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エースの復調なしには…


能見篤史 18試合6勝10敗投球回118 2/3失点62自責点57防御率4.32(8月14日現在)


 逆転Vに向け、チーム一丸となって戦っている中で、エース・能見篤史の調子がなかなか上がってこない。5月24日の交流戦、ソフトバンク戦(甲子園)以来、勝ち星に恵まれず7月31のヤクルト戦(甲子園)でも7回3失点で降板し6連敗となり、10敗目を喫してしまった。

 6月29日の中日戦(甲子園)で9失点して以降は、3試合で3失点以内に抑えている。しかも6回、9回、7回と試合を作ってはいたが、味方打線との兼ね合いもあり勝利に恵まれていない。並みの先発ローテ投手なら、試合を作るだけ、3失点以内なら十分にその役割を果たしたと言える。だが、能見は阪神を支えるエース。マウンドに上がれば、味方が先取点を取るまで我慢し、勝つ投球をしなければいけない。

 しかし、6連敗中の5試合で先取点を与えており、しかも早い回に点を奪われるケースが見られた。また、試合後半に入ってから粘りが見られないのだ。特に相手打線が3巡目に入ったとき、急に投球を乱しており、被安打が増え、四球が1巡目8個、2巡目6個に対し、3巡目で22個と急に増えている。それにより、被打率も3割台に上がって失点も急に増すのだ。

 エースが6連敗をしながら、チームが好調なのは、能見に代わり岩田が復調し、藤浪も試合を作る投球ができ始めた。そして、メッセンジャーが安定した投球を見せていることが大きい。これに新人の岩崎と、岩貞が先発するなど、先発陣がそろってきた。

 それでも、やはり能見が復調しない限り、幸いにも8月2、3日の試合が雨で中止となり、先発ローテも再編成された。能見は中8日の期間をもらい先発し、白星を挙げた(8月9日広島戦=京セラドーム)。何か故障があるわけでもなかった。「(登板)間隔は特に問題ない。自分がどうこうよりチームが勝てばそれでいい」とエースは前を向いている。ここで白星をつかみ続けることが復調への第一歩。能見の完全復活なしには打倒・巨人、逆転Vは訪れない。

敵は鳥谷の背中にあり!


鳥谷敬 試合102打数387得点75安打122二塁打21三塁打2本塁打7打点54四球65三振59打率.315(8月14日現在)


 ゴメス、マートンのGM砲の活躍が目立っている猛虎打線の中軸だが、三番に座る鳥谷敬が打撃好調なことが、さらにGM砲を輝かせていると言ってもいいだろう。

 8月9日が終わった時点で打率・320はリーグ7位に付ける。首位打者争いをするマートンの次に打率が良いのだ。一番打者に起用されている上本や四番のゴメスも好調で2割9、8分台を保っているが彼ら以上に打っているのだ。マートンが127安打なのに対し谷は120安打と、大差がない。三番打者がこれだけの数字を残せば、後ろの打者の負担は軽減する。85年のバース、掛布、岡田の強力クリーンアップを彷ふつとさせる主軸になった。

 さらに鳥谷の特長である出塁率の高さは今年も健在。リーグ2位の.419で四番・ゴメスにお膳立てをする役目も十分に担っている。打点も52を挙げており、広島の好調な三番・丸が47打点なだけに、いかに今年打撃好調かが分かる数字だろう。

 だが、鳥谷自身はここまでは順風満帆ではなかった。オープン戦で背中の張りを訴え欠場。開幕も危ぶまれた。何とか間に合わせたが、6月に同じ痛みが発症するなど、いまや持病となりつつある。この6月は打率を.250に落とし交流戦で首位打者を逃した。だが7月に入り完全復調。月間打率.341とチームの8連勝などをけん引した。

 8月に入り阪神は、甲子園が高校野球で使用している間「死のロード」と呼ばれる遠征に入る。「京セラドームでの試合もありますし」と鳥谷が言うように、地元大阪で行われる試合もあり、以前のような厳しさはない。それだけに三番が好調であれば、GM砲とのトリオは相手チームに脅威を与えるだろう。

 しかし、また鳥谷が背中に痛みを訴えるようだと、厳しい状況に置かれる。連続出場記録を作っていることもあるが、それ以上にキャプテンとしてチームを引っ張る存在が不調に至れば打率が落ちるとともに全体の士気も下がる可能性がある。また、守備でも唯一無二の遊撃手として存在しており、もし離脱するようなことがあればチームとしても厳しい状況になってしまう。

 だが、そういう心配も今のところなさそうだ。8月もいきなりマルチ安打から始まった。鳥谷が元気な限り、打線も活発であり続けるはず。まずは首位・巨人をいかに打ち崩すかだが、鳥谷は、巨人のエース・菅野を今季7打数3安打、打率.429とカモにしている。首位攻防戦でもこの点で大きなアドバンテージを握っている。終盤の優勝のかかった場面で、この2人の対決が、大勝負になる可能性もある。
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