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特集・イチロー 3000安打達成

「まさに大あっぱれ」 イチロー・涙の偉業達成に球界ビッグネームから祝福のメッセージ

 


 打球が右翼手を越えてフェンスに直撃。その瞬間にメジャー史上30人目の3000安打に到達した。イチローは快足を飛ばし三塁打となった。

 現地時間8月7日、敵地でのロッキーズ戦で「六番・中堅」で8試合ぶりの先発出場。初回から味方打線が爆発。4点を奪ったが、第1打席のイチローは三振に倒れ、勢いに乗り遅れた。その後の第2打席は投ゴロ、第3打席は遊ゴロとロッキーズの投手にうまく抑えられた。

 だが、迎えた7回の第4打席。一死後、2ボールからの3球目、真ん中低めのカットボールを振り抜いた。三塁に到達したイチローに対し、三塁ベンチからマーリンズナインが一斉に駆け寄り、一人ひとりとハグを交わす。スクリーンでも偉業達成が伝えられ、敵地ファンもスタンディングオベーションで称えた。

「達成した瞬間、あんなにチームメートたちが喜んでくれて、ファンの人たちが喜んでくれた。僕にとって、3000という数字よりも、僕が何かをすることで、僕以外の人たちが喜んでくれることが、今の僕にとって何より大事なものだということを再認識した瞬間でした」

 地元でのカージナルス3連戦でも達成できず、シカゴ遠征では3連戦とも1打席のみの代打起用。第1戦と第3戦では三塁ライナーと遊撃ライナーという惜しい当たりもあった。

 地元紙の取材に対し「さまざまなタイプのプレッシャーがあり、これは違うタイプのプレッシャーです。今後もうこういった経験はできないでしょう。ファンは声援を送ってくれていますし、ヒットを打ちたいと思っています」と、これまで数々のプレッシャーを乗り越えてきた男が、異次元とも言える緊張に襲われていることを明かした。

 前日の8月6日のロッキーズ戦、8回に巡ってきた代打で三塁前に内野安打を放ち、3000安打に残り「1」としたが、この王手を掛けるまで今季最長の11打席無安打。まさに産みの苦しみを味わった。その後、守備に就くと、9回無死一塁で打席に入るが投ゴロに倒れ、王手を掛けたまま翌日へ持ち越しに。

 そして、試合後に球団から翌日7日のロッキーズ戦での先発出場が発表された。まさに、球団をあげてイチローの3000安打を後押ししての快挙となった。

 3000安打達成後の会見では「人に会いたくない時間もたくさんあった。自分の感情をなるべく殺してプレーをしてきたつもりだけど、なかなかそういうふうにうまくいかず、という苦しい時間だった。でもこれだけ長い時間、特別な時間を僕にプレゼントしてくれたと考えれば、この使われ方も良かったなと今は思う」と語り、涙で目が光っているようにも見えた。

 3000安打は三塁打で決めたが、これは日米通算116本目。福本豊(元阪急)の持つ記録を抜く一打にもなった。さらにメジャー実働16年目での達成は、ピート・ローズ(元レッズ)に並ぶ史上最速タイ。また、三塁打での大台到達はポール・モリター(ブリュワーズ)以来の史上2人目。まさに記録ずくめの偉業達成となった。

試合後の会見で


球界からの祝福のメッセージ


王貞治ソフトバンク会長。第1回WBC監督
「おめでとうございます。アメリカでも認めざるを得ない本当の意味での金字塔ですね。日本球界にとっても大変誇らしく輝かしい記録です。心技体、常に野球をするための準備ができている、そういう彼の生き様そのものが野球界全体に影響していると言えます。イチロー君、いやイチローさん、気の済むまで野球をやってください」

中西太氏。オリックス時代のヘッドコーチ
「仰木(彬)君(オリックス時代の恩師)が一番喜んどるよ。驚異的な数字を残して、日本の国民、子どもたちを喜ばせた。一緒にやった仲間としてはうれしい限りや。あとは自分の好きなようにやりなさない」

ヤンキース時代の同僚・デレク・ジーター
「友人でありチームメイトだったイチロー、3000安打クラブへの入会おめでとう」

張本勲
「まさに大あっぱれ」

マーリンズのドン・マッティングリー監督
「イチローの存在、そして27歳からなし遂げてきたことは素晴らしい。本当にアメージングだ」

メジャー三冠王、ミゲール・カブレラ内野手・タイガース
「私がデビューした2003年にはもう彼はスーパースターだった。私がタイガースに移籍してから何度も打率を争った思い出がある。タイプは違うけど見ていて今でも楽しい打者だよ。(一塁か三塁を)守っているときは、常に緊張していなければならないし、わずかでも油断するとセーフになってしまうからね。3000安打は素晴らしい数字。私も後を追って達成できたらいいと思う」
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