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先発の大谷は制球に苦しみ、再三にわたって走者を背負う展開。中軸を抑えたが下位打線に痛打を浴びた



信頼と執念の勝利


 侍ジャパン先発の大谷翔平と、MLB先発のシューメーカーとでは、相手打者へのアプローチが180度、異なっていた。

 今季メジャー16勝を挙げた28歳の後者がスターター(先発)の役割に徹したのに対し、まだ20歳の前者は、真っ向から力で打者を封じ込めにいき、第4戦の藤浪晋太郎(同じく20歳)と同様に5回を持たず返り討ちに遭う。

 被安打6、与四死球3、失点2で、4回を投げ終えたところで第2先発・井納翔一のリリーフを仰いだ。「気のないボールは打たれます。甘く入ったところ、カウントを稼ぎに行ったところはしっかりと長打を打たれました。先頭(打者)などもっと気をつけるべきでした」

 試合後の大谷の反省の弁だが、例えば2点を失った3回はまさにそう。先頭の八番・デューダに対し、2ボール0ストライクとなった3球目、3ボールを嫌い、投じた154キロのストライクを左中間に弾き返されて二塁打。続くエスコバルには初球の甘く入った変化球を右前へ。

 一、三塁とされたところで一番・アルトゥーベへの初球、インハイへの逆球を嶋基宏が捕れず(記録はパスボール)、独り相撲で先制点を献上してしまった。さらに1点を失ったあと、安打、四球、死球と力勝負が空転していたのは誰の目にも明らか。後続を連続三振(全7奪三振)で失点を2点にとどめたが、この回だけで30球を投じ、3回終了時点で57球は80球の球数制限のある今大会(WBCも同様)では致命的。

 小久保裕紀監督が「長いイニングを」と期待する中で、4回の早期降板は先発の役割という面では大いに不満が残る内容だった。

 一方のシューメーカーは第1戦で2点を失い、敗戦投手(5回を投げ切っている)となっていたことを猛省していた。「非常に良い打者がそろっている。思っていないボールはファウルにする能力があるし、失投は逃さない。できるだけ彼らに打たせて、早くイニングを終わらせる。かつ抑える。(すべてのボールを)正しいところに、正しく投げることを意識した」とストライク先行で打者を追い込み、5回を散発の被安打2、当然の無四球で64球とまだまだ余力を残して役割を務め上げた。

 大谷とはタイプが違うと言ってしまえばそれまでだが、スターターの役割「打者にバットを振らせること」はMLBの投手陣にある共通認識。「気のないボール」でストライクを取りに行ったことを反省する大谷は、「正しいところに正しく投げる」意識で64球を投げ抜いた右腕の考えに耳を傾けるべきだろう。

ア・リーグ首位打者で最多安打のアルトゥーベは右方向に3安打。見事なチャンスメークを見せた


2度目の先発となったシューメーカーは、第1戦の2 失点から見事な修正。先発の役割を果たした


侍ジャパンのWストッパーの1人・高橋。三番・モーノーに二塁打を浴びるも、後続を断った



侍セレクション


#4 菊池涼介

小久保ジャパンのけん引車

 守備力と走力を主戦術にする小久保ジャパンにおいて、柳田悠岐と並び外せない存在となった。この日も3点を追う7回に右中間を破る当たりで一気に三塁へ。その後、四番・中田の三ゴロの間にホームを踏んだ。167センチの小兵・アルトゥーベと積極的に交流を図り、守備、打撃を認めたアルトゥーベからはバットをねだられる場面も。世界がKIKUCHIを認めた瞬間だった。
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