
「真剣勝負の22年間で奪ってきたアウト」というフレーズがいい。そう、ダイヤの中に石ころを混ぜてはいけない。[写真は現役最後の登板となった10月1日のオリックス戦=みずほPayPay]
いい話を聞いたと思った。
11月5日に行われたホークス・
和田毅の引退会見。かなり重要だと思われる発言があったので、少々長くなるが、記録の意味も含めて、ここで引用しておくことにする。サイト「スポーツ報知」(11月5日)より。
──22年間、真剣勝負をやってきたっていう自負は持っている。やっぱり引退試合となると、どうしても野手の方が三振してくれたりとかがあると思う。僕のプライド的には真剣勝負の22年間で奪ってきたアウトの中に、野手の方に(真剣ではない)アウトをつけさせてしまい、査定に響くこともあると思う。(中略)そういういろいろなことを考えたら、僕はちょっとどうしてもそれはできなかった。
傾聴すべき発言だ。整理すると「22年間、真剣勝負で奪ってきたアウトの中に、真剣じゃないアウトを入れたくない。だから引退試合はしない」ということを言っている。
同会見では、次の発言も興味深かった。
──自分で言うのも変なんですが『和田さんのために日本一になろう』とか、そういう空気にだけは絶対にしたくなかったっていうのがあって。
要するに「引退試合」、ひいては引退を感動ネタにして商売しようとする球団や球界のムードに違和感を抱いていると、私は読み取った。
一部報道には、今回の引退と、今年1月に
山川穂高のFA移籍に伴う人的補償として名前が挙がったことを関連付けたものもあったが、関係ないんじゃないかな。純粋に、和田毅の価値観、美意識による発言だと信じたい。要するに、本質的にスマートな人なんじゃないだろうか。
・ファン「感動をありがとう!」
・メディア「和田毅、涙の引退試合、今夜生放送!」
・チームメート「和田さんのために、日本一をつかみ取ろうぜ!」
・相手打者「和田さんのために、ストレートだけを待ってフルスイングで応えます!」
みたいなのが嫌い、というか苦手な人なんじゃないかと感じたのだが、どうだろう。
というと、ファンの方から「『感動をありがとう!』と言っちゃダメなのか?」という意見が来そうだ。先の記事によれば、和田毅からの回答はこうだ。
──オープン戦になればね、豪快に三振してくれても、査定には響かないと思うし、三振を取っても笑って終われると思う。
そう。引退試合はオープン戦でいい。「ありがとう」と「さようなら」の季節はやっぱり3月だ。
PROFILE スージー鈴木●1966年生まれ、大阪府出身の野球文化評論家、音楽評論家。『9の音粋』(BAYFM)の月曜パーソナリティ、『ザ・カセットテープ・ミュージック』(BS12)のレギュラーMCとしても出演中。近著に『弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる』(ブックマン社)、『サブカルサラリーマンになろう』(東京ニュース通信社)。