まさにチームの看板としてどっしり君臨。ただ、それだけに勝利の喜びとともに敗北の責任も負う。カープ史上最強の四番へ。道はまだ途上だ。 文=江尾卓也(スポーