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 市川越高のエース・上條将希は、さまざまな思いを抱えながら最後の夏に向かう。172センチと上背はないが、左腕から繰り出される直球の最速は146キロを計測。視察に訪れたスカウト陣からは「テークバックから腕の振りが独特。左投手であれだけのスピードが出せるし、将来が楽しみな投手」との声が上がる。



 全国レベルを肌で感じながら、自らの成長につなげてきた。昨秋からエースナンバーを背負うと、埼玉県大会準決勝では春日部共栄高を相手に12奪三振で完封。だが、関東大会では今秋ドラフト上位候補に挙がる横浜高・浅間大基に手痛い一発を浴びた。左対左は投手が有利と言われる中、緩急を駆使しながら攻めたが「少しでも甘く入ると打たれる」ことを胸に刻んだ。迎えた今春。県大会準決勝で昨年センバツ優勝校の浦和学院高と対戦した。上條は3回途中からマウンドに上がり、6回1/3を3安打無失点の快投を見せた。試合には敗れたが、センバツ優勝投手の小島和哉と互角に投げ合い「自信になった」と振り返る。

 もう一段階上がるために何かを変えたい。レベルアップしたい――。上條は今春、投球の幅を広げるために、新球習得に取り組んだ。鋭い変化を見せるカーブ、スライダーに加え、チェンジアップを覚えた。右打者の内角に食い込むクロスファイアの直球には自信を持っていただけに、外角に沈む球が加わり、その威力も増した。秋は左肩に疲労が溜まったが、現在は不安はない。「勝ち上がるために連投ができるようにやってきた。制球力も磨いてきた」。冬場は1日10キロを走り込むなど体をいじめ抜いた。体つきも一回り大きくなり、体重は5キロ増えて68キロになった。

 自らを奮い立たせる環境も偶然にも整っている。今夏の埼玉には左投げの好投手がそろう。小島のほか、春日部共栄高・金子大地、大宮東高・中田浩貴……。「結構、左投手が多いですよね。負けたくない気持ちはもちろんあります」とライバル心をむき出しにする。6月24日に行われた組み合わせ抽選会。順当に勝ち上がれば、浦和学院高とは準決勝で対戦することが決まった。

「組み合わせは自分的には良かった。浦和学院は意識します。でも決勝で当たるのも準決勝で当たるのも一緒。自分の力を出せばいい。楽しみですね」と強力打線との再戦、小島とのしびれるような投げ合いを歓迎する。

 埼玉では1998年の滑川高(現滑川総合高)以来、公立校の甲子園出場はない。当時は久保田智之(現阪神)がチームをけん引し、西埼玉を制しただけに、大黒柱の存在がカギを握ることは間違いない。最後の夏の目標は、同校(前身・川越商高)では25年ぶりの甲子園。

「一戦一戦、戦って上に行きたい。春から夏にかけて、調子も徐々に良くなっています」と自信を見せる。強打者・浅間から学んだ制球力の大事さ。ライバル・小島のどんなピンチでも動じない冷静な投球術を参考にした。プロからも注目を集める上條。卒業後の進路は大学進学が濃厚な状況だが、まずは、高校最後の夏にすべてをかける。

PROFILE
かみじょう・まさき●1996年6月27日生まれ。埼玉県ふじみ野市出身。172cm、68kg。左投左打。小学3年から大井ウエストで野球を始める。大井西中では軟式野球部に所属し投手。市川越高では1年秋からベンチ入りし、2年秋からエースとして埼玉県大会準優勝、関東大会出場。最速146キロ。持ち球はカーブ、スライダー、チェンジアップ。
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