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荒波を乗り越えて

高橋尚成、真田裕貴、岡島秀樹 再び活躍の場を日本に求めた3投手

 

海外で野球に打ち込み、再び、日本に活躍の場を求める男たちがいる。ここでは夢を追って海を渡ったが、メジャー定着が叶わなかった2人と台湾で実績を積み日本球界復帰を果たした1人をクローズアップ。それぞれの苦難を知る3人がチームを支える。
写真=BBM、AP

横浜DeNAベイスターズ/高橋尚成[投手]


▲先発投手のコマ不足解消に貴重な働きを見せる




チームに経験をもたらす38歳のチャレンジャー

 三浦、久保、そして尚成。彼らが並ぶDeNA春季キャンプのブルペンは圧巻だ。連日100球以上を投げ込む三浦、その日の調子に合わせて投球数も球種も変える久保に対し、尚成は球数を抑え休息日を設けながら調整をしている。それぞれがスタイルを持ち、他者に影響されることはない。だが、彼らの技術、力が結束すれば必ずチームは上にのし上がっていける。そう思わせる3人の投球風景だ。

 だが、尚成は、自身の活躍の場が確定しているとは考えていない。「自分の中では競争だと思っています」。5年ぶりの日本での春季キャンプは“挑戦者”の気持ちで臨んでいる。

 2010年、海外FA権を行使し移籍したメッツで、日本人としては4人目、チームとしては25年ぶりとなる新人2ケタ勝利(10勝6敗)を挙げた。翌11年にエンゼルスに移籍すると、リリーバーとして61試合に登板。しかし、信頼を得られず徐々に登板機会は減少していく。

 12年オフにも日本球界復帰が取りざたされることはあった。しかし、「いろいろ大変だったけど、自分の中では楽しめた。自分が納得するまでこっち(アメリカ)でやりたい」と再度メジャーに挑戦。13年はカブスで開幕25人枠入りするも、3試合に登板し、3回2失点の成績で4月には戦力外に。結局、昨季のメジャー登板はこの3試合で終わった。

 13年シーズンが終わり、38歳という年齢も考え、一時は引退も考えたという。それを翻させたのが家族や周囲の人の説得、そして駒大の先輩である中畑監督からの熱烈なオファーだった。

 中畑監督が尚成に求めるポジションは先発だ。藤井がケガで離脱してしまい、チームには目ぼしい先発左腕がいない。尚成にとっては10年以来のポジションだが、「自信がなければ(オファーを)受けません」と、巨人時代の07年に最優秀投手に輝いた自負心を見せた。

 尚成が新天地に持ち込む最大の武器、それはアメリカ時代に酸いも甘いも味わった経験だ。それを自身にも、そして周囲にも出し惜しむことはしない。「若手は話をぜひ聞きに来てほしいし、来てくれると信じている」と発展途上の投手が多いチームにメッセージを送る。「優勝するために自分に声を掛けてくれたチームの気持ちに報いたい」。38歳の挑戦が始まる。
東京ヤクルトスワローズ/真田裕貴[投手]


▲大胆に攻める姿勢で、若い投手陣に気迫の投球を示す




救援陣立て直しの柱となる、燃えたぎるハートを持った右腕

 もう1度、日本でユニフォームを着る──それをモチベーションに13年のシーズンを送った。戦いの場はドーム球場も快適な移動手段もなく、決して恵まれた環境とは言えない台湾。そこで横浜時代の09年の68試合に次ぐ、67試合に登板とフル回転。オールスターにも出場し、シーズン32ホールドはそれまでの26を大きく上回る台湾新記録。自らの力で右腕の価値を高め、チャンスをつかみ取った。

 巨人を戦力外になった12年は、1試合のみの登板に終わり、9月には右足首を手術。契約を結ばない旨を伝えられたのは、復帰に向けてリハビリに励む10月だった。トライアウトも受けられず、日本球界に手を挙げる球団はゼロ。海を渡ったのは、アピールの場を求めたからだ。

 もう1度、日本で投げる機会を得、「60試合は投げたい」と意気込んでいる。最下位に沈んだチームの昨季の救援防御率4.11は12球団ワースト。プロ野球歴代2位の286セーブの高津新投手コーチの下、立て直しが喫緊の課題だ。その折れない柱となること。それが「ハートは誰にも負けない」という苦難を知るベテランに期待される働きだ。
福岡ソフトバンクホークス/岡島秀樹[投手]


▲チーム最年長投手として、投手陣の精神的支柱の役割も担う




わがままを許してくれたチームへ出戻り
集大成の投球で恩返し


 56試合に救援登板して9セーブ、24ホールド、防御率0.94。圧倒的な数字でホークスのブルペンを支えた12年のオフ、唐突に退団が発表された。「メジャー復帰を希望する岡島(秀樹)選手の意思を尊重して」(当時、石渡編成部長、現二軍監督)というのがその理由。11年末にヤンキースとマイナー契約を結んでいた岡島だったが、シーズン開幕前にメディカルチェックで左ヒジに異常が見つかり、契約解除に。ソフトバンクとは1年の契約だった。

 13年、再びメジャーに挑戦した岡島だったが、アスレチックスで5試合に投げたのみで、マイナーで過ごす日々を強いられた。「年齢的にもアメリカでやるのは厳しい。野球人生を終えるのは日本で」と、再びソフトバンクのユニフォームに袖を通す。「わがままでアメリカに行かせてもらった恩返しをしたい」。日米で培った技術、気力の集大成を発揮するつもりでいる。

 期待されるのは反撃の芽を摘む一殺であり、抑えへつなぐセットアップ。経験豊富な左腕は「投げろと言われたところで投げる」と働き場所を選ばない。強大な投手陣をスムーズに回す、潤滑油の役割を演じ切る。
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