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今季の4月の阪神打線は3割を超えるほどの猛威を振るった。交流戦直前にチーム打率は.273まで落ちたとはいえいまだに高い。好調な打線になりえた理由は何だったのだろうか。今季からGM付育成&打撃コーディネーターに就任した掛布雅之DCに内部にいるからこそ分かる要因を語ってもらった。そして優勝するために後半戦のキーマンは誰か聞いた。
取材・構成=椎屋博幸 写真=BBM



後ろの打者が好調なら前打者まで良くなる好循環

 今年はキャンプからマートンが非常にいい形の打撃をしていました。オープン戦でも5割近い数字を残していました。その流れのまま開幕を迎え、同じようなバッティングをしましたね。僕が思い描いていた以上の力を出したことが、今の阪神打線が好調な理由の一つになっていると思いますね。

 キャンプ合流が遅れ、オープン戦で打てずに不安材料が出て、不安視されながら開幕を迎えたゴメスが、そのマートンの状態が良かったことで生かされました。つまり、五番を打つマートンの状態がすごく良いことで、相手投手が前の四番を打つゴメスで勝負せざるを得ない状況になった。しかも四球を出してマートンに回したくないことで、ストライクゾーンで勝負することが多かった。ゴメスも打てるボールを打つことができる中で、打撃の調子が上がっていった。つまり、後ろの打者が良いことで前の打者が生きていく、という好循環が生まれたんですね。だから4月の好調さを見たときにあの四、五番の打点の多さがチームを支えたと思いますよね。また、それに乗せられるように、開幕前から調子の悪かった三番・鳥谷(敬)が復調し打線がつながりました。

▲キャンプから好調で現在も、打線の軸としてチームをけん引するマートン。彼の好調さが連鎖して周りの打者まで良い影響を与えた



上本のこれが最後の強い気持ちが打線を変えた

 それと好調のもう一つの要因は上本(博紀)の考え方が変わったことですよね。開幕3試合目で西岡(剛)と福留(孝介)が激突して西岡が戦列を離れるアクシデントがありました。このときに抜てきされた上本が、一番という打順に対して少しバットを短く持ってセンター中心の打撃を心掛けた。そして自分の成績云々ではなく、チームが勝つために、自分は何が必要なのかと考えたプレーをするようになった。上本は、自分でたくさん考えたんでしょうね。しかもこれが最後のチャンスだと思うくらいの危機感と意気込みだったのではないでしょうか。それがすごく良い結果として出てきた。それにより二番の大和が生かされ機能し、三番・鳥谷が復調し、四、五番が好調という……これで打線がつながらないわけがないでしょう?(笑)。でもこれはマートンが作り出した打線のリズムだと思いますね。この流れはクリーンアップ3人が100打点を挙げたときの1985年の打線とよく似ていると思いますね。

 ゴメスを見ているとミスショットが多いから三振も多い。その部分を五番のマートンが補ってヒットを打ってくれるから、ゴメスは次の打席でしっかり打てる。後ろの打者が前の打者を助ける形ができると、今度は前の打者が後ろの打者につなごうという意識が出来上がるんですよ。そういう相乗効果が成り立っていたここまでの阪神打線だと思うんですよ。ただ、それはここまでの戦いですよ。これから交流戦に入ります。今のこの打線が、投手力の高いパ・リーグのチームに通用するのか。そして結果を残せるのか、それは今後のペナントレースを占う上で非常に重要だと思っています。僕は、マートンはそこまで大きな波をつくることなくシーズン最後までしっかりと成績を残せると思っています。一方で、現在のゴメスは少し対策を練られるようになってバットが湿っている。そこが少し不安ですね。

 それと不安なのは西岡と上本のケガでの離脱で彼らが帰ってくるまで一番打者が固定できないことですね。また、上本が帰って来たときも、今度は相手チームも上本を徹底的に研究してくると思いますから、攻められ方が変わっていると思います。そこで上本がそれにどう対応できるか、そこを見たいですね。もし克服できれば、打線に良い流れをつくることができるはずです。

▲マートンが好調なことでゴメスの調子も上がったが、研究された。これから真価が問われる



ゴメスの打点数=阪神の得点になる

 後半戦、阪神の打線でカギを握るのはやはり、ゴメスでしょう・・・

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