文=高橋昌江 写真=平山耕一 「フォームを変えるつもりはありません」
待ちに待った瞬間が来た。ドラフト開始から約2時間20分。最速146キロ右腕・
佐藤世那の名前は、
オリックスの6位で呼ばれた。時間が経つにつれ、険しくなっていった表情は一気に緩み、涙目になった。
「待っているときはドキドキがすごかったので、今はホッとしている状態です。チームメートが後ろから大きな声を出してくれたので、それで涙ぐんでしまいました」
不安にかられる佐藤に向かって、「大丈夫だよ、大丈夫だよ」と小声で励まし続けていたチームメートも、指名の瞬間に喜びを爆発させていた。
幼き日からの夢が叶った。小学校の卒業文集には、将来の夢を「プロ野球選手」と書いた。中学では硬式野球のクラブチームに入る選択肢もあったが、知り合いからの誘いもあり、小学校を卒業後は仙台育英の秀光中等教育学校に進学。代名詞のフォークボールを習得し、中学3年の秋にはKボール日本代表でプレーもした。そして、昨年。テークバックを大きく取る独特のフォームから繰り出す強いストレートと、2種類のフォークを操れるようになったことで飛躍。全国舞台で強打者相手に快投を演じ、明治神宮大会で優勝したことで、プロへの思いを強くした。
ところが、今年1月に右ヒジの疲労骨折が判明。何とかセンバツ大会に間に合わせたものの、6月の東北大会まで不調だった。それでも、その6月にプロ志望を固める。
「自信はありませんでした。でも、ほんのわずかでも可能性があるなら、それに懸けたいと思いました。確かに6月は調子が悪かったのですが・・・
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