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2015甲子園特集

小笠原慎之介&吉田凌(東海大相模3年投手) 柔と剛のコントラスト

 

昨夏から着実に成長
NPBスカウトの評価も上々の2人


 全国屈指の両腕を擁する東海大相模が聖地への帰還を果たす。昨夏の甲子園も経験し、今秋ドラフト1位候補に上がるエース左腕・小笠原慎之介と「ドクターK」の異名を持つ右腕・吉田凌。2人はこの夏、さらなる進化を遂げ、昨年成し遂げられなかった全国制覇に挑もうとしている。

 小笠原は「背番号1」のプライドを前面に出して戦った。今夏4試合27回を自責0。防御率0.00。「(背番号)1番を着けているわけで結果を残さないといけない。全力投球でいった」。準々決勝では昨秋の県大会で事実上、甲子園出場を阻まれた平塚学園とのリベンジマッチとなった。

「負けた試合の映像を見て全打者の特徴をメモしながら研究した。ブルペンでは打者も立たせて想定しながら投げていた」

 雪辱に燃えた左腕は執念の1失点完投。決勝の横浜戦は、相手の渡辺元智監督が最後の夏とあって試合開始4分後に満員札止めとなる異様な雰囲気の中。しかし、そんな中でも7安打完封と圧巻の投球を見せた。自己最速タイとなる150キロ直球をマークした。

 速球もさることながら、今大会光ったのは変化球の進化だ。今春の関東大会準決勝。浦和学院に2本塁打を喫し0対4で敗れたことが大きなきっかけだった。もともとは速球が注目された本格派。今夏に向けて、ブルペンではチェンジアップの精度を高めることを意識。「チェンジアップが良く決まってくれたなと思う」と手応えを口にした。

決勝は横浜を完封した小笠原。まさにエースらしい投球だった



 湘南ボーイズから6年間バッテリーを組む女房役・長倉も「高く浮かなくなった」と成長ぶりを語った。中日中田宗男スカウト部長は「右の内角、左のアウトローに決められる直球は天下一品。あれはプロでもなかなか打てない。大隣(現ソフトバンク)や江夏さんのような投手になるのではないか」とトッププロになぞらえて絶賛した。

 一方、この夏背番号11を背負う吉田は「脱スライダー、脱スピード」をテーマに、縦に大きく曲がる武器のスライダーに頼り過ぎない投球を目指してきた。

着実に成長を果たし、スカウトからの評価も高まった吉田



 昨夏の決勝(対向上)で大会タイ記録の20奪三振をマークしたが、その後の秋の県大会では徹底的に研究され、スライダーを見逃すチームが続出。結局、平塚学園との準決勝では延長12回の末にサヨナラ負け(1対2)した。

 そこで考えたのが「ノーバウンドのスライダー」だ。今春まではベース付近でバウンドする縦のスライダーでバットを振らせていたが「警戒されて見逃されてしまう」と投げる目標を高めに設定。「めがけるところを少し変えて、いつものスライダーを高めに投げるイメージを持って練習した」とコーナーにスライダーを決める練習を積んできた。その結果、制球力がアップ。日大藤沢との準決勝では、3回まで完全。4強進出校中トップのチーム打率.375をマークしていた強打線を沈黙させた。

 最上級生となり思考の変化もあった。下級生らしく、勢いのままにバッタバッタと三振を取る意識はない。チームの勝利を優先に勝つ投球を追求し続けた。

「カーブはノーバンでもワンバンでもどちらにでもできる。3球かけて三振を取るより1球でゴロとかで打ち取った方が楽ですから」

 エースの座をめぐり小笠原とも切磋琢磨する中で、自らの長所も再認識した。

「小笠原みたいにスピードを出してみたいと思うこともありますけどね。でも小笠原にないもので、僕にあるものは腕の振りが変わらないことかなと」。

 剛の小笠原、柔の吉田。そんなコントラストが今夏の甲子園では見られそうだ。昨年はエース・青島凌也らとともに140キロカルテットと称され、大きな注目を集めたが盛岡大付(岩手)に初戦で敗れた。

 最後の夏となった今年。2年生には本格派右腕・北村朋也と春は制球力の高さを見せつけた左腕・山田啓太の両2年生が控え、層の厚い投手陣を引っ張る。00、01年の横浜以来の連覇を達成し再び舞い戻る聖地。小笠原、吉田ともことあるごとに「目標は全国制覇」と言い続けてきた。この夏こそ。背番号1と背番号11のタッグで、70年以来の深紅の大優勝旗を持ち帰る。

写真=井田新輔、菅原淳

PROFILE
おがさわら・しんのすけ●1997年10月8日生まれ。神奈川県出身。178cm83kg。左投左打。小学1年時に善行野球スポーツ少年団で野球を始め、投手。善行中では湘南クラブボーイズに所属し、エースとしてジャイアンツカップ初優勝を経験した。東海大相模高では1年春に公式戦デビュー、2年夏は4試合に登板し甲子園出場に貢献。聖地では敗れた初戦の盛岡大付戦では救援で1イニングのマウンドを経験。2年秋以降、背番号「1」を着ける。ストレートの最速は150キロ、スライダー、ツーシーム、カーブ、チェンジアップを操る。

よしだ・りょう●1997年6月20日生まれ。兵庫県出身。181cm70kg。右投右打。4歳から野球を始める。小学3年時に西脇れいんぼーずに入り、以来、投手一筋。西脇東中では兵庫・北播シニアに所属し、2年夏はエースとして全国大会4強に進出した。東海大相模高では1年春からベンチ入り。2年夏に5試合、17回1/3を投げて39奪三振無失点と快投し、チームを甲子園に導いた。甲子園では敗れた初戦の盛岡大付戦に8回から登板し、打者6人をパーフェクトに抑えた。ストレートの最速は151キロ、2種類のスライダーとカーブが持ち球。
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