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成瀬、大引がヤクルトにもたらした変化とは?

 

 2年連続の最下位という屈辱を味わったヤクルトは今オフ、ロッテから成瀬善久日本ハムから大引啓次をFAにより獲得した。成瀬には2ケタ勝利+貯金を、大引には宮本慎也以来固定できずにいた遊撃手のレギュラー、そしてチームをまとめるリーダーシップへの期待が込められている。

 だが、この2人がもたらす影響はそれだけではなかった。

 成瀬の加入により、先発ローテーションの枠が1つ減ることになり、チーム内の競争は激しさを増す。成瀬、石川雅規小川泰弘は決定的だが、残りの3枠を八木亮祐村中恭兵石山泰稚杉浦稔大、復帰を目指す由規らで争うこととなり、選手の目の色は明らかに変わっている。

 成瀬は「僕から盗めるところがあれば盗んでほしいし、何でも聞いてほしい」と話しており、キャンプで同じ左腕の村中と話をする場面も見られた。さらにロッテ時代に里崎智也(現野球評論家)から学んだ「彼らが知らないリードを積極的に伝えたい」と投手だけでなく今季から正捕手として期待される中村悠平ら若い捕手へも刺激を与えている。

成瀬は「入ったばかりなので、言葉で言うことは控えています」と黙々と投げ込むなど、姿勢で周囲に示している



 一方の大引は「143試合すべてに出たい」と決意を語り、さらに2球団を渡り歩いた経験を惜しみなく後輩たちへ伝授することも誓う。

 例えば「若い選手が多く、失敗を恐れる場面も多いと思うが、そうじゃない」という考えを持つが、その心は「エラーをするよりも、見えないエラーでランナーをためる方が大量失点につながる」ということ。大引の教えはチーム力を非常に高めそうだ。

 ただ、「口で言うのではなく、まずはしっかりやってみせていきたい」と春季キャンプでは積極的に声を出し、練習に取り組む。全体練習後にバットを振り込む姿も多く見られ、「昨季リーグ最高の打線だったが、そこに甘えることなく、自分で流れが切れないように打っていきたい」と危機感がその原動力となっている。同じポジションを争う森岡良介谷内亮太西浦直亨は昨季以上に厳しくなった定位置争いに食らいつこうと必死だ。

 中村は「お2人の加入によりチーム内の競争も増して、みんなの刺激にもなり、新しい風も入ってきています」と変化を感じている。成瀬に期待されている勝ち星や、大引の守備力はもちろんだが、それ以上にチームへ与える好影響が、最下位脱出には欠かせないスパイスとなりそうだ。

遊撃手のレギュラーとしての期待がかかる大引は「(二遊間を組む山田と)リーグNo.1と言われるようなものを築きたい」と意気込む



写真=井田新輔
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