12球団に12人しか存在しないのが正遊撃手。だからこその誇りがある。中学以降は遊撃手一本で戦ってきたのが大引啓次(ヤクルト)だ。要のポジションならではの難しさ、そして醍醐味を語ってもらう。 取材・構成=富田庸、写真=小山真司、BBM ※成績・記録は6月10日時点 グラブは小さく、できるだけ薄く
──小学1年生のときに野球を始めたとのことですが、野球人生を通じて、遊撃手一本でしょうか。
大引 小学生のころは、投手をやったり捕手をやったり、いろいろなポジションを守っていました。中学からですね、遊撃手になったのは。そこからずっとです。
──まず、チームにおける遊撃手の役割についてお聞きしたいのですが。
大引 もちろんキャッチャーもいますけど、フィールドに野手がいる中でリーダーシップを発揮して、チームを引っ張っていく存在にならなければ、というところですかね。
──難しさを感じる部分もある。
大引 三塁手、二塁手と違い、遊撃から一塁までは投げる距離がありますから、一つのジャッグル(お手玉)で走者を生かしてしまうケースも多々あります。そういう状況はできるだけ避けたいですよね。投手が打ち取ったと思った打球は確実にアウトにしないと、大きなダメージになりますから。味方の選手から信頼されるプレーをしなければいけないポジションです。
──ポジショニングは、データを参考にして決めるのでしょうか。
大引 もちろん、事前にデータを頭にたたき込みますよね。ただ、僕も長年プロの世界でやってきていますから。こういう状況でこの打者はこっちに打ってくるのではという傾向があるなとか、こういうときには引っ張ってくるな、とか。データと自分の経験を総合して、そこから導き出した答えが、ポジショニングにつながっています。
──データだけでなく、これまで磨いてきた自身の感覚を大切にすると。
大引 同じデータでも、球が速い投手、遅い投手の違いがありますし、味方の投手の特徴、相手打者の調子などがありますから。それらを加味して決めます。
──遊撃を守る上で、グラブにこだわりはあるのでしょうか。
大引 僕がいつもメーカーの方にお願いするのは、重い、軽いではなく、革を極力薄くしてほしいということです。薄ければ薄いほどいい。なぜかといえば、なるべく素手感覚で捕りたいからです。僕は守備で手袋を着けないタイプ。どこでボールをつかんだのかを、素手でボールを感じたいんです。
──グラブの大きさについては。
大引 指の部分を、通常のものより約5ミリほど短くしてもらっています。もっと小さいほうがいいと思い、さらに5ミリ小さくしてもらったこともあるんですけど、さすがに小さ過ぎやなと(苦笑)。周りからは「小さなグラブを使っているな」と言われるんですけど、僕の感覚ではこれでも少し大きいと思っているくらいです。
──遊撃手ですと、捕ってから投げるまでの速さも求められます。
大引 僕の場合はグラブをギュッと握ることはほとんどないです。特にゴロなどは・・・
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