兵庫・小野高、慶大で活躍し、東京六大学リーグ戦では早大・和田毅(ソフトバンク)と真剣勝負を演じた元フジテレビアナウンサーで現スポーツアンカーの田中大貴は、1980年生まれの「松坂世代」の1人。そんな野球人・田中が、同世代の選手たちをプロ野球現場の最前線で取材した至極のエピソードを、コラムにして綴る連載第3回特別編です。 1998年夏の甲子園で浜田高をベスト8に導いた和田毅。現在よりもさらに細身だが、投球フォームは変わっていない?
歴史に残る左投手
「足首に当たるっ!」
そう思ったストレートがインコース低めいっぱいに決まる。地面すれすれの真っすぐが、ものすごい回転数で浮き上がり、サウスポーからのクロスファイアが、抜群の角度でキャッチャーミットに収まる……。
狙うは真ん中ストレート。「とらえたっ!」と思った真っすぐにバットは空を切り、外の高めに伸び上がり……体感では150キロを大きく超えていました。
あの年、春も、秋も、打てませんでした。2002年、東京六大学春季リーグ戦、秋季リーグ戦。ともに最後のバッターは僕。ラスト一球を投じるとき早稲田の大エースは春も秋も、ニヤッと笑い、何か呟いているように見えました。ストレートを投げるよ、という合図。18メートル余り先からの力勝負のメッセージでした。インコースのストレートも、真ん中に感じたストレートもまったく打てるイメージが湧き上がりません。「悔しい……」。これまで感じたことのない苦しいほどの悔しさでした。これが大学時代、私が和田毅という一人の投手へ抱いた、すべての感情です。あれから16年・・・
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