週刊ベースボールONLINE


 

取材・文=富田庸 写真=黒崎雅久


▲練習初日、投手陣は右翼・左翼ポール間20分走を行った。有原は息を切らせながらも、一歩一歩をしっかりと踏みしめた



 2人にとって大きな意味のある1年がスタートした。有原航平はエースとして、中村奨吾は主将として、12年春以来、4季ぶりの優勝に導くことが使命となる。

 それとは別に、周囲が騒がしくなってきている。ドラフトイヤー。練習始めの1月5日、東伏見のグラウンドには9球団10人のスカウトが集結した。

 早大OBの北海道日本ハム・大渕隆スカウトディレクターは2選手について、東京六大学では頭一つ抜けた存在と断言する。

「有原は連投が利かない、と言われますが、エネルギーが違う。あの真っすぐに加え、制球力も悪いわけではない。1位競合は間違いないでしょう」。また、アマチュアNO・1内野手の呼び声も高い中村についても「攻守走のバランスが良く、『即戦力』と言える。昨年7月の日米大学選手権で、外野も守れることが分かったのは大きい。普通に考えれば、確実に12人(1位)に入ってくるでしょう」と続けた。

「今まで以上に結果を求めてやっていきたい」。最上級生となり、エースとして言い訳のできない立場となった有原。「自分の勝ちがチームの優勝に直結する。そう考えています」

 3年時から早くも早大のエースナンバー「11」を背負った。「あまり深く考えるタイプではないので重圧とかはない」とかわすが、伝統の重みは理解している。だからこそ、昨春の3勝3敗という成績は納得いかなかった。そんな自分が変わるきっかけとなったのが昨夏、日米大学野球の代表選考合宿だった。

 結果は落選だったが、一緒に練習する他校の投手を見て、“脱力”というヒントを得る。秋季リーグ戦開幕直前のオープン戦では左足小指を骨折。出遅れはしたが、これも“ケガの功名”となる。

「春までは精いっぱいの力で投げていましたけど、ケガでそれもできなかった。でも、8割くらいの力で投げた方が良い球が行くんです」。力んでシュート回転していた真っすぐも激減。それがリーグ最高防御率0.72という形となって表れたのだった。

PROFILE
ありはら・こうへい●1992年8月11日生まれ。広島県出身。187cm90kg。右投右打。緑ヶ丘小2年時から河内少年野球クラブで野球を始めて以来、投手一筋。三和中(軟式)を通じて目立った実績はなし。広陵高では2年春からベンチ入りし、同秋からエース。3年春のセンバツでは4強進出。2季連続出場を果たした同夏は初戦敗退(対聖光学院高)も149キロを計測。プロ志望届を提出せずに早大に進学した。1年春から救援として神宮での経験を積み、151キロ。2年春には大学日本一に貢献。2年秋から先発に定着。3年秋に154キロに更新し、最優秀防御率(0.72)を初受賞。


▲野手の練習の中心には、常に主将の中村がいる。多くは語らないものの、グラウンドで見せる存在感はやはり際立っていた



 一方の中村は天理高2年時からレギュラーとして活躍、同夏から3季連続で甲子園出場を果たし、3大会を通じ打率.429の好成績を収めた・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング