プロ野球の舞台へと導くのが日々、グラウンドや球場で視察するスカウトの仕事だ。毎年、好選手を発掘し続ける“肥えた目”には「田中正義」はどう映るのか――。日米球界による“争奪戦”も予想される156キロ右腕の逸材レベルを探ってみよう。 「過去20年を見てきても、大谷と田中は双璧」
2015年6月29日、侍ジャパン大学代表はNPB選抜と壮行試合(神宮)を戦った。2番手で登板した田中正義はプロ二軍相手に4回パーフェクト。7連続を含む8奪三振を、スタンドから見届けた
広島・
苑田聡彦スカウト統括部長は「あれで文句を言う人がいたら、こちらが聞きたい」と、独特の表現で156キロ右腕を絶賛した。
スカウト歴39年の超ベテランは「10球団が(1位入札で)来てもおかしくない」と、歴代最多を更新する重複を予想する。
田中本人がこだわっているのが直球。複数のスカウトが、空振りの取れる真っすぐに、高評価を与えている。
日本ハム・大渕隆スカウトディレクターは「球質は違うが、
藤川球児(
阪神)のように真っすぐを軸とした配球で勝負できる。つまり、ストレートと分かっていても打てない」と、プロでも武器になると確信する。
比較対象として最も分かりやすいのが、今や日本のエースに成長した日本ハム・
大谷翔平である。複数球団のスカウトが「大谷クラス」と、その潜在能力の高さを認める。実名を伏せる条件で語ったあるスカウトは「大谷は(近い将来、メジャーへ)抜けるかもしれない。田中はその次の存在になれる」と言った。大谷と田中は1994年生まれの同級生。ここまでのキャリアは大きく違うが、これも不思議な縁である。
NPBのスカウト合戦はすでにヒートアップしているが、MLBは指をくわえて見ているわけではない。現状のドラフト制度においては、仮に「メジャー志望」であっても、プロ志望届の提出が義務づけられている。NPBドラフトで指名漏れとなった段階で、初めて交渉が解禁となる。12年の花巻東高・大谷はかつてない「メジャー志望」を明言した上で、NPBドラフトでの指名回避を懇願した。だが、日本ハムが強行指名。粘り強い交渉の末に入団にこぎつけた事実があるが、これはレアケースと言っていいだろう。田中は現時点で、即メジャー・リーグ挑戦へは消極的と見られる。しかし、大卒選手が海外FA権を取得するには9年かかり、選手としてのピークを過ぎてしまう可能性がある。アストロズ・
大慈彌功環太平洋部長は・・・
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