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2017広島カープ特集

広島OB・廣瀬純氏に聞く 広島カープ連覇への道筋

 

選手たちの兄貴分として慕われ、昨季でユニフォームを脱いだ廣瀬純氏。現在も良き相談役となっている同氏に序盤戦の戦いぶりと、2連覇へのポイントを聞いた。
取材・構成=吉見淳司、写真=BBM


菊池が語った「あと5勝」の真意


 5月4日の中日戦[マツダ広島]の試合前に菊池涼介に話を聞いたのですが、その中で菊池は「5試合はムダに負けています」と口にしました。その時点でチームは18勝10敗1引分。セ・リーグの1位を走っていましたが、「半分は勝てるゲームがあった」と悔しがっていたのです。首位にいるからOK、ではなく、試合をやりながら「こうすれば勝てていた」と高い意識を持っている証拠でしょう。

 序盤戦では相手のミスやスキをついて一気に押し込む、たたみかける攻撃が光りました。これは去年の優勝が大きいでしょうね。たとえリードを許していても、何とか1点ずつでもいいから返していき、追いつこうとする姿勢が浸透しています。打線の粘り強さというのは、スタメン以外の選手にも一貫して感じることですね。

 勝ちパターンだけではなく、「試合の中でこういうことをしていたら負ける」という負けパターンをちゃんと把握しているように見えます。最低限、進塁打でランナーを進めたり、守備では少なくとも一つアウトを取るなど、昨季の経験が今に生きているのでしょう。

 4月の戦いでは一、二、三番の田中広輔、菊池、丸佳浩の存在感をまざまざと見せつけられました。田中、菊池のつなぐ打撃が丸の勝負強さを最大限に引き出しました。続く四番では鈴木誠也が出場を増やしています。これからのチームを考えると、四番をコロコロと変えたくないという緒方孝市監督の意図があるのではないでしょうか。3、4年後に新井貴浩さんがそこに立っている可能性は高くないですから。これから課題も出てくるでしょうが、鈴木はここまでは抜てきに応えています。さらに五番以降の新井さん、エルドレッド安部友裕がしっかり結果を残し、上位打線、下位打線ともに機能していました。

 序盤戦の野手MVPは殊勲打を量産した丸を挙げたいところですが、あえて石原慶幸會澤翼の両捕手を推したいと思います。石原は野村祐輔と、岡田明丈加藤拓也のときでは構え方、配球がまったく違います。若手投手には大胆に攻めさせる気配りや目配りができています。それは會澤も同様です。大瀬良大地九里亜蓮と組むと、多少高めのボールでストライクになっても、「いいよ。腕を振っていこう」とアイコンタクト、ジェスチャーをしてよくコミュニケーションを取っています。まさに投手との共同作業で抑えている印象ですね。打撃でもいいところで打ってくれる。これはほかのチームにはない強みです。

廣瀬氏が序盤戦のMVPに挙げたのは、扇の要を務める石原[右]と會澤[左]だった


ジョンソン復帰までに先発投手の安定を


 投手ではジョンソン、中崎翔太の離脱は想定外だったでしょうが、打線が援護してくれたことで岡田、九里、大瀬良ら若手投手は何とか6回、7回いければいいとラクにしてもらいました。救援では中田廉薮田和樹などが踏ん張り、中継ぎの粘りで最後まであきらめずに戦うことができています。抑えに回った今村猛も安定しており、全体でカバーしました。

 野手と同様に一人だけを選ぶのは難しいですが、序盤戦の投手陣のMVPを挙げるなら岡田でしょう。初戦こそ崩れましたが、それ以降のピッチング内容は一つランクの違う投球をしていたように感じます。ストレートの力強さはすごいものを持っていますね。中継ぎの薮田もよく頑張りましたが、登板過多が少し気になるところ。最後を締めてくれる今村の存在も大きいですね。野村も状態を上げていますし、誰か、というよりは全体のまとまりで戦っている印象です。

 さて、皆さんが期待しているであろうセ・リーグ連覇ですが、そのためのキーポイントは先発投手でしょう。現状では野村、岡田を○とすれば、大瀬良、九里は○に近い□。福井優也や加藤、中村祐太らが△。昨年の野村、ジョンソン、黒田博樹さんのような絶対的に安定した3人がいません。5月7日までの33試合のうち、先制を許した試合では8勝10敗1引分と負け越しています。序盤に先制点を取られ過ぎると、いかに強力打線といえど流れを持っていかれてしまいますからね。先発には最低でも6回を投げてほしい。咽頭炎で離脱しているジョンソンが復帰するまでに、先発投手がどれだけ踏ん張れるかに注目したいと思います。

先発投手を連覇へのキーポイントと見る廣瀬氏。大瀬良[写真]らの奮起に期待している


背番号の後継者に託す思い


その投手の話題になると廣瀬氏の表情が緩んだ。16年オフに廣瀬氏が背負っていた26番に変更となった中継ぎ投手の中田廉。自身の象徴を継いだ中田へのメッセージを語ってもらった。


「廉が26番を背負ったことによって、僕を応援してくれていたファンの方は廉のことも応援してくれていると思います。だから頑張ってほしい部分はありますね。

 廉が66試合に登板した14年のシーズン前には、大分で一緒に自主トレをしました。そこで『純さんがこんなに練習をすると思っていなかった。なめていました』と言ってくれて、トレーニングに対する意識が変わったようです。

 15年、16年と右肩の故障に苦しみ、背番号34から変更となったわけですが、僕は『26番をお前の色に染めろ。最低でも26試合には登板しないと生き残れないぞ』とプレッシャーをかけました。

 廉は本当にトレーニングをストイックにやっていましたが、肩の故障の影響でしっくりする投球ができていませんでした。しかし、今年は春季キャンプからいい状態を保っています。今の投球を見ていると、『どんな場面、展開でもいいから投げられるところで結果を出す』という覚悟を感じます。彼のいいときも知っていますし、故障で苦しんだ時期も知っているだけに、現在の姿は頼もしいですね。打席とマウンドでは違いますが、同じ背番号26を背負った者として、活躍を期待しています」

PROFILE
ひろせ・じゅん●1979年3月29日生まれ。右投右打。大分県出身。佐伯鶴城高から法大を経て2001年逆指名2位で広島に入団。1年目から80試合に出場し、強肩を生かした守備と堅実な打席を評価される。10年にはレギュラーに定着し、ゴールデン・グラブ賞を獲得。13年は15打席連続出塁の日本新記録を樹立した。16年限りで現役を引退し、野球解説者として活動中。

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