開幕前に急きょクローザーに命じられたのが転機だった。3月31日に初セーブを挙げると、新人の連続セーブ記録を更新。かつての「ハマの大魔神」と比べて、自らを「小さな大魔神」と控えめに語るドラフト1位ルーキーがチームを勝利に導く。 ※成績は5月27日現在 取材・構成=菊池仁志 写真=大賀章好、川口洋邦、BBM 取材協力=Lanikai Terrace 一瞬に気持ちを込める
──1年目のシーズンが開幕して2カ月、クローザーとして26試合で1勝1敗17セーブの成績です。
山崎 入団が決まったころには、この時期にいまの成績が残せているとは思っていませんでしたし、このポジションを任されるとも思っていませんでした。僕がそう思っていただけではなく、周りの人も予想外だったでしょうね。いまは幸せなポジションでやらせてもらえてうれしいですし、結果にも喜びはあります。ただそれ以上に感じるのは、「やらないといけない」という使命感ですね。
──持っている力を臆することなくマウンドで出せています。
山崎 自分の力というだけでなく、ファンの皆さんの声援が力になっていますし、僕がマウンドに上がる前の段階でさまざまな方が力を貸してくださっています。それが成績につながっていると思いますね。僕としてはバッターに対して1球を投げるのでも、その一瞬に気持ちを込めて投げています。後悔しないようなボールを投げることを考えているので、そういうところで100%に近いものが出し切れていると思います。
──プロの、それも一軍のマウンドでそれをやり切るのは簡単なことではありません。
山崎 僕は新人で、まだ怖いことを感じてもいないですし、そこが逆に強さとなっているんだと思います。怖いもの知らず、当たって砕けろ、というような心境でいまは攻められているので、その気持ちがボールに乗っかっているんじゃないですかね。
「怖いもの知らず、当たって砕けろ。その気持ちがボールに乗っかっている」とこれまでの投球を振り返る
──「使命感」という言葉がありましたが、それを力に変えられているようです。
山崎 先発ピッチャーが投げて、ほかの投手がつないで、その後を受けるわけですが、誰かの白星を消すことだってあるポジションです。いろいろな選手が頑張って得たリードを守る最後のマウンドは特別な場所です。それを抑えることが自分の仕事で、それを全うすることだけを考えています。
──その仕事を現状では自信を持ってやれているのか、または無心だからやれているのか、どちらだと思いますか。
山崎 自信を持ってやっていますね。僕としては1試合1試合、少しずつですけど成長できている気がするんです。最初のときよりは落ち着いてきましたし、バッターを観察する余裕も出てきました。最終回のマウンドに立つにあたって、気持ちを強く持てる根拠になっているモノがあります。それが自信です。決して無ではなく、積み重ねられているものだと思います。
──その自信を構築するのに、ポイントになっている試合があれば教えてください。
山崎 まずは4月1日の
広島戦(横浜)です。前日もチームが勝って、ここから頑張っていこうという雰囲気の中で、7対1の9回、連投で上がったマウンドでした。3失点したんですけど、疲れではなく気持ちの緩みから失点した部分があって、そのことを猛反省する試合でしたね。もう一つは4月21日の
阪神戦(同)です。同点の9回に走者一、二塁でゴメス選手に2ストライクからセンターオーバーの二塁打を打たれるんですけど、自分の力を発揮できずに打たれてしまったモノでした。負けてしまった悔しさももちろんありましたが、やり切れなかった自分へのイラ立ちが強かったですね。いま、マウンドに上がったときにスコアボードを見ると、「1敗」と成績が出ていますが、それを見るたびに「同じことをやってはいけない」と自分を戒めるモノになっています。
──自分の力を出し切れないことが後悔につながる。
山崎 僕の場合、1イニング、3つのアウトを取ることに集中するので、そこで100%出せなければ当然、後悔します。それを少しでもなくしたいということです。
──そのことを実感し、気持ちと体の準備の仕方も変わってきているのではないですか。
山崎 そうですね。ブルペンでのらりくらり入ってしまったら、マウンドでもそうなってしまうんですよね。ちゃんとメリハリをつけることです。オフは完全に切って、スイッチを入れたら投げることに集中するようにしています。それはその阪神戦から変わりました。準備の仕方がそれまでのモノじゃいけないと分かりましたし、準備をする上で押さえていないといけないポイントがいくつかあるんですが、それを考え始めたのもその試合からです。
──徐々に自分の中で構築できてきたものがある。
山崎 少しずつですけどね。まだまだ経験不足なので今後も気づいていくモノがあるでしょうし、そこも自分の肌で感じていきたい部分です。
クローザーへの挑戦
──開幕からの疲労を考慮されて5月14日の登板から20日の登板まで、間隔が空きましたが、ここでも得られたモノがあったのではないでしょうか。
山崎 離れている間も皆さんが一生懸命、勝ちにつなげようとプレーしている姿をしっかり見ている中で、僕が最後のマウンドに立てるのも皆さんの頑張りがあってこそだとあらためて感じました。また・・・
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