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奥深き二塁手の世界

4つのテーマで斬るセカンド守備の神髄 仁志敏久(元巨人ほか)

 

的確なポジショニングで相手の攻撃の芽を摘む。2000年の日本シリーズ、さらには02年の同シリーズと、幾度となく“守り”で試合の流れを変えた仁志敏久氏の視点とは。今年3月の第4回WBCでは内野守備走塁コーチも務めた守備職人が、二塁手論を語る。


THEME.I 現代野球における「良い二塁手」の条件


「送球を考えて、あらゆる打球を捕球できること」(仁志)

 難しい打球をいかにアウトにするか。そのための選択肢の多さが良い二塁手の条件だと言えます。

 そもそもセカンドというのは、捕球するために動く方向と、一塁へ送球するために動く向きが異なることが、ほかよりも多い。例えば、二遊間の打球なら右に動いてから左に体を切って一塁へ送球。一、二塁間なら左に動いて捕球をするものの、一塁に対して角度が付くので、体を右に反転させなければいけません。つまり、捕球→送球の一連の流れを作りにくいのです。

 そこで求められるのが、送球を考えた体勢で捕球すること。それも瞬時に判断する必要があります。

「捕り方は投げ方」というのが僕の考え。捕球と送球は連動しており、送球の技術が高ければ少々、無理な体勢で捕球してもアウトにすることが可能になる。選択肢が多くなり、幅が広がるのです。

 その最たる例が菊池(菊池涼介広島)でしょう。彼は、スライディング捕球の後、体勢を崩したまま送球できる。だから、捕球体勢を“第一”に考える必要はない。実際、スライディングやダイビング捕球でも多くのアウトを奪っています。体勢を崩して送球ができない選手は、無理に打球の正面に入ろうとして捕球ミスが生じることもあります。送球技術の高さが、捕球体勢の幅を広げ、守備そのものの幅を広げてくれるのです。

 ましてやセカンドは捕球→送球の流れが作りにくいわけですから、送球できる捕球体勢の「選択肢の多さ」が、より必要になるのです。

■仁志敏久氏が選ぶ現役で最も優れた二塁手 菊池涼介(広島)

スライディング捕球で体勢が崩れながらも素早く送球。そんな広島・菊池のダイナミックなプレーを「選択肢が多い証し」と言う仁志氏。異論なく現在の日本を代表する二塁手という



THEME.II 大胆なポジショニングを可能にする根拠


「基本は打者のデータと投手との兼ね合い」(仁志)

 大胆なポジショニングは、プロ野球だからできること。打者の打球方向の傾向などのデータがあって成り立つのです。

 とはいえ、データがすべてではありません。例えば右方向への打球が多い打者が、走者一塁の場面で打席に立つとします。打者のデータだけを見れば一塁ベース寄りに移動するでしょう。ただ、右打ちされると、進塁打となる可能性があり、右前安打となれば一、三塁となる可能性もあります。バッテリーも承知のうえで右方向に打たせまいと攻めますから、センター方向に抜かれる可能性も出てきます。ケースや配球も考える必要があるのです。

 また、打者の構えも見るべき点。その構えを大別すると次の2つです・・・

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