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広島の黄金時代には、いぶし銀の働きでチームを支えた名ワキ役たちがいた。彼らが要所で自分たちの仕事をすることで、チームが安定した戦いができたのだ。今年はその黄金期と同様の個性派プレーヤーたちがいる。彼らも先輩たちのように、優勝に向けて力を発揮してくれるはずだ。

文=坂上俊次(中国放送アナウンサー)
写真=BBM


自分の仕事をしっかりこなすことに専心

 若き力の台頭でカープの新時代が築かれつつある。ルーキーの大瀬良大地九里亜蓮が先発ローテーションに入り、即戦力の噂に違わず、西原圭大田中広輔も開幕一軍入りを果たした。しかし、23年ぶりのV奪回へ、勝負どころでベテランの力が必要なことは間違いない。

 これまでだって、そうだった。かつての黄金時代、試合の要所では通算438試合登板を誇る中継ぎのスペシャリスト・清川栄治(現西武投手コーチ)が左の強打者を封じてきた。90年代には今井譲二の快足が決定的なチャンスメークを果たしてきた。長いシーズン、いぶし銀の力は必ず必要になる。優勝争いの緊張感の中では、とりわけスペシャリストは頼もしさを増す。

 先人たちの戦いぶりは今の戦士たちの心にも刻まれている。かつてのドラフト1位左腕・河内貴哉はプロ13年目を迎え、左の強打者封じに自らの働き場所を求める。「球で勝負ではなく、相手打者が嫌がるタイミングで投げることを考えています」

 過去の清川の映像にヒントを求めたこともある。「腕を下げて、タイミングをずらす『間』を作っている印象でした」。カープ投手コーチ時代の清川から、フォームや精神的な教えを受けたことも財産になっている。

 強い役割意識と左打者の嫌がる攻め、今、背番号24は左キラーの務めにやりがいを感じているのだ。


▲黄金時代の左の中継ぎリリーフとして活躍した清川の心を河内が引き継ぎマウンドに上がっている



 捕手陣にもベテランの存在は欠かせない。昨年121試合出場の円熟味あふれる正捕手・石原慶幸が中心にはなるが、長いシーズンは1人ではなかなか乗り切れない。初優勝時には水沼四郎道原裕幸、80年代には達川光男植田幸弘、90年代には西山秀二瀬戸輝信というように、常に“ライバル”の存在があった。

 現在、カープのベンチには17年目の倉義和が控えている。ベンチでは投手に気付いたことを伝え、的確なアドバイスも送る。試合途中からマスクをかぶれば安定したリードで勝利へ導く。「試合途中からの守りは難しいですね。特に、勝っているときは守り切らなければいけないプレッシャーがある。そこで冷静に状況判断できるかどうか」

 野手最年長プレーヤーはチームの優勝へ強い思いを抱いている。だからこそ、練習量を落とすことなく出場機会に備えている。



そのときのために準備は怠らない

 カープ伝統の機動力野球を彩ってきたのは、高橋慶彦山崎隆造緒方孝市ばかりではない。90年代のカープには今井譲二という韋駄天がいた。87年には打席数がゼロにもかかわらず、盗塁を9つ決めたという足のスペシャリスト。いま、カープで足のスペシャリストと言えば赤松真人だ。驚異の守備範囲とパンチ力のある打撃も評価されているが、ここ一番での盗塁技術は球界トップクラスである。

 その足の速さはもちろん、赤松は相手投手のクセも丹念に研究している。さらに、その情報をチームメートと共有。「僕が伝えることでチーム力が上がればいい。丸(佳浩)や菊池(涼介)からも僕にいろいろ言ってきてくれるのでうれしいですね」。現場での感覚や映像から投手の傾向を探る。そのデータをノートに書きつける。たゆまぬ努力の結晶を惜しみなく仲間に伝えることは、平安高(現龍谷大平安高)時代の恩師である、原田英彦監督の教えが色濃く反映されている。「監督からは、自分たちで考えて、自分たちでチームを強くするよう言われてきました。何をすればチームが強くなるのか、そこは意識しますね」。フォア・ザ・チームのスピードスターは塁上のみならず、ベンチからも相手チームにプレッシャーをかけているのだ。


▲終盤の重要な場面での走塁は勝敗のカギを握るが、昔は今井、現在は赤松という足のスペシャリストが広島を支えている



 35歳のベテラン投手も、自らの活躍のタイミングをうかがっている。12年オフに中日を戦力外となり、昨季カープへ加入した久本祐一は先発、中継ぎに43試合登板の働きを見せた。日本一経験もある左腕は、登板機会を選ばずチームに貢献することを誓う。若手投手の成長で厚みを増した先発陣をリリーフ投手として支え、夏場の過酷な連戦時は先発陣に厚みを持たせる役割もイメージする。

「夏場や9連戦があるときのローテーションの谷間で先発できればいい。開幕ダッシュも大事ですが、チームの苦しい時期に頑張る投手も大事だと思いますね」。来るべきタイミングに備え、久本は自主トレの段階から厳しい練習を自らに課してきた。走り込み、投げ込み、体幹トレーニング、若手選手も驚くほどの練習量で、いまも仕上がりの良い状態をキープし続けている。

 また、一軍、二軍を問わず、ベテラン選手も高いモチベーションでシーズンに臨んでいる。プロ15年目の迎祐一郎は語る。「いつ、どんなタイミングで出番が来ても問題ない。ゲームの流れを見ながら、常に準備をしておくようにしています。いつでも行けるように体と気持ちを整えておくようにしています」

 91年以来23年ぶりの頂点へ――。昨シーズンのクライマックスシリーズ進出で、カープは大きな希望を持って開幕を迎えた。144試合の長丁場には、間違いなく苦しい時期がある。試合の中でも、絶体絶命の大ピンチが訪れるはずだ。そんな窮地を救うのは、万全の準備で出番を待つベテランプレーヤーに違いない。

 カープ新時代の幕開けには、百戦錬磨の個性派たちの献身が欠かせないのだ。

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