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2016球界マネー特集
ハマスタ買収完了!球団がスタジアムを所有するメリット

 

DeNAが本拠地の横浜スタジアムの運営会社に対して進めている株式公開買い付け(TOB)の成立が確実になってきた。なぜ今、スタジアムを買収するのか。その狙いと球団経営の実状をピックアップする。

 大きな決断を下した。「より横浜に根付き、横浜とともに歩む意思表明です」。昨年11月20日、横浜市内の球団事務所で行われた会見。DeNA・池田純球団社長の言葉に力が入った。1978年に開場した本拠地・横浜スタジアム(ハマスタ)の運営会社「横浜スタジアム」に対する友好的TOB(株式公開買い付け)を始めることを発表。買収総額は最大で約98億円、1月20日までに過半数以上の株式を取得するものだった。前身のTBS時代は入場料収入の25%を球場へ支払い、看板広告料や飲食、グッズ収入なども一部が球場側へ入っていた。球団と別会社がハマスタの運営を担う形。これを統合して球団と球場の経営一体化、黒字化につなげることが狙いだ。

“ハコ”を所有することで一歩進んだ球団経営が可能となる



 球界参入を果たしたのが11年オフだった。翌12年から球場側と7年間の長期使用契約を締結し、同時に入場料収入の支払いは13%へ引き下げ。広告収入の契約でも歩み寄り、入り組んだ権利関係には改善が見られていた。昨季は主催試合の観客動員が、05年の実数発表以降最高となる180万人を突破。創設初年度の117万人から大幅に伸ばす一方で、座席の平均稼働率は88%にまで達していた。ただ、チケットの売れ行きが好調でも、野球事業は16年3月期も数億円の赤字が見込まれる現状。黒字が続く運営会社に目を向けるのは自然ともいえた。



 買収のメリットはまず、球場使用料として支払ってきた入場料収入の13%が浮くことだ。球場を自由にでき、広告や飲食、グッズ収入も確保。遠征時やオフ期間中にコンサートなどを開催すれば、大きな賃貸収入も期待ができる。定期的な収入が計算できることはもちろん、安定した球団経営に直結。投手は山崎康、野手では筒香、梶谷らスター選手が生まれつつある。15年度の年俸総額は最下位だったが、選手年俸も上昇傾向。補強費にも充てられ、チーム強化へつながるのは間違いない。

 100億円規模の買収額を回収できるのは10〜15年はかかるとされる。国内で球団と球場の一体経営を実現させているのはソフトバンクなど決して多くはない。池田社長は「魅力のあるスタジアムにしたい。ファンの方に『非日常空間』を味わってもらいたい」と強調している。今季で球団創設5周年。「I☆YOKOHAMA」の合言葉は浸透し、今季はナイター主催日の午前7時から8時半まで外野エリアを無料開放し、キャッチボールなど自由にできる場所を提供するサービスも決めた。球場の座席はオレンジから球団カラーのブルーへ段階的に変更。2年後に天然芝へ張り替えることも検討している。徹底した地元密着路線。横浜から独自のカラーを発信していく。

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