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広島・菊池涼介 勝つための手段としての芸術的守備/守備職人のプライド

 



 菊池涼介の芸術的な守備は今年も健在だ。変幻自在の動きで、何度も投手陣を救っている。3月29日の巨人との開幕戦(マツダ広島)で失策を記録し、4月10日のヤクルト戦(同)では2失策。「究極の目標は失策ゼロ」という理想は早くも崩れたが、それでも変わらぬモチベーションでグラウンドに立つ。どんな場面でも全力を尽くす菊池涼ならではのスタイルだ。

 菊池涼のプレースタイルを支えるのは、自らの経験によって体得した「基本」である。送球までのスピードが要求される難しいプレーでは、常識では考えられない動きとタイミングでボールを投げるが、簡単な打球はしっかり足を使って捕球し、丁寧に送球する。1月の静岡自主トレで守備練習を公開したが、難しい打球を処理する派手なプレーではなく、正面の簡単なボールばかり繰り返し処理していた。

 菊池涼はキャンプイン前に、こう話していた。「1試合1試合、143試合で143回、何でもいいんで、一つでもチームに貢献したい」。それは、送りバントであるのかもしれないし、自らを犠牲にして走者を進める進塁打だったり、1つ前の塁を積極的に狙う走塁ということなのだろう。そして、守備で投手陣をもり立てるということでもある。

 菊池涼がファインプレーを見せたとしても、それはあくまでチームが勝つための手段である。個人の技量を見せつけるためでは、決してない。それが、守備の達人のこだわりだ。

写真=BBM
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