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特集・GT新時代
桜井俊貴&高山俊 GT新時代のライバルとなるか

 

意地とプライドがぶつかり合うからこそ、その勝負は見応えがある。80年代のGT戦を沸かせた江川卓掛布雅之の同級生が見せた手に汗握る対決を、再現してくれそうなのが、2人のドライチ、巨人桜井俊貴阪神高山俊だろう。近未来のライバルとなり得る2人が見せたスター性、そして実力のほどは――。

桜井俊貴・全力プレー貫くクレバーな男




 新品のユニフォームに袖を通したドラフト1位ルーキーの桜井俊貴投手は、プロ1年目の目標を問われ、真っすぐな目で決意を語った。「開幕から先発ローテーションに入って、2ケタ勝てるように頑張りたいです」。立命大での指名あいさつに、大阪市内のホテルでの仮契約、東京ドームでの新入団選手発表でも、同じフレーズを繰り返した。

 球団創設82年の歴史の重さからなのだろうか。過去、何人もの有望選手が背負わされ、苦しめられた名門球団特有の周囲からの過度な目と声。宮崎、沖縄キャンプを通じて、桜井はそれらすべてを自らの結果と実力で遮った。

 強烈な先制パンチは、主将・坂本勇人と対峙したフリー打撃だった。外角の直球で空振りを奪取。投手有利の時期とはいっても、12年にリーグ最多安打を放ったチームの看板から奪った空振りは、インパクトを与えた。「直球は少し通用するのかなと感じた」と控えめな自己評価とは対照的に、坂本は「コントロールが良く、いいボール。分かっていても、打てなかった」と絶賛した。

 実戦に入っても、評価を上げた。初の実戦登板だった紅白戦で2回を無安打無失点。メジャー通算122発のギャレットからは空振り三振を奪った。初の対外試合だった韓国・KIAとの練習試合では3回を2安打1失点。初失点を喫したが、4奪三振で評価を一段階上げ、目標に掲げる開幕ローテに前進した。「しっかり練習ができたと思います」と初キャンプを充実の表情で振り返った。

 反骨心が、「投手・桜井」の原点だった。北須磨高1年秋の履正社高との練習試合。1学年上の山田哲人(現ヤクルト)にも一発を浴びるなど、「ホームランを8本打たれ、24対0で負けた」。大学3年秋に選出されたU-21日本代表では球威不足を指摘され、7キロの増量と毎日1000回の腹筋を続け、体幹を強化。4年秋には最速150キロをマークした。

 高校時代に「公立の星」と注目を浴びた桜井は兵庫県内でも、有数の進学校出身。大学の卒業論文では鎌倉時代の「御成敗式目」をテーマにするなど、野球界では異色に分類されるが、クレバーさは野球でも発揮された。紅白戦でも実証されたように、投球フォームを1球ごとに変化させ、翻ろう。キャンプ中は独自の理論を徹底し、ブルペン投球は1度も100球超えはなかった。「20年」と具体的な数字を掲げた上で「長く、コンスタントに活躍できる投手」を理想像に掲げる。最大の武器は、4年秋のリーグ戦で206球を投げ抜いた無尽蔵のスタミナ。「体力には自信があります」とプロでも、先発完投型のスタイルを目指す。大学時代、貫いたのは「全力プレー」。全力で右腕を振り切った先に、未来は開ける。

高山俊・指揮官も認めるスター候補




 大器の片りんをプンプンと漂わせる男が、遅ればせながら沖縄にやってきた。阪神のドラフト1位、高山俊外野手は宜野座での一軍キャンプに最終クールから合流。金本知憲監督の「評価」は2月25日、練習試合日本ハム戦の試合前練習に表れていた。フリー打撃を始めると、真横からじっと見る。41スイング。力が入るのか、普段よりも打ち損じが目立ったが、それでも、完璧にとらえた打球は瞬く間に右翼をサク越えする。頭はまったく動かず、動作の軸はブレない。これを見るだけでいい。打ち終わっても声すらかけなかった。

 一軍初実戦の日本ハム戦は、七番指名打者でスタメン出場。3打数無安打で迎えた9回に見せ場が訪れた。フルカウントから痛烈な打球で投手・屋宜照悟を襲う。内野安打でデビュー戦を飾ると、金本監督も目を細める。

「ちょっと予想以上……。フォーム的には完成形に近い。後は試合でどう慣れていくか。彼の好きなように、壁にぶつかるまで、何も言うつもりはない。好きなように試せばいいよ。彼のスタイルで、いまのままでね」

 本物は本物を知る。通算2539安打の指揮官が早くも放任主義を打ち出した。一発回答だろう。一躍、外野レギュラーの最有力候補に浮上した。

 昨年10月に右手有鉤骨を骨折し、回復を優先するため、2月は高知・安芸での二軍キャンプスタートだった。「もちろん一軍のことは頭に入れながら、そっちばかり先行することはない。自分のやることを最優先にしていました」。掛布雅之二軍監督からマンツーマン指導を受け、振る体力、長丁場の1年間を戦い抜くスタミナをつけた。群を抜いた飛距離は遠い沖縄まで伝わってくる。指揮官も「早く見てみたい」と合流を熱望し、沖縄に招集した。

 日本ハム戦の試合前、フリー打撃を行う姿をライバルの江越大賀がくぎ付けになって見ていた。横田慎太郎は3安打2打点と発奮し「新しい選手も来たので、それ以上に結果を残すだけです」と気合いを込めた。これから先は高山を中心として同世代の選手たちが強烈に触発し合う構図になるだろう。早くも、開幕一軍はおろか、開幕レギュラーすら現実味を帯びている。

「死に物狂いで一生懸命やるだけです。自分の持っているものを100%、アピールしていくだけ」

 宿敵の巨人と渡り合うためにも、新たなスター候補の出現が望まれる。

 そういえば、打撃のシルエットは敵将の高橋由伸監督の現役時代を思い起こさせる。掛布二軍監督も「由伸監督に失礼かもしれないけど、それくらい、いいバランスでスイングしている」と絶賛していた。東京六大学の歴代最多安打記録を樹立した力量に偽りはない。常に冷静さを失わず、受け答えも堂々としている。金看板を背負い、阪神の将来を担う逸材だと言っていい。
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