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センバツで光った注目投手8人

 

大熱戦が数多く繰り広げられた今大会では、多くの有望選手が聖地で躍動した。ここでは本誌選りすぐりの好選手たちを一挙掲載。夏に向けての成長が今から楽しみだ。

大澤志意也・東海大四(北海道)3年
タフネス&投球術が光る


投手/右投左打/174cm69kg/1997年4月10日生まれ/北海道・天塩町立天塩中出身



 北海道勢初のセンバツ優勝はならなかったが、肩ヒジにストレスのかからない滑らかなフォームで最後まで球質は落ちなかった。「自分の投球はできました。自信を持てましたが、1球で勝負が決まる怖さを知りました」。同点で迎えた決勝の8回、真ん中に入ったスライダーで決勝2ランを浴びた場面を振り返った。

 昨年のチームには超スローカーブで全国区となった西嶋亮太(現JR北海道)がいたが、寮でも同部屋。あこがれていた先輩の投球スタイルも大いに参考にし、投球術を磨いてきた。回転の効いた130キロ台後半の真っすぐ、得意のスライダーとそれを生かす逆の球。さらにチェンジアップ、100キロ前後のカーブ。左右、前後、高低を使い切った、実に見事な投球だった。

2015センバツ成績

1回戦:豊橋工(愛知) ○3-0 ○完封 9回 120球 3被安打 10奪三振 2四死球 0失点 0自責点
2回戦:松山東(愛媛) ○3-2 ○完投 9回 134球 7被安打 12奪三振 3四死球 2失点 2自責点
準々決勝:健大高崎(群馬) ○1-0 ○完了 5回 54球 3被安打 5奪三振 1四死球 0失点 0自責点
準決勝:浦和学院(埼玉) ○3-1 ○完投 9回 112球 9被安打 3奪三振 2四死球 1失点 1自責点
決勝:敦賀気比(福井) ●1-3 ●完投 8回 134球 5被安打 5奪三振 5四死球 3失点 3自責点
計5試合:4勝1敗 防御率1.35 40回 554球 27被安打 35奪三振 13四死球 6失点 6自責点

江口奨理・浦和学院(埼玉)3年
エースを追い成長


投手/左投左打/170cm68kg/1997年12月22日生まれ/埼玉・戸田市立新曽中出身



 江口奨理が入学する直前、浦和学院はセンバツ初制覇。2年生エースとして紫紺の大旗を手にした1学年上の小島和哉(4月から早大進学)を、お手本にしてきた。夢と希望を膨らませていた矢先の9月。朝起きると突然、右目の視界がかすんだ。視神経の炎症と判明し、約1週間入院するなど、運動が一切、禁止された。練習を再開したのは昨年5月。江口は黙々とトレーニングに励んだ。

 昨秋に小島から背番号1を受け継ぎ、関東大会優勝。130キロ中盤のストレートにカーブ、チェンジアップを交えた投球術は先輩譲り。「ボールのキレ、制球で抑える。小島さんを目標にしてきた」。1回戦で春連覇を狙った龍谷大平安・高橋奎二、準々決勝では県岐阜商・高橋純平に投げ勝ち、価値ある8強進出だった。

2015センバツ成績

1回戦:龍谷大平安(京都) ○2-0 ○完封 11回 127球 3被安打 5奪三振 5四死球 0失点 0自責点
2回戦:大曲工(秋田) ○5-1 ○完投 9回 141球 10被安打 6奪三振 3四死球 1失点 1自責点
準々決勝:県岐阜商(岐阜) ○5-0 ○完封 9回 110球 4被安打 7奪三振 3四死球 0失点 0自責点
準決勝:東海大四(北海道) ●1-3 ●完投 8回 116球 6被安打 5奪三振 4四死球 3失点 2自責点
計4試合:3勝1敗 防御率0.73 37回 494球 23被安打 23奪三振 15四死球 4失点 3自責点

小川良憲・近江(滋賀)3年
新球種で可能性を広げる


投手/右投右打/178cm75kg 1997年11月13日生まれ/滋賀・彦根市立東中出身



 昨夏、甲子園デビューとなった鳴門戦で145キロを記録し完封。しなやかな腕の振りから回転の効いた真っすぐとキレのあるスライダーで「1年後の注目」とプロスカウトの視線も集めた。秋は、やや調子落ちの感もあったが、センバツ初戦では九産大九州を完封。左打者が並んだ打線に「冬場に覚えた」というシンカーが効果的で、新たな決め球に可能性が広がった。もしかすると先々は館山昌平(ヤクルト)やさらに腕を下げて高津臣吾(元ヤクルト)のようなタイプに成長するかもしれない。

