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2016春・ドラフト特集

今年のドラフトは“大学生遊撃手”に注目!

 

早大・石井一成 攻守バランスの取れたリーダー


取材・文=佐伯要、写真=田中慎一郎

いしい・かずなり●1994年5月6日生まれ。栃木県出身。181cm76kg。右投左打。作新学院高では2年夏から3年夏まで3季連続甲子園出場。早大では3年春から遊撃のレギュラーで、同春にベストナインを受賞



 早大の主将・石井一成は、東京六大学でNo.1の遊撃手だ。

 ムダのない動きで、確実に打球をさばく。好選手がそろう左打ちの遊撃手のなかで、スカウトからは「特にスローイングが安定している」と守備力の高さを評価されている。

 作新学院高時代からプロ注目の選手だったが、早大へ進学。1年春からリーグ戦に出場している。57試合(今春の4試合を含む)で通算打率は.276とやや物足りないものの、昨春の明大3回戦では柳裕也から右翼へサヨナラ本塁打を放つなど、勝負強さを発揮する。

 高橋広監督からは「ウチで一番バットを振る選手」と信頼も厚く、今春からは四番に座る。東大2回戦(4月10日)では右翼への本塁打を含む3安打5打点と大暴れして、その役割を果たした。だが、石井は満足していなかった。

「まだ本当にほしい場面で打てる強さはないと思う。どんな試合でもコンスタントに打ちたい」

 ドラフトへ向けては「まずはリーグ戦を戦い抜くことしか考えていない」と言う石井。チームを勝利へ導く一打を打てば打つほど、スカウトの評価も上がるはずだ。

中大・松田進 重圧を楽しむ右の大砲


取材・文=佐伯要、写真=川口洋邦

まつだ・しん●1994年8月29日生まれ。神奈川県出身。187cm77kg。右投右打。国学院久我山高では2年春のセンバツに出場も1回戦敗退。中大では1年春からレギュラーで2年秋、3年春にベストナイン受賞



 今秋のドラフト候補に名が挙がる遊撃手には左打ちが多いが、中大の松田進は右打ち。187センチと大型で、プロのスカウトからは「長打が打てる遊撃手」として評価されている。「打席では投手との間合いを大切にしながら、ファーストストライクから積極的に自分のスイングをすることを心がけている」と松田は言う。

 1年春の開幕戦から「八番・遊撃」としてスタメン出場を果たすなど、下級生のころから主力選手としてチームを引っ張ってきた。3年春は打率.349、リーグトップタイの3本塁打で2季連続のベストナインを受賞。だが、昨秋は打撃フォームを崩し、打率.240と不振に陥った。

 そこで、この冬は「一からすべてを見直そう」と、ティー打撃をいろいろな形で1日600球以上繰り返すなどバットを振り込んだ。また、300球のゴロ捕りなど守備の基礎練習にも取り組んだ。ドラフトイヤーを迎え、今春はチームへの貢献はもちろん、アピールすることも意識しながらプレーする。

「プレッシャーがかかるのは分かっていますが、そのなかで打たなければいけない。プレッシャーを楽しめるようにしたいですね」

東洋大・阿部健太郎 足で魅了する不動の一番


取材・文=佐伯要、写真=川口洋邦

あべ・けんたろう●1994年6月10日生まれ。埼玉県出身。177cm77kg。右投左打。帝京高では2年夏の甲子園出場(2回戦



 東洋大・阿部健太郎は俊足のリードオフマンだ。左打ちの遊撃手としてリストアップされている選手のなかで、彼の「脚力」が評価されている。「足はかなり自信になっている」と阿部自身も言う。それもそのはずで、50メートル走は5秒9。中学時代は浦和シニアでプレーしながら、学校では陸上部に所属し、400メートル走で全国大会3位に入賞した実績を持つ。

 東洋大では1年春から二部リーグ戦に出場。同秋から主に一番を任されるようになった。昨秋の駒大との一部二部入れ替え戦では2回戦で4安打を放つなど一部昇格に貢献した。

 高橋昭雄監督から「入れ替え戦で自信をつけて、成長した」と期待されて迎えた今季。開幕からの5試合で打率こそ.235だが、8つの四死球を得ており、出塁率は.480と高い。阿部は「塁に出るのが自分の仕事です」と胸を張る。

 進路については、「プロに行きたい気持ちはあるが、まだ決め切れていない」と明かす。

「これといった成績を残せていない。その分、この春に懸ける思いはかなり強いです」 

 だが、自分の結果は二の次だ。「チームのために脇役に徹する。それで勝てればいい」と考えている。

中京学院大・吉川尚輝 スピード感あふれる“菊池二世”


取材・文=岡本朋祐、写真=佐藤真一

よしかわ・なおき●1995年2月8日生まれ。岐阜県出身。177cm79kg。右投左打。中京高では甲子園経験なし。中京学院大では1年秋からレギュラーで岐阜リーグのベストナイン2回、首位打者1回、最多盗塁3回



 50メートル5秒7の俊足を生かした積極走塁に、守備範囲の広い遊撃手。左打席からの広角打法にも、非凡なセンスを感じさせる。3拍子でスピード感あふれるプレースタイルにスカウトは皆“菊池二世”との評判だ。

 中京学院大の入学前には、挫折を味わっている。一度は関東の強豪大学へ入部するも、環境になじめず、合流から1カ月で岐阜へ戻った。最終の入試を受けて、中京学院大の門をたたいた。同野球部には寮がなく、親の負担を軽減させるため、バイトが許可されている。吉川もアパート暮らしで、かつては惣菜屋で働いた。だが、2年春に首位打者賞と盗塁王に輝き岐阜県リーグ初制覇の原動力となり、同11月には大学日本代表候補合宿(愛媛・松山)に初招集される。そこで一流の選手と接するなかで、野球中心の生活に変えるべく、バイトで働いていた時間をジムで体を動かすことにシフトチェンジ。すべてはプロを目指すための決断だった。希望進路はプロ一本――。基本的に社会人チームの“抑え”もなしで、退路を断つ覚悟を決めている。

「大学まで野球をやらせてもらっているので、プロへ行きたい。(スカウトに)見ていただけるのは力になる」
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