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熱戦が繰り広げられた夏の甲子園だが、ドラフトの目玉候補が出場を逃し、プロのスカウトにとってはやや物足りない夏だったか――。朝一番からバックネット裏で視察を続けたスカウトたちの本音とは。
取材・文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎、石井愛子'


 今夏の甲子園は台風11号の影響により2日遅れのスタート。開幕からの2日順延は史上初だった。スカウトの朝は早い。4試合日の場合、第1試合開始1時間前の午前7時が開門。ネット裏の絶好ポジションをキープするためには、朝一番の阪神電車に乗り込んで、8号門に並ばなければならない。全国から集結したNPB12球団のスカウト陣は原則、出場49チームがすべて出そろうまで視察する。今年で言えば7日目の第3試合まで、計25試合。実質9日目はさすがに、疲労の色も濃い。

 大会の全体としては中日、プロ関係者にとっては“最終日”に大会総括としてスカウト会議を開くケースが多い。9月1日からは、最後の真剣勝負の場である18Uアジア選手権(タイ)が控えているが、高校生の視察は夏の甲子園が一区切りである。2014夏の傾向とは――。球団と実名を伏せることを条件に、某ベテランスカウトが重い口を開いてくれた。

「今までの大会と比べて候補選手が少ない印象です。もちろん、松本(裕樹、盛岡大付)や岡本(和真、智弁学園)は前評判どおりでしたが、毎年いる『この夏の顔は誰だ』と聞かれても、すぐには出てこないですからね」

 主役不在――。言うまでもなく、ドラフト1位確実で158キロ右腕の済美・安楽智大が出場を逃したのは大きい(愛媛大会3回戦敗退)。昨年9月に発症した右ヒジ痛からの故障明けであり、一部では「将来を考えれば、登板過多を回避できたのは良かった」との声も。しかし、2年時の春夏の活躍にインパクトがあっただけに、甲子園に「スター」がいないのは、やはり寂しかったようだ。

 もう一人の主役候補だった、昨夏優勝投手の前橋育英・高橋光成も群馬大会3回戦敗退。1月にバント練習の際に右手親指を骨折。夏には間に合わせたものの、甲子園8強進出の健大高崎に力負け。本領発揮とはいかなかった。

 また、昨春のセンバツ優勝投手の浦和学院の左腕・小島和哉は埼玉大会3回戦、今春のセンバツ4強左腕の佐野日大・田嶋大樹は栃木大会決勝で涙をのんだ。相次ぐ有力選手の地方大会敗退の現実に別の球団のスカウトも、こうぼやいた。

「(ドラフトの)対象選手はいるんですが……。目玉がいないと……」

 アピールはすでに十分。だが、本音を言えば、貯金ではなく、直近の“資料”が欲しいのも現実だ。10月23日、その判断に注目が集まる。
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