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文=佐々木亨/写真=太田裕史



 声のボリュームは、小さい。山形中央の庄司秀幸監督は「もともと気持ちが強い子ではなかった」と言う。だが、マウンドに上がれば石川直也は変わる。191センチの長身から連発する140キロ台のストレート。しなやかな腕の振りも魅力の一つだ。あるプロのスカウトは言う。

「上体だけで投げているところがあるので制球が乱れることがあるが、あれだけの身長で、あれだけのストレートがあれば十分」

 素材の良さは、今夏の甲子園でも証明した。延長戦となった東海大四との2回戦。6回から登板した石川は、それまでの自己最速を1キロ上回る大会最速の148キロを叩き出した。力が抜けて「理想の一球だった」というストレートに加えて、「三振を狙いにいくときの決め球」と語るフォークも冴えた。ひと皮むけた姿がそこにはあった。庄司監督は言う。

「山形大会の決勝を一人で投げ抜いたことが、石川を成長させ、彼の自信になったと思う」

 決勝では12奪三振で完投勝利。精神的に成長した姿を甲子園でも余すことなく見せた。今夏の甲子園最速右腕は、力強く言う。

「プロを目指していきたい」

PROFILE
いしかわ・なおや●1996年7月11日生まれ。山形県出身。191cm 78kg。右投右打。余目第二小3年時に余目スポーツ少年団で野球を始め、余目中時代は軟式野球部に所属。山形中央では1年秋からベンチ入り。2年春のセンバツでは背番号1で2試合に登板。3年夏の甲子園では2回戦で自己最速にして大会最速の148キロを記録。3回戦進出の原動力になった。



写真=早浪章弘



 きっちりとカウントを整えることのできるスライダーに、空振り必至のキレ味鋭いフォーク。これに甲子園でも最速146キロを叩き出した直球がある。本人は「この先、どういう進路をたどることになるのかは分かりませんが、いずれは最高峰のプロで投げてみたいです」と将来を展望するのだが、この秋にでも獲得したいというプロ球団も少なくないようだ。

 甲子園では常時ストレートの速さを見せつけた。2回戦・鹿屋中央との試合では再登板した9回に144キロを連発し、延長で敗れた八戸学院光星戦でも最終回に143キロの直球が3球あった。最後は握力が落ち、変化球でストライクが取れないために直球を狙い打ちされたが、最後まで貫いた力勝負は見る者の心を熱くさせるものがあった。

 また、八戸学院光星戦ではエースの意地も見せた。8回に同点ソロを喫した相手四番の深江大晟を10回の一死二塁で迎えた場面だ。ベンチは敬遠を指示したが「逃げたくない。最後まで勝負したかった」という岩下は、立ち上がった捕手に対して4球目のボールをストライクゾーンのギリギリに投げ込んだ。こうしたハートの強さこそが岩下最大の魅力だ。

PROFILE
いわした・だいき●1966年10月2日生まれ。石川県出身。181cm 82kg。右投右打。小学1年から内灘エンゼルスで野球を始める。星稜中入学時は投手兼三塁手。3年時は投手に専念し、全国大会出場。星稜では1年夏からベンチ入り。13年夏の甲子園の1回戦に先発したが敗退(対鳴門)。今夏の甲子園は3回戦で敗退(対八戸学院光星)。





 初の甲子園マウンドでは日本文理打線の一発攻勢に泣いたが「まずまずのポテンシャルを見せた」というのが大方のスカウトが下した佐野評のようだ。

 最速152キロの天然素材型右腕は、甲子園で2度の145キロを計測。これに次ぐ144キロが1度あったが、この3球はいずれもボールゾーンに流れた直球。それでも夏の大分大会で見せた「6分程度の力感で叩く140キロ超の直球」は魅力十分で、2回にはスライダーを空振りさせての3三振も記録している。「体もフォームもこれからの投手。指名順位はともかく、かなり高い確率で指名されるだろう」と、某球団の担当スカウトは言う。素材の高さは、今夏の甲子園に登場した投手の中でも指折りだという。

 日本文理戦は13安打を浴びて5失点。そして、被本塁打2。ここまで打ち込まれたケースは大分大会にはなかった。

 本人は「明らかなスタミナ不足。中盤から明らかに球速が落ち、指にかかる球も極端に減ってしまった。経験と技術のなさが出ましたね」と言って、5回以降の投球を反省した。

「プロ以外は考えていない」というほどの一途さが報われる秋となるか。

PROFILE
さの・こうだい●1996年9月2日生まれ。大分県出身。182cm 70kg。右投右打。小学4年時に渡町台リトルヤンキースで野球を始める。鶴谷中時は大分南リトルシニアに所属し、九州大会4強。大分では1年秋からエースとなり、2年秋からは四番も務める。甲子園には今夏初出場したが、1回戦敗退(対日本文理)。



写真=太田裕史



 甲子園での二松学舎大付戦ではリリーフでマウンドに上がった吉田嵩。夏の長崎大会を前に腰を痛めたために、その後は試合中盤から試合を締めるロングリリーフが主戦場となった。しかし、この配置転換がパワープレーを得意とする吉田の個性を大きく引き伸ばすこととなった。

 二松学舎大付戦の4回一死二塁。最初の打者、四番の小峯瑛輔に抜けたスライダーを中前に運ばれ1点を失ったものの、代わりっぱなに143キロの直球で強打の小峯をファウルで押し込むと、甲子園の大観衆は大きくどよめいた。5球目には144キロに上げ、海星にとっては“サッシー”こと酒井圭一(現ヤクルトスカウト)以来の本格派右腕誕生の予感すら漂わせたのだった。

 創成館と戦った長崎大会の決勝では、6回無死二、三塁でリリーフ登板すると、後続を三者三振に仕留め試合の流れを引き寄せた。こうした勝負強さも大きな武器だ。

 試合後「プロの世界に挑戦してみたい」と早々に志望届提出を宣言した吉田。“登板即トップギア”の力強さと可動が大きくキレのいいスライダー。わずか4回2/3の聖地で、しっかりと素材の高さを見せつけた。

PROFILE
よしだ・しゅう●1996年7月8日生まれ。長崎県出身。182cm 83kg。右投右打。小学2年時に野球を始め、島原第二中時は軟式野球部に所属し3年時に県大会優勝、九州大会1回戦敗退。海星高3年の春に腰椎分離症を患い、その後2カ月のリハビリ生活を送ったが、6月に復帰し、今夏甲子園では背番号1。敗れた2回戦の二松学舎大付戦(5対7)にも登板。
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