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特集・真の「黄金世代」を探れ!

特別対談 大谷翔平×藤浪晋太郎「日本シリーズで投げ合いたい」

 


今週号の特集は「世代」を取り上げ、各世代を代表する選手たちを紹介していく。まずは、1994年生まれでプロ野球をけん引しているビッグ2、日本ハム大谷翔平阪神藤浪晋太郎の対談をお届けする。高卒から3年目が終わり、日本を代表する選手に登りつめた2人。この同級生ライバルがお互いに何を考え、何を感じているのか――。そして2016年の思いについて、大いに語り合った。
構成=椎屋博幸、写真=竹中圭樹(D-CORD)、BBM

理想のピッチングは1試合27球ではない


プロ入り3年目にしてチームの勝ち頭になった大谷(15勝5敗)と藤浪(14勝7敗)。今やエースとしての自覚に満ち、今回の対談でも「どのようにして勝つのか」ではなく「いかにして理想の投球をしながら勝つか」という高いレベルの次元で話が進んでいった。

――昨年は藤浪投手が奪三振王。大谷投手は投手3冠を獲得されました。その2人の理想の投球とはどういうものなのかを聞かせてください。

大谷 (9回をすべて打者1球で終わらせる)27球で試合が終わると少し面白くないですし、全部三振というのも現実味がないので……。試合の中で、状況に応じて自分の思い描いているアウトが取れたときが理想の投球だと思いますね。

「試合の中で、状況に応じて自分の思い描いているアウトが取れたときが理想の投球だと思いますね」(大谷)



藤浪 僕は何球投げても勝てば同じかなと思います。それにピンチのときには球数を多く使っていいと思います。それ以外のイニングは27球ペースでもいい。その中で僕の理想も、自分の思い描いた投球でアウトを取ることです。例えば、ゲッツーが欲しいときに、ゲッツーを打たせる投球。ただ、昨年の登板の中で、理想のピッチングは1試合もなかったですね。大谷は?

「僕の理想も、自分の思い描いた投球でアウトを取ること」(藤浪)



大谷 僕のピッチングだと、ゲッツーは結果的に打球がそこに行ったから成功した、という感じになるから……。僕も、この試合が理想的というのはなかったかな。理想どおりに三振を取ったときはあったけど。

――では、チームを勝利に導く投球とは、どういうモノでしょうか。

大谷 質問とは少し的が外れるとは思いますが「負け完投」ができるくらいのピッチングだと思います。ビハインドの試合展開でも最後まで信頼してもらい、投げさせてもらえることは大きい。それで試合を作って逆転してもらう展開が一番良いです。

藤浪 野球は流れがあるスポーツなので、流れの中で相手に逆転をされず、ターニングポイントでしっかり抑えられたら、チームを勝利に導けると思います。試合の中では2、3回程度「ここをしっかり抑えれば」というポイントや山場が必ず来ます。そこをしっかり抑えられれば必然的に勝利につながると思います。

大谷 僕は勝ってきたこと(全国優勝経験)がない投手なので、そういう場面で抑えられなかったり……今のところまだまだそういうピッチングがダメだと思うので……。(藤浪は)勝ってきた人間だからね。



藤浪 いやいやいや(笑)。器用なほうではないから。でも高校(大阪桐蔭高)のときに「(野球は)流れのスポーツだから」とよく言われていたんだ。「細かいミスや油断を試合中に出さないように」とも言われていたから、今もそのことを頭に入れながら投げているよ。



大谷 そうなんだ。まあ、チームを勝利に導くには、負けている状況でもマウンドを降りたらダメ。相手エースとの対戦で、先に降板するとチームの勝利もなくなる。負けている中でも投げ続けることは、中継ぎの人を使わなくても勝つ可能性が残る。そこも期待され、投げ続けることを許されるんだと思う。

藤浪 僕もそのとおりだと思う。まあ、1対0で投げ続けるよりも、負けている状況のほうが、気分はラクだけどね。でもまずは、先取点を与えないことが先決だけど。

――では、勝つために魔球を投げたいと思いますか?それと今年覚えたい球種があれば教えてください。

藤浪 魔球ですか……あったら投げたいです(笑)。でも誰も投げられないから野球というスポーツが成立するのだと思います。投げられたら全部勝てると思うから面白くない。

大谷 そうね。あったら面白くない。僕の場合は、球種を増やすよりは、今持っている球種を2ランク上の精度にしていきたい。それで余裕ができたら次の段階に進みたいと思う。

藤浪 僕も今の球種を磨くことが一番かな、と思っているし、緩急を使った投球の完成度を上げれば何とかなるという感覚を持っている。魔球というのと少し違うけど、プロに入って衝撃を受けた変化球は、マエケンさん(前田健太=ドジャース)のスライダーだね。初めての対戦でバットを振りだしたら視界から消えた。

大谷 僕も同じ。スライダーは比較的投げやすい球種なので、ある程度精度が上がれば「もういいか」と思ってしまう変化球。だけど、あそこまで精度の高いスライダーを投げる投手はパ・リーグにもいないよ。左打席に立つと外角のボールから真ん中まで曲ってくる感覚で、ボールだな、と見逃すと真ん中に入りストライクになる。そうとう引き付けて打つバッターでないと、あのスライダーを攻略するのは難しいよ。



20勝&20本塁打を達成(大谷)、ノーヒッターを実現したい(藤浪)




――一方で真っすぐに対しての2人の意見をお聞かせください。

大谷 やはり投球の軸になるボールです。昨年はフォークが安定して良かったので、狙われても投げられました。でも限界があると思います。だからもう一度真っすぐの精度も上げていきたいです。そうすれば、変化球も生きてくると思います。

藤浪 僕は、真っすぐでカウントも整えますから、真っすぐがないことには自分の投球が成立しません。だから今年も真っすぐを大切にしていくつもりです。

大谷 僕は昨年、ここ一番でのピッチングが良くなかった。特に終盤でのソフトバンク戦(9月10日6回7失点敗戦投手)やクライマックスシリーズ(10月10日ロッテ戦2回2/3 5失点敗戦投手)で自分の投球ができなかった。1年トータルの成績よりも、大事な試合でしっかり勝つことが大切だなと強く感じました。

藤浪 反省は常について回るしね。パーフェクトしない限りは。

大谷 そうだね。でも個人的には、今年20勝して20本塁打を打ちたいなと思う。

藤浪 僕はノーヒットノーランを一度はやってみたい。必ず四球を出してしまうのが僕の投球スタイルだから完全試合は難しい。だからこそノーヒットノーランはやってみたい。20勝はいろいろな兼ね合いがあるから達成は難しいとは思うけどね。

大谷 じゃあ、ほかに藤浪が今年やりたいことは?

藤浪 ビールかけをやりたい。だから絶対優勝したい。

大谷 そこは一緒だ。僕も、チームの優勝が絶対だと思うから。ところで、2016年はどういう年になりそう?

藤浪 監督が(金本知憲監督に)代わったのでチームも変化している。秋季キャンプで少し雰囲気が変わったかなあ、と感じたね。

大谷 日本ハムはチーム自体、昨年2位になって、今年はどうなるか!?という勝負の年になりそう。昨年は個人的に打撃が悪かったので、打撃面を頑張りたい。悔しい思いもたくさんしたから。

藤浪 僕もピッチングより、今年は得点圏に走者を置いたときのバッティングをファンの方には見てほしい。

大谷 本音はホームランでしょ?(笑)

藤浪 そう!甲子園でホームランを狙いたいから、それを狙って打っているところを皆さんには見てほしい、が本音かな。毎打席狙っているんだけど……。
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