攻守走で夏の甲子園、U-18W杯で高い能力を見せつけ一躍、ドラフト最上位候補として注目されるようになったオコエ瑠偉(関東一)。本人は9月15日にプロ志望届を提出、最高峰のレベルで戦う決意を固めた。類のない才能を誇る逸材の、その魅力とは――。 取材・文=楊順行 写真=大賀章好 スタンドを沸かせた驚異のスピードの秘密
「あ、やりましたね、30盗塁!」 取材したのは、9月16日のことだ。前日、
ソフトバンクの
柳田悠岐が
オリックス戦(京セラドーム)で30盗塁を達成。
ヤクルトの
山田哲人とともに、今シーズンの「3割・30本塁打・30盗塁」というトリプルスリー達成をほぼ確実にしていた。オコエ瑠偉もちょうど前日、プロ志望届を提出して記者会見を行い、「山田選手や柳田選手のように、トリプルスリーを目指せる選手になりたい」と語ったばかり。で、挨拶がわりに柳田の話題を持ち出すと、打てば響くような反応が返ってきたというわけだ。
しっかりした受け答えは、甲子園時からメディアに好感を持たれていたが、この日は15分ずつの個別取材が9社というスケジュール。われわれの順番はそのうち4番目で、おざなりな対応になっても、まあ無理はないかと覚悟はしていた。それが、真摯な話しぶりと気持ちのいい笑顔である。野球だけではなく、コミュニケーション能力も卓越している。
それに甘えて、聞いてみたいことがあった。走って、打って、守っての「オコエ劇場」。とりわけ、ケタ外れの快足でこの夏をわかせた甲子園期間中、関東一・米沢貴光監督が、こんなことを言っていたのだ。
「(オコエは)二塁から三塁なら、塁間3歩くらいで行く(笑)。だから、“頼むからベースだけは踏んでくれ”と言っています」
むろん、冗談である。だが確かに、スピードに乗ったときのオコエは、塁間3歩はともかく、ほれぼれするほどのストライドの大きさなのだ。
「3歩……それはさすがに、人間じゃないですね(笑)。でも・・・
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