週刊ベースボールONLINE


 

「こんなはずではなかった」と、虎党のため息が聞こえてくる。スタンリッジが去ったとはいえ、タイガースには能見篤史メッセンジャーに加え、藤浪晋太郎がいる……、はずだった。
ところが、2年目の若きエース候補が、予想外に苦しんでいる。果たしてこれは“2年目のジンクス”なのか。どうした!?藤浪、どうなる!?藤浪。


▲2年目のジンクス?を考える



 藤浪晋太郎が試練を迎えている。ここまで7試合に先発し2勝2敗、防御率3.74。試合序盤は好投するものの、球数がかさむ終盤に崩れてしまう。「試合終盤の壁」に何度も跳ね返された。これが「2年目のジンクス」なのか――。5月初旬、藤浪は率直な思いを語った。

「2年目のジンクスというより自分のピッチングができていない。勝ち星は打線の兼ね合いや、球数もあるので。でも自分のボールを投げられたら大丈夫だと思っています」

 プロ1年目は24試合の登板で10勝6敗、防御率2.75。今季は能見、メッセンジャーとともに先発3本柱の一角として年間160イニング以上を計算され、主に火曜日の先発を任されている。3連戦の初戦は中継ぎを休ませるためできるだけ長いイニングを投げることが求められるが、球数が100球に達するころに失点する試合が続く。投げ込み、走り込み不足などスタミナを不安視する声もあるが中西投手コーチは否定する。

「球数の問題ではない。肩のスタミナはある方だ。いきなりブルペンで100球投げたり、ランニングの量を増やしたら故障につながる」

 昨季の前半戦は故障防止のためイニング、球数を徹底管理された。しかし夏場以降はそのリミッターも解除され8月は月間MVPを獲得。9回無失点に抑えた8月11日の中日戦(ナゴヤドーム)では132球を投げるなど球数の不安は感じさせなかった。中西コーチが指摘したのはスタミナより投球の技術面だ。

「球数よりも3巡目、4巡目というところだな。序盤は真っすぐで押していっても3、4巡目になるとバッターの目も慣れてくる。そうなったとき、軸になるボールを変えたり、変化球でカウントを取るようなテクニックを持っていない」

 昨季23試合先発した中で7回以上を投げたのは7試合だけだったが、今季はすでに5試合で7回のマウンドに立った。試合終盤、3巡目以降の打者を抑えるために必要な技術は、狙ったコースにきっちり投げ切る制球力。だが今季は先発1試合あたりの平均与四球数が昨季の1.78から3.43に倍増している。登板前日に「ムダな四球をなくしたい」と決まって口にする本人が一番、自覚しているところだ。

 打開策として調整法を見直した。「登板前日のブルペンが一番いい球を投げている」という中西コーチのアドバイスを受け、5月からブルペンの投球練習を登板前日から登板2日前に変更。さらに中6日で2回入っていたブルペンの回数を1回に減らした。結果はすぐに表れた。6日の中日戦(ナゴヤドーム)は6回2失点。13日の広島戦(米子)は7回1失点で2試合の防御率は2.08。登板までの新たなルーティンを確立し、復調の兆しを見せている。

 中西コーチが描く理想の成長曲線は「緩やかな右肩上がり」。将来を見据え「高い授業料を払ってでも何度でも投げさせる」と力を込めた。

「今年だって勝たそうと思ったら勝たすことはできる。去年も3つ、4つは勝たせてやっていたからな。でもそれじゃあ意味がない。エースになってもらわないといけないピッチャーだから。本人が意識過剰になっている部分はあるけどもっと意識していい。自分で覚えないといけない。1回越えたらすんなり行くはずだ」

 中西コーチの熱いメッセージだ。どんな投手でも試合終盤になるとつかまる傾向は強くなる。藤浪がここまでクローズアップされるのは期待の大きさに他ならない。この壁を突破したとき、今季の阪神の優勝が見えてくる。そして何より藤浪がプロ入りから目標とする球界のエースに一歩近づくはずだ。
こちらは救世主!?
岩崎優〜投壊救ったルーキー左腕〜


 開幕当初、チームの“投壊”を救ったのはドラフト6位の岩崎優(国士舘大)だった。キャンプ、オープン戦と好投を続け、開幕先発ローテ入りを果たすと、4月2日の中日戦(京セラドーム)ではプロ初登板初先発初勝利を飾った。持ち味は伸びのある直球だ。球速は130キロ台ながら球持ちが良く、バッターを詰まらせる。変化球はスライダー、チェンジアップを中心にカーブ、フォークも操る。

「1試合、1試合勉強するつもりでやっています」と4月は2勝も、5月に入り2試合連続でKOされると登録抹消。中西投手コーチは「ちょっと疲れてきたな。大学時代にこれだけ投げたことはなかっただろう。怖さが出てきてコースを狙い過ぎていた。真っすぐが一番いいピッチャーなんだから、低め、低めよりベルト付近の高さでいいんだ」と指摘。「もう一度コンディションを上げたい」と岩崎は一軍に帯同しながら再調整を続けた。

 交流戦は能見、メッセンジャー、藤浪の三本柱に加えて、岩田、榎田、岩崎のうち2人が先発起用される方針。リーグ優勝へ「少しでも力になれたら」と謙虚に話すドラ6ルーキー。岩崎が先発ローテをこれから守り続けるようだと優勝の2文字が見えてくる。
特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング