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インサイドレポート

“統一球”変更が隠蔽された背景

 

低反発の統一球導入3年目となった今季だが、昨年より明らかに本塁打が出るなど打力が上がったのは確かだった。「ボールが飛ぶようになったのでは」と選手らも公に口にしていたが、日本野球機構(NPB)は否定。しかし、それは嘘だった。6月11日、NPBの下田邦夫事務局長が認め、球界に衝撃が走った。加藤良三コミッショナーの責任問題にも発展しているが、果たして「統一球問題」が起こった背景とは――。


疑問がぬぐえない不可解な理由


 プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)が、一軍の公式戦で使用する統一球を、今シーズンから公表しないまま変更していたことが発覚した。12球団の監督、コーチ、選手から「飛ぶようになった」という声が上がっていたが、NPBはこれまで一貫として「変更はない」とアナウンス。しかし、今回の表面化では、情報が漏れないようメーカーのミズノ社に変えた事実を伏せるよう指示した“隠蔽工作”をしていたことも分かった。

 2011年導入時から「飛ばない」とされていたはずの統一球だったが、今年から本塁打数が激増した。セ・パ両リーグによる交流戦スタート前までの12チームの本塁打総数は、昨年が175本。それに対し、今年は同時点で312本と、約2倍の量産ペースとなった。事態を疑問視した労組・日本プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天)が6月11日に仙台で行われた事務折衝で追及したところ、NPBの下田邦夫事務局長がボールの反発係数を変えて飛びやすくしていたことを初めて明かした。

 NPBは「目標としていた反発係数0.413より低い数値のボールが多数あった」として、変更に踏み切ったとしている。在庫を消化するためにオープン戦途中まで新旧ボールが混在した時期があったが、新しいボールへの移行を公式戦開幕前までに完全に済ませたと説明した。

 にわかに勃発した騒動を受け、加藤良三コミッショナーが12日、日本野球機構で緊急会見。選手をはじめ、関係者に迷惑を掛けたことは謝罪したが、自らの関与については「(ボールが変更されていたことは)知らなかった。もし知っていたら、当然公表するよう指示していた」と完全否定した。一連の問題の責任を問われると、「今回のことは、不祥事とは思っていない。事務局内の意思疎通ができていなかったという意味では、組織の最高責任者として、監督不行き届きだったことを反省したい。今後はガバナンス(組織の統治)の強化に努める」と答え、辞任する意向がないことを強調。2日後に行われた12球団代表者を集めた臨時会議でも、事務局内の対応について「大失態だった」としながらも、同様の主張を繰り返した。

6月12日、加藤コミッショナー[中]が下田事務局長[左]らとともに日本野球機構で緊急会見を行った[写真=井田新輔]



 選手会が何よりも重く受け止めているのは、現場への報告が一切ないまま、選手の評価を大きく左右するボールに手を加えていたことだ。近年は出来高払いの契約をする選手が多く、本塁打や安打数、失点などの数字が直接年俸に影響する。嶋会長は「(昨年までの)ボールが飛ばなかったシーズンを基準に、契約を結んでいる選手も多い。労働条件が変わってしまっているのは問題」と・・・

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