 高橋翔平との対決で注目された2回戦は立ち上がりにつまずき、本来の投球ができず。試合後の本人は「初戦から本調子ではなかった」と振り返ったが、言葉とは裏腹に楽しみを膨らませた2度目の甲子園だった。

2015センバツ成績

1回戦:九産大九州(福岡) ○2-0 ○完封 9回 115球 4被安打 4奪三振 3四死球 0失点 0自責点
2回戦:県岐阜商(岐阜) ●0-3 ●先発 6回 80球 5被安打 4奪三振 5四死球 3失点 3自責点
計2試合:1勝1敗 防御率1.80 15回 195球 9被安打 8奪三振 8四死球 3失点 3自責点

森奎真・豊橋工(愛知)3年
万全でない中で好投


投手/右投右打/182cm74kg 1997年8月6日生まれ/愛知・豊橋市立五並中出身



 自責点0。春夏通じて初出場の豊橋工は東海大四との1回戦で、森奎真が13奪三振の力投を見せたものの、惜しくも初戦敗退を喫した。

 ストレートのMAXは、自己最速に6キロ及ばない138キロ。やや力加減しているように見えたが、対左打者への外角、対右のアウトローへの真っすぐにはキレがあった。昨春から主戦となり、私学の名門・東邦を春、夏とも3対4と終盤まで苦しめた実力は、甲子園でも発揮された。

 セーブしているように見えたのは、登板過多による右肩の炎症を起こしていたから。昨秋の東海大会以降はノースローで静養に努め、投球再開は1月下旬。甲子園では味方の失策により敗れたが「そのコースに投げた責任。先頭打者を出したのも良くないこと」と語る責任感の強い男だ。

2015センバツ成績

1回戦:東海大四(北海道) ●0-3 ●完投 9回 153球 6被安打 13奪三振 3四死球 3失点 0自責点
計1試合:0勝1敗 防御率0.00 9回 153球 6被安打 13奪三振 3四死球 3失点 0自責点

鈴木昭汰・常総学院(茨城)2年
目指すは最強エース


投手/左投左打/175cm72kg 1998年9月7日生まれ茨城・土浦市立第四中(土浦霞ケ浦ボーイズ



 3年前の夏のVTRを見るようだった。今治西との2回戦。2年生左腕・鈴木昭汰は、面白いように三振を重ねた。ウイニングショットはスライダー。右打者のヒザ元へ鋭く斬り込んでくる。真っすぐと同じ腕の振りだから、対応は困難。8回途中で11奪三振と8強進出の原動力となった。

「松井さん(裕樹、現楽天)を参考にしています。分かっていても打てないスライダーを投げたい」。当時2年生の松井は12年夏の甲子園で今治西相手に大会記録の22奪三振をマーク。伝説のドクターKにあこがれを抱いている。中学時代は土浦霞ケ浦ボーイズに在籍して全国大会準優勝。侍ジャパン・15U代表として日の丸のユニフォームも着た実力者。「やるからには常総史上、最強のエースになりたい」と意気込みを示し、2年生ながらチームを背負う覚悟だ。

2015センバツ成績

1回戦:米子北(鳥取) ○14-1 ○先発 7回 81球 6被安打 6奪三振 1四死球 0失点 0自責点
2回戦:今治西(愛媛) ○8-1 ○先発 7 1/3回 90球 1被安打 11奪三振 1四死球 0失点 0自責点
準々決勝:大阪桐蔭(大阪) ●3-5 ●完投 8回 122球 6被安打 3奪三振 3四死球 5失点 3自責点
計3試合:2勝1敗 防御率1.21 22 1/3回 293球 13被安打 20奪三振 5四死球 5失点 3自責点

