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一次ラウンドから決勝まで、全5試合で四番を任された岡本。決勝でも右前打を放ち、木製バットも巧みに使いこなしてチームバッティングを貫いた


金属バットから木製に持ち替えても、パワフルなスイングは不変だった。待望のサク越えこそなかったが、全5試合で安打を記録。侍ジャパン不動の四番はアジアの舞台で存在感を見せた。すでに夏の甲子園敗退直後に「プロ志望」を表明。10月23日のドラフトへ向けても評価を高めた。
プロのスカウト&コーチが分析する岡本和真こちらです。

侍ジャパン不動の四番としてタイを席巻


 打撃練習で打席に入ると、スタジアムの空気が一変する。ケージの後方で待機していた他選手が、手を止めて視線を1点に集中させる。そして、バットがとらえた瞬間に消えてしまう打球の行方を目で追い、感嘆の声をもらす。岡本和真の存在感は高校生トップが集結した侍ジャパンだからこそ、より一層際立った。

 一次ラウンド初戦のフィリピン戦では、外角のボールを、ライトフェンス直撃の二塁打。両翼93メートルと狭いクイーンシリキット第二球場だが、日本の球場でも外野の頭は越えていたはず。

 高校日本代表・高橋広監督から「素晴らしい当たりをしていた。ストライクゾーンの関係で感覚が狂ったみたいだったけど、安定して力を出してくれる」と称賛された。

 その後もスリランカ戦では3安打2打点、中国戦では2安打2打点と鋭い当たりを連発。予選で放った6安打中、4安打が逆方向への長打と、他選手のお手本となる内容の濃いバッティングだった。

 それでも「まだ全然ダメ。スイングというよりもメンタルの問題。四番打者というよりも四番目の打者として考えたい」と首を振ったのは、最大の魅力である一発が出なかったからだろう。

 迎えた決勝トーナメント。大一番のチャイニーズ・タイペイとの準決勝では単打2本だったものの、9回裏に放った左前打は1対2の無死一塁から放ったもの。一発逆転を狙い、もし飛球アウトならば反撃の勢いが一気に削がれる可能性もある場面。「負けていたので、岸田(行倫)が出てくれたので自分も続いてつなごうと思って打ちました」

 四番のチームバッティングでチームは一気に息を吹き返し、3対2の劇的な逆転サヨナラ勝利を収めた。

 韓国との決勝でも0対2の7回二死から右前に安打を放ち、岸潤一郎の適時打で1点差とするホームを踏んだ。

「3人で終われば流れが向こうに行ってしまう。しっかり強いライナーを打って塁に出ようと思っていた」とここでも自己犠牲に徹した。

 5試合を通じ打率.474、5打点。「決勝トーナメントではソコソコ速い真っすぐを放ってこられても、木製バットで打てたのは自信になります」。

 智弁学園での高校通算73本塁打は金属バットでの数字だが、木製バットへの対応力も示した。

 各球団ともノドから手が出るほど欲しい右の大砲を放っておくはずはなく、球団の補強方針、獲得ニーズによっては、10月23日のドラフト会議のキーマンとなりそうだ。

「1年目から活躍できるくらいの気持ちでやりたい。今のままでは全然ダメなので、どこの大学、社会人、プロに行くとしても、しっかり練習していきたい」と、岡本はタイでの最後も変わらず、謙虚に語った。

 新世代のスラッガーが描く成長曲線は、まだ上昇し始めたばかりだ。

グラウンド内では集中力を研ぎ澄ます主砲も、外では前橋育英・高橋と戯れるなど高校生らしい一面を見せた


PROFILE
おかもと・かずま●1996年6月30日生まれ。奈良県出身。183cm95kg。右投右打。小学1年時にカインドで野球を始める。五條東中時代は橿原磯城シニアに所属。3年時にはシニア日本代表四番。智弁学園高では1年春からベンチ入りし、夏以降は四番。14年春のセンバツでは1回戦(対三重)で2本塁打。今夏は1回戦敗退(対明徳義塾高)。高校通算73本塁打。今大会成績は5試合、19打数9安打、打率.474、5打点。
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