プロ野球とは盛者必衰の世界である。過去にどんなに成績を残した選手でも、力が衰えればユニフォームを脱がなければいけないのは仕方のないことだ。しかし、周囲のそういった視線にまた、抗うのもプロ野球選手である。「まだ、できる」。強烈な矜持があったからこそ、第一線で活躍できたのは確かだ。プロ野球人生の岐路に立つベテラン。彼らはいま、何を思う――。 再び一軍で雄姿が見られるか、戦い続ける4人の投手
「ここ2、3年で一番」と二軍首脳陣が口をそろえるほど、今季の
西口文也(西武)は状態が良い。それも、一過性のものではない。シーズン通して調子に大きな波がなく、常にゲームを作り続けている。
清川栄治二軍投手コーチは「さすがベテラン」と42歳現役右腕の安定感を絶賛する。
「何よりも四球が少ない。そしてストライク先行、イニングの先頭打者を抑える、低めに投げるという、“勝つ先発投手”の3つの要素がしっかりと身についている」
5月28日の
巨人戦(東京ドーム)で、2年ぶりに一軍の先発マウンドに立った。4回4失点で敗戦投手となったが、指名打者制の試合であれば続投もあり得た内容だった。そして今現在、状態はあのとき以上と言っても過言ではない。「一軍で勝てる確率は十分あるね」と
潮崎哲也二軍監督も、「運があれば」と条件をつけつつも、12年以来の勝ち星の可能性を保証する。
いまだ変わらぬ体形、夏場でも先発ローテを外れず投げ続けた衰えぬ体力、謙虚な人間性を見れば、「まだまだ戦力になる(清川コーチ)」。恐らく、本人も同じ思いだからこそ、二軍戦でも投げ続けているに違いない。200勝達成まであと18勝。もう一度、一軍マウンドで躍動する背番号13が見たい。
完全復活を期するのは
井川慶(オリックス)も同様だ。昨年5月14日の
楽天戦(コボスタ宮城)以降、一軍登板のないベテラン左腕を球団が後押ししている。
阪神に在籍時の2003年には、防御率2.80で20勝(5敗)を挙げ、リーグ優勝に貢献、沢村賞を受賞した。日本球界No.1左腕の実績を引っさげ、07年からメジャーに挑戦したが、渡米5年間でわずか2勝。10年からの3年間はマイナーでくすぶっていた。
12年にオリックスで日本球界に復帰も、目立った活躍はない。今季は開幕を二軍で迎え、9月13日時点でファーム12試合に登板し、0勝4敗、防御率15.16と全盛期とはほど遠い。だが、本人は復活に意欲的。8月に入り大規模な肉体改造に着手、体重を100キロ台から80キロ台後半まで絞り込んだ。減量に伴い、ボールのキレと威力が落ちたが、シート打撃に登板するなど「もう一度、一軍で投げる」と復活を目指している。
そんな左腕を球団がサポート。球団関係者は「何かを変えようという思いがあったのだろう」と井川の姿勢を評価し、来季も契約を結ぶ方針を固めている。来年37歳を迎える左腕。日米通算95勝のベテランは、かつての輝きを取り戻せるか。
マウンドに戻る夢がなかなか叶わないのは、
中日の左右のベテランだ・・・
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