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文=岡本朋祐/写真=高原由佳



 走者がいない場面でも、セットポジション。森田駿哉は淡々と投げる。甲子園2勝は73年夏以来。10年ぶりに出場した富山商復活の立役者だ。

 富山・南部中時代は富山ボーイズに在籍。中日本大会で4強の実績を残している。同ボーイズは、富山商OBである浅井樹(広島三軍統括コーチ)、中澤雅人(ヤクルト投手)が顧問を務めている。「TOMISHO」は身近な存在。同級生の四番・左翼の轡田拓馬、八番・遊撃の柳瀬和也とともに、夏は04年以来遠ざかっていた「名門・富商で甲子園に行こう」と誓い合ったのだという。

 ラストチャンスでつかんだ夏の甲子園。日大鶴ケ丘との1回戦で6安打完封すると、関西との2回戦も4安打1失点完投と、11年ぶりの16強へ導いた。この2試合でわずか2四球、長打は1本も許さない安定感を披露。二塁を守る主将・横道詠二は「低めにボールが集まり、ここぞの場面ではスライダーが決まる。テンポも良いから守りやすい」と明かす。良い意味でマイペースである森田に対して「反応してくれない日もあるんです(苦笑)。好調なときほど、守備中も、あまり声をかけないようにしています」とも。投手にしか分からない独特な野球観があるのだ。

 実は県大会では、前崎秀和監督によれば「本来の姿ではなかった」そうだ。体幹を含めた体重移動を意識すると、バランス良いフォームが戻る。これも冬場の徹底したトレーニングが根底にあったから。腹筋、背筋を毎日こなし、雪でグラウンドが使えない日は校舎内を黙々と走った。

 最速は県大会決勝(対高岡商)で計測した146キロ。変化球はカーブ、スライダーの2種類のみだが、制球力が良いから、真っすぐを含めた3つで十分通用する。森田は「1個1個が勝負球です」と自信を見せる。

 迎えた3回戦の相手は日本文理。今春の北信越大会決勝では逆転負け(7対12)を喫しており、「同じ北信越の飯塚(悟史)には負けたくない」と相当の意気込み。しかし、7回3失点で降板。ただ、“強打・文理”にも長打は許さなかった。チームは直後に勝ち越し、「切磋琢磨してきた」両輪の左腕・岩城巧に託すも9回裏、逆転サヨナラ弾で敗退した。

 8強を逃したとはいえ、甲子園で大ブレーク。「大会No.1左腕」の称号を得たが、大学進学を示唆する。甲子園から神宮へ。完成度の高さからも、来春のデビューもありそうだ。

PROFILE
もりた・しゅんや●1997年2月11日生まれ。富山県出身。183cm 79kg。左投左打。中学時代は富山ボーイズで、エースとして県大会優勝を経験。富山商では2年春から控え投手として公式戦出場。2年秋には県大会準優勝。3年春には県制覇も北信越大会決勝で日本文理に敗退。今夏の甲子園は3回戦で敗退(対日本文理)。



文=寺下友徳/写真=高原由佳



 「回転のいい真っすぐを投げたい」

 1年前の新チーム発足時、岸潤一郎がしきりに言っていた目標である・・・

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