村木文哉・静岡(静岡)2年
一冬を越えて成長


投手/右投左打/182cm68kg 1998年7月19日生まれ/静岡・浜松市立都田中出身



 2年生エースが2勝を挙げ、古豪を50年ぶり8強進出へ導いた。しかも2完投。村木文哉はセンバツ前に「秋は野手に助けられたが、春は自分が抑えて勝ちたい。この一冬を越えて、成長した姿を見せたいと思う。だいぶ、楽しみな部分は多いです」と語っていた成果を出した。

 都田中での軟式野球部、そしてKボールでも全国大会を経験した2年生エースは重圧とは無縁。さらに栗林俊輔監督が「苦労しないで努力できる人間で、周りから信頼されている」と、一切の手がかからない。

 冬場は元南海投手の大久保学コーチの下でカーブ、フォークの精度アップに努め、ここ一番で決まった。最速142キロで昨夏も1年生ながら控え投手としてベンチ入り。大久保コーチに「緊張するわけがないじゃないですか」と初戦前に語った肝っ玉は、将来性豊かな大型右腕だ。

2015センバツ成績

1回戦:立命館宇治(京都) ○7-1 ○完投 9回 128球 4被安打 3奪三振 1四死球 1失点 1自責点
2回戦:木更津総合(千葉) ○4-2 ○完投 9回 134球 14被安打 7奪三振 1四死球 2失点 2自責点
準々決勝:敦賀気比(福井) ●3-4 ●先発 2回 49球 5被安打 3奪三振 0四死球 3失点 0自責点
計3試合:2勝1敗 防御率1.35 20回 311球 23被安打 13奪三振 2四死球 6失点 3自責点

大江竜聖・二松学舎大付(東京)2年
重圧も力は見せる


投手/左投左打/170cm73kg 1999年1月15日生まれ神奈川・座間市立南中(横浜ヤング侍



 1年夏から今村大輝とバッテリーを組んで2季連続の甲子園は、悔しさばかりが残る春となってしまった。21世紀枠・松山東との1回戦は“完全アウエー”。試合前に立野淳平部長は「かつては都立との決勝(神宮)でも経験がありましたし、問題ないです」と語っていたが……。大応援団のプレッシャーは想像以上。昨夏は1勝を挙げている左腕も、その独特な雰囲気にのまれた。市原勝人監督は言う。「とらえ方次第。力にする方法はあったと思う」

 エースとはいえ、2年生。6回裏に3点差を追いついたが、7回表に痛恨の勝ち越し点。勝負どころでの詰めの甘さが目立ったものの、自己最速を更新した最速142キロのボールは力強く、さらに自己最多16三振を奪った。「この悔しさは忘れない」。チームが負けては、個人の数字を喜べるはずもない。

2015センバツ成績

1回戦:松山東(愛媛) ●4-5 ●完投 9回 140球 7被安打 16奪三振 4四死球 5失点 5自責点
計1試合:0勝1敗 防御率5.00 9回 140球 7被安打 16奪三振 4四死球 5失点 5自責点

早川隆久・木更津総合(千葉)2年
タフなメンタルが強み


投手/左投左打/178cm68kg 1998年7月6日生まれ/千葉・横芝光町立横芝中出身



 昨秋の公式戦では36回無失点。右サイド右腕・鈴木健矢(3年)とダブルエースを形成し、44年ぶりのセンバツへと乗り込んできた。早川隆久が試合を作り、鈴木で逃げ切るのが勝ちパターン。岡山理大付との1回戦は2回に失点すると、7回3失点で降板。「9回を投げ切りたかった」と、春44年ぶりの初戦突破にも納得いかない様子だった。

 左打者が5人並ぶ強打・静岡との2回戦は「カーブがキーポイント。肩口から入れて、こねさせたい」と入念なまでの作戦を語っていた。セットからキレのいい真っすぐを投げ込んでリズムを作ったが、ピンチで踏ん張れずに、6回途中3失点で鈴木にマウンドを譲った。マウンドでは絶対に弱みを見せない精神的な強さ。甲子園の黒星を糧にしていく。

2015センバツ成績

1回戦:岡山理大付(岡山) ○8-3 ○先発 7回 104球 6被安打 3奪三振 5四死球 3失点 3自責点
2回戦:静岡(静岡) ●2-4 ●先発 5 0/3回 97球 8被安打 4奪三振 1四死球 3失点 3自責点
計2試合:1勝1敗 防御率4.50 12回 201球 14被安打 7奪三振 6四死球 6失点 6自責点
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