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プロ野球選手会に聞く 選手会長とキャプテンの役割

 

チームには選手会長とキャプテンという肩書きがあるが、その役割は似ているようで大きく異なる。ここではプロ野球選手会事務局の協力を得て、2人の役割と併せて、社団誕生35年、労組誕生30年となった選手会の歩みにもスポットを当ててみたい。
協力=日本プロ野球選手会事務局、文=山崎祥之

選手会長たちのもう1つの仕事


 選手会の会長は1人で仕事をしているわけではありません。本部役員選手や12球団の選手会があり、それぞれに会長がいます。各会長は「選手1人の問題は全員の問題」というポリシーに基づいて待遇や環境問題に目を配り、会全体の方針をチームに伝えたり、年2回の大会(代表者会議)でチームの意見を集約するなど大きな役割を担っています。

 事務局員も定期的に各会長を訪問し、電話連絡も頻繁に行っています。今回の企画のようにキャプテンとの役割の違いを尋ねられることも多いですが、選手会長は球団側や機構側と交渉などを行い、キャプテンはシーズンを戦い抜くためのまとめ役と言えます。

 スポーツニュースでは時折「このチャンスで打席には選手会長の◎◎選手です」と頼りになる男的に紹介されることもありますが、責任感が不可欠な仕事であるのは言うまでもありません。リーダーの1人としてチームの団結のためにキャプテンと役割を補完し合ったり、課題によっては選手会長経験者が支えることもあります。

現選手会会長の嶋基宏[楽天]。史上最年少のリーダーとして奮闘している



 選手としては余分な仕事にはなりますが、球団再編問題が巻き起こった2004年の各チームの会長経験者たちは「視野が広がっていい経験になりました」と話すなど前向きにとらえる選手も多かったのが、私たちの救いでもありました。

 選手会長とキャプテンの役割こそ違いますが、両者とも強いリーダーシップが求められることは間違いありません。

球界再編問題を経て戦う選手会イメージの定着


 ここからは12球団の選手会長のグラウンド以外での役割をもっと広く皆さんに知ってもらうために、プロ野球選手会の歩みについてもお話させていただきます。

 選手寿命も短く社会保障も不十分なプロ野球選手の地位向上を目指して、80年にまず社団法人として法人格を取得。いきなり労組をつくるのはハードルが高いこともあって、そこをベースに組合結成がなされるわけですが、準備会合も決起前夜の青年将校のごとく隠密裏に行われました。そのころはまだロッテのマネジャーをしていた現松原徹事務局長も、袴田英利会長から「とにかく部屋を手配してほしい」と言われ、「何かあるな」と思いつつ協力したことを鮮明に覚えていると言います。

 そこから5年後の85年に東京都労働委員会から労働組合として認定され、初代会長に就任したのは中畑清会長。合同自主トレの廃止などオフシーズンの明確化に功績を残しますが、さっそく大事件が起きました。ヤクルト選手会の脱会です。「親会社も労組がない」などの理由があったにせよ、12分の1が欠ける痛手は大変大きいものでした。このころ、ヤクルトの選手が巨人戦で出塁の度にファーストを守っていた中畑会長から・・・

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