80/2.77
■タイトルホルダー <最優秀選手(MVP)> 斎藤雅樹 90年
桑田真澄 94年
松井秀喜 96年
<最優秀新人(新人王)> 仁志敏久 96年
上原浩治 99年
<最多本塁打> 松井秀喜 98年 34
<最多打点> 松井秀喜 98年 100
<最高出塁率> 松井秀喜 98年 .421
<最多盗塁> 緒方耕一 90年 33
緒方耕一 93年 24
<最優秀防御率> 斎藤雅樹 90年 2.17
斎藤雅樹 96年 2.36
上原浩治 99年 2.09
<最多勝利> 斎藤雅樹 90年 20
斎藤雅樹 92年 17
斎藤雅樹 95年 18
斎藤雅樹 96年 16
ガルベス 96年 16
上原浩治 99年 20
<最優秀救援(SP)> 石毛博史 93年 30
<最優秀中継ぎ(RP)> 河野博文 96年 12.45
<最多奪三振> 桑田真澄 94年 185
斎藤雅樹 95年 187
上原浩治 99年 179
<沢村賞> 斎藤雅樹 95年
斎藤雅樹 96年
上原浩治 99年