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虎の進撃はオレの手で スペシャルインタビュー

阪神・矢野燿大監督インタビュー 『あり方』を思い、その先へ 「ファンと共に喜びあうシーズンにする」

 

チームづくりへの信念は強固だ。昨季ファーム日本一へと導いた指導法=「自主性を重んじる」で選手たちとじっくり向き合う。「阪神を優勝へ」と導くために、監督としての「あり方」を示し、選手と気持ちを共有しながら、1年目からファンを喜ばせるべく采配を振るう。
取材・構成=椎屋博幸、写真=BBM


「自主性」=前向きな姿勢


 ときににこやかな笑みを浮かべながら、選手たちと積極的にコミュニケーションを図る。「監督」というよりは「体育の先生」という雰囲気が漂う。指導法は選手たちに自らで方向性を気付かせ、導こうというものだ。昨季、二軍ではその考えが浸透し、リーグ最多のチーム盗塁記録を達成、ファーム日本一まで駆け上がった。一軍監督としても同じ指導法で再建のベースづくりを目指している。

――全体練習後、いたるところで自主練習が見られるキャンプでした。

矢野監督 自主性を重視してきましたが、この「自主性」は人によっては甘く感じられたりする部分があると思うんです。でもプロとしてやる以上は「自分がどういうふうになりたいか」「どうありたいか」を考えたときに、自然と何をやるべきか見えてくるし、それが自主練習に現れていると思います。

――自分自身の未来像を想像してみるのですね。

矢野監督 それができるようになると、自分の長所、短所が分かるようになるはずです。その中で、このチームで自分は何をすべきなのかが見えてくると思います。自分で考えてやる練習のほうが、うまくなるスピードが確実に上がると思っていますし、選手にもそう言ってはいます。

――そういう考えに、矢野監督自身が至ったのはいつごろでしょうか。

矢野監督 僕自身はプロ野球選手になることが夢だったんですね。その夢が達成できたことで、プロ野球選手となった先が見えてこなかったんです。プロ3年目が終わったときくらいから、周りがクビになっていくのを見ながら「このままなら後悔するな」と思い出したんです。言われてではなく、自分でいろいろチャレンジしていかないといけない。また、引退して解説者時代に野球教室をやる中で、子どもたちなどを教えていくときに、自主性を持たせたほうが指導するにはいいのかな、と。

――選手たちに「あり方」を持つように言われていますが、これは「目的」に近い意味があるのでしょうか。

矢野監督 そう思いますね。何かをやろうとするときに、人はどうしても「やり方」ばかりを見てしまうものです。でも、自分が将来どうなりたいか、それを想像する。これが「あり方」であると思うのです。それを思い描いたときに「大きな目的」ができると思います。そこから細かい「やり方」をやっていくというイメージで考えています。それと同時に、選手たちが「このチームが勝ち上がっていくには自分はどうしたらいいのか」ということを思い描いて行動をしてほしいという思いが強いです。

――「あり方」を思い描いても、くじけそうなときがあります。

矢野監督 人生も野球も絶対に右肩上がりばかりではないですよね。毎日試合をしていても、無安打だったりエラーしたりします。そういうときにこそ「自分はこうなりたい」ということを心の中に、しっかりと持っていたら、ある程度早い段階で気持ちを切り替えることができると思うんです。

――選手個々にしっかりとした目標を持たせていくことで、前向きな心がつくられていく、と。

矢野監督 例えば大山(大山悠輔)が・・・

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