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王貞治ソフトバンク球団会長が「運動神経では今年の候補の中で一番」と、その素材にほれ込んだ松本。将来に期待がかかる逸材だ


文=高橋昌江、写真=栗山尚久

 松本裕樹の名前は第1回1巡目入札のラストで呼ばれた。ところが、笑顔になるでもなく、驚くでもなく、マウンド上と同様、ポーカーフェース。

 ドラフト前日にソフトバンクの単独1位指名の可能性が出たが、それまでは早大・有原航平や済美高・安樂智大が話題の中心。そんなこともあってか、「(指名された)実感があまりなかった。ビックリしたというのもあると思う」と淡々と話した。

 ストレートの最速は150キロ。だが、スピードを追い求めるタイプではない。スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ、ツーシーム……と変化球が多彩で、制球力が抜群。「教えることのできない、指先のいい感覚を持っている」とは関口清治監督。天性の器用さで、いかに打者を抑えるかを常に考えている投手だ。高校通算54本塁打と打力も兼ね備え、「二刀流」として注目された。その類い稀な野球センスを、全国舞台で披露する――はずだった。

 松本は、今夏の岩手大会前から右肩に違和感を覚えていた。しかし、「試合に入れば大丈夫だった」と、気にかけていなかった・・・

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