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期待感を、大いにくすぐってくれる大器だ。常人離れした飛距離、そして打球速度は、キャリアを重ねることでさらなる磨きがかかり、阿部慎之助坂本勇人不在時には原辰徳監督が迷いなく四番に指名するまでの信頼を勝ち取った。自らに大きな期待を掛けるプロ7年目、大田泰示の決意を聞いた。
取材・構成=坂本匠 写真=内田孝治、桜井ひとし、高塩隆、小山真司

1球1球を大事にする


 この春のジャイアンツの主役は、間違いなく大田泰示だった。昨オフに原辰徳監督が“四番候補”に指名したことが発端。14年終盤戦の好パフォーマンスもあり、周囲も若き長距離砲の挑戦を肯定的に見守っていた。大田もこれに結果で応えていたが、好事魔多し。3月11日、ソフトバンクとのオープン戦(ヤフオクドーム)で左大腿二頭筋を肉離れ。約1カ月半に及ぶ二軍生活を強いられることとなる。開幕は絶望。例年であればこのまま……も考えられるところだが、今年の大田は違う。4月30日に一軍復帰すると、阿部慎之助、坂本勇人を欠く窮地のチームを、そのバットで救った。

──4月30日の一軍復帰以降、14試合中、1試合を除く13試合で安打を記録しています。現在の状況をポジティブにとらえても良いですか。

大田 一軍に戻ってからここまで、しっかり自分の打席にできていると思っています。チームの勝ち、負けはありますが、『この試合で勝つ』ことを考えると、1打席1打席が大切だと感じますし、さらにその積み重ねが重要。たとえ点につながらなくても、ムダなヒットはないので、とにかく1打席、その中の1球を大事にするように心掛けています。

 だらしなく当てにいったり、力なく空振りしたり、気の抜いたプレーだけはしたくないと考えているので、ここまでは1球1球に集中することができているのかなと。もちろん、凡打、三振もありますけど、失敗はすぐに反省する。例えば、まだまだバッターとして技術がないので、甘いボールをファウルにしてしまうところも反省点。『とらえた!』と思ったときに力んでしまったり、開きが早くなったり。これを抑えることができれば、確率も上がるはずですし、幅も広がるのではないかと思っています。

──1球1球を大事にする意識は、以前から持ち続けているものですか。

大田 そういう気持ちは前々からあったはずなんですが、プロに入ってしばらくは、『また三振してしまうんじゃないか』とか、『凡打してしまうんじゃないか』と、結果が出なかったときのことばかり気になって、なかなか集中し切れない部分がありました。

 でも、昨年、8月に一軍に上がり、代走から出て、1打席だけ回ってくるという機会が多くあったんですが、この1打席に本当に勝負がかかっていたんです。先発をつかめたり、遠のいたり、代打のチャンスをもらえたり、声が掛からなかったり。そういうのを何度も経験させてもらううちに、悪い結果ではなく、良い結果を出すためにどうするかに考え方が変わっていきました。集中して、追い込まれても何とかヒットを打てるように、内野安打でもいいから粘ろうと考えて打席に立つようになっていましたね。つかめたとは言わないですけど、感じるものがあったので、それ以降は1球1球を大切にするように、常に意識しています。

走塁も、守備も、一切の妥協を許さないことが飛躍につながっている。一番を託せる走れる“四番候補”は貴重だ



──粘りを意識した影響か、それまで強くて大きいという印象があったスイングが、コンパクトかつ鋭さを増したように感じます。

大田 このころからバット(※34インチ=86センチ)を・・・

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