文=谷上史朗 写真=田中慎一郎 チームのために重ねた努力目指した勝利に届かず
夏の甲子園初戦で明徳義塾に敗れた試合直後。記者から何度か似た質問が続き、珍しく言葉が尖った。「とにかく勝ちたかった。それだけです」「そういうことより、今は悔しさしかありません」
それでも大会前から、「チームの勝ちにつながるバッティングをしたい」と繰り返していたとおりの内容は見せた。「予想どおりの好投手でした」と語った
岸潤一郎からきっちり2安打。4打席とも勝負球はすべてカットボールだったが、1打席目空振り三振の後の2打席目では、外角高めに対してしっかり踏み込み、強烈にレフト前へ弾き返した。さらに3打席目は、外角低めのボールゾーンへ流れる、岸からすれば完璧な一球を、腰を残して拾い、ライト前へ落とした。いずれも追い込まれた状況での打撃で、ハイレベルな対応力を示す結果だった。
当然、高校通算73本塁打のパワーが注目されるが、決して力自慢の一発屋ではない。今夏の奈良大会でも18打数10安打、14打点、3本塁打。各大会で常に4割超えの打率を残してきたように球をとらえるミート力、変化球への対応力、甘い球を逃さない集中力……。高校生の右の長距離砲でこれらの能力をそろって備える選手はなかなかいない。常に課題を掲げ、一つひとつをクリアしてきた結果でもあり、心の強さを持ち合わせている。
その中で一つ、甲子園で期待しながら見られなかったものに・・・
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