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2014年ペナントレース総括

ヤクルト 最高打率をマークするも投手&守備陣崩壊で最下位

 


144試合60勝81敗3分 勝率.426
[ホーム32勝39敗1分/ビジター28勝42敗2分]
[交流戦10勝12敗2分 勝率.455 9位]


◎投手力


 昨季最多勝と新人王を獲得した小川泰弘のケガによる3カ月の離脱はチームにとって相当な痛手となった。だが、そこを差し引いても今季の投壊はひどい。リーグワーストの防御率4.62、失点717は断トツの数字で、防御率4点台、失点700点代はリーグで唯一なのだから、最下位という結果は当然だろう。

 先発、リリーフともに総崩れで、先発陣の防御率4.64、救援投手陣の防御率4.58と援護をもらっても守り切ることができなかった。

 しかし来季へ向け収穫もあった。小川は離脱がありながら9勝6敗と貯金を作った。石山泰稚を先発に配置転換すると、勝ち星には恵まれなかったが、伸びしろを感じさせる投球内容を披露。ルーキーながら61試合に登板した秋吉亮も勝ちパターンで起用され19ホールド、同じく1年目の杉浦稔大も終盤4試合に先発して2勝を挙げるなど一軍で通用することを証明した。来季のチーム上昇へのカギは投手陣が握っている。

▲ケガによる3カ月の離脱がありながら3つの貯金をつくった小川。来季もエースとしての活躍が期待される



◎攻撃力


 勢いに乗ると止まらない今年の攻撃陣は、まさに球団史上最強だ。8月には球団記録を更新する8試合連続の2ケタ安打、プロ野球タイ記録の8試合連続の7得点以上をたたき出した。さらに川端慎吾が球団記録を更新する4試合連続の猛打賞、10月には山田哲人が日本人右打者のシーズン最多安打の記録を更新するなど、次々と記録を塗り替えていった。

 昨季と比べてもその攻撃力の違いは明らかだ。まず、規定打席に到達したのはバレンティンの1人から、今季は山田(.324)、雄平(.316)、畠山和洋(.310)、川端(.305)、バレンティン(.301)と5人に増え、全員3割超え。チーム打率も.253から.279、チーム得点も577から667と大幅にアップ。しかしこれが勝利へとつながらないもどかしさもあったはず。得点力はもちろん大事だが、来季は勝負強さと僅差で打ち勝つ強さを兼ね備え、チームとして勝利に結びつく打撃をしていくことが必須となる。

◎守備力


 昨年に引き続き、守備率(.982)、失策数(97)はともにワースト2位。守備位置別でみると、二塁手・山田は2位の13失策。三塁手・川端は1位タイの14。遊撃手・森岡良介は4位タイの10。外野手では雄平、上田剛史が1位タイの7とミスが目立つ。

 また、センターラインの一角である、遊撃手を固定できなかったことも課題。打撃を買われ起用されていた森岡は守備に難があり、守備力に定評がある谷内亮太は打力不足。名手・宮本慎也のように、とまではいかないが頼れる遊撃手の存在が必要となることは間違いない。

 優勝争いを繰り広げた2011年(2位)はリーグトップの守備率.990をマーク。守備の重要性は明らかだ。しかし、今季初めてフルシーズンを戦った山田、野手転向5年目の雄平、三塁へコンバートして2年目の川端など、実績の浅い選手が多い。それだけに今季の経験は必ず来期以降への糧になるはずだ。

【2014年の主な達成記録】


▼開幕戦で初打席初球本塁打=西浦直亨、3月28日対横浜(神宮)、史上初
▼打者0で勝利投手=久古健太郎、5月3日対阪神(神宮)、プロ野球2人目
▼先頭打者本塁打によるスミ1勝利=石川雅規(投手)、山田哲人(打者)、6月11日対楽天、プロ野球17度目。1回表では6人目
▼1試合4二塁打=岩村明憲、6月14日対日本ハム(札幌ドーム)、プロ野球11人目
▼交流戦の首位打者=山田哲人、史上最年少でセ・リーグでは6年ぶり2人目
▼4試合連続猛打賞=川端慎吾、8月8日対DeNA(横浜)、球団新記録、プロ野球14人目
▼日本通算150本塁打=バレンティン、8月21日対巨人(神宮)、プロ野球160人目
▼シーズン192安打=山田哲人、10月6日対DeNA戦(神宮)、日本人右打者のシーズン最多安打記録を更新。最終戦で193安打と記録を伸ばす

【はみ出しデータボックス】山田哲人が更新した記録と未来への布石


 山田が193安打、29本塁打。日本人右打者の最多安打を記録した。190安打以上はプロ野球16人、20度目で、22歳シーズンでの到達は94年イチロー(オリックス)の21歳に次ぐ年少記録である。また、4月から6カ月連続で先頭打者本塁打を記録。シーズン6本以上の先頭打者本塁打は延べ23人目だが、6カ月連続はプロ野球史上初めてだ。

 4年目の飛躍は苦手の右投手を克服したから。右投手相手には、12年が11打数ノーヒットで8三振。昨年も左投手との対戦打率.370に対し、右投手は.260と1割以上低く、本塁打は313打席で1本。それが今季は右投手を打率.343と攻略し、本塁打は23本も放った。追い込まれてからも粘り強く、2ストライク後にリーグ1位の打率.292。12本塁打は両リーグ最多だった。

 20回盗塁を試み15盗塁。成功率.750と走力もある。来季は史上9人目の「3割30本塁打30盗塁」も夢ではない。
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