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二塁手の極意

二塁手の最強打者は誰だ!

 

二塁手は守備の人、のイメージが強いが、強打の二塁手ももちろんいる。ここでは年間100試合以上で二塁を守り、打撃タイトルを獲得した選手たちをピックアップ。そこから見えてくる二塁手の最強打者は……三冠王を3度獲得したあの天才打者だった。

 強打の内野手と言えば……川上哲治長嶋茂雄王貞治大下弘中西太の面々が一塁や三塁を守っていたこともあり、その2つのポジションのイメージが強い。だが、プロ野球80年の歴史において、強打の二塁手もいるのだ。

 今年は昨年パ・リーグの打点王に輝いた西武浅村栄斗が二塁にコンバートされた。もし2年連続で打点王を獲得すれば、二塁手としては1997年、現侍ジャパン代表監督の小久保裕紀(当時ダイエー)以来となるだけに期待したいところ。

 その小久保だが、95年には本塁打王(28本塁打)を獲得している。二塁手として130試合フル出場しゴールデングラブ賞と攻守で活躍したシーズンとなった。また、97年の打点王のとき135試合すべてで二塁手を務めており、90年代日本人最強打者の二塁手と言ってもいいだろう。


▲小久保裕紀



 では80年代は? となると西武の辻発彦などの名前が挙がってくるだろう。しかし、二塁手として三冠王を獲得した選手がいる。それが現中日GMを務める落合博満だ。1982年に史上最年少28歳で三冠王を獲得した落合。計3度の三冠王となっているのだが、二塁手としての三冠王はこの82年のみ。127試合に二塁手(一塁手は3試合)として出場し、635回の守備機会に対し失策は7の守備率.989という成績を残した。残念ながらゴールデングラブ賞には選出されなかったが、二塁手としてベストナインを獲得した。そう考えると82年の落合が、助っ人を含めても歴代最強の二塁手と言えるかもしれない。


▲落合博満



 二塁手は、どうしても小技がうまい選手が多いというイメージが強い。打撃に関しても小技が得意で、単打をうまく打つというイメージがある。もちろんそのとおりで、首位打者で言えば二塁100試合以上出場した選手では10人がこれまでタイトルを獲得。最多安打(94年から表彰)は5人が獲得した。

 最初の首位打者に輝いたのが南海の岡本伊三美で53年。打率は.318だった。その後、日本人二塁手としては、76年の太平洋・吉岡悟が.309で獲得している。一方、セ・リーグでの日本人二塁手初の首位打者は83年、阪神真弓明信。.353という高いアベレージだった。その後、87年に巨人篠塚利夫(.334)、87年の正田耕三(.333)と続いた。その間パ・リーグでの獲得はなく、93年の西武・辻発彦(.319)まで待たなければいけなかった。その90年代になると二塁手の首位打者獲得者は減る。特に日本人二塁手は辻のみだった。その後は2003年に阪神の今岡誠が.340で獲得して以降、首位打者が出ていない。

▲岡本伊三美


▲吉岡悟



 一方、最多安打は56年に高橋の佐々木信也が180安打を放った。その後、パ・リーグでは08年の西武・片岡易之(現巨人)が167安打を放つまで二塁手の最多安打打者はいなかった。セ・リーグに目を向けると最多安打は1人しかいない。それが93年の阪神・和田豊の161本。特に00年に入ると二塁手として打つイメージの二塁手が極端に減っているようだ。

▲佐々木信也



 最後に助っ人二塁手の最強打者を紹介する。これは何と言っても98年の横浜の日本一に大きく貢献したローズだろう。来日した93年に94打点で打点王を獲得すると95年からは6年連続打率3割以上を記録。打点は9年間の在籍ですべての年で80打点以上を挙げた。98年は四番打者として打率.325、19本塁打、96打点という素晴らしい成績で日本一をけん引した。ハイライトは翌99年。首位打者(.369)、打点(153)、最多安打(192)とずば抜けた数字でタイトルを獲得。本塁打も自己最多の37本放っており、もし本塁打王も獲得していれば82年の落合博満以来の快挙だった。その横浜で言えば前身の大洋でミーヤンが79年に打率.346で首位打者となっている。

▲ローズ



 一方、ローズのように優勝に貢献した二塁の強打者助っ人では、阪急のマルカーノが思い出される。守備もうまかったが、打撃も光った。75年に来日すると阪急の初となる日本一に貢献。4年連続リーグ優勝と3度の日本一に導くなど攻守で活躍。78年には94打点で打点王を獲得した。その阪急では55年にバルボンが163安打で最多安打を記録している。そのほかでは62、63年にパ・リーグ首位打者(62年.374、63年.335)となった近鉄のブルームがいる。このように50〜80年代にかけて特にパ・リーグは二塁手の助っ人が活躍した。

▲マルカーノ



 現在、12球団の二塁手は助っ人が一人もいない。さらに言えば、クリーンアップを打つ二塁手は、西武の浅村くらいだ。現代野球でち密な戦術が増え、守備能力が高く動きが俊敏な選手を二塁に起用することが多くなった。だが一方で落合、小久保、ローズのような一発で試合を決めるような二塁手をもう一度見てみたい。今後、そういう選手が出現すると、プロ野球がさらに面白くなるに違いない。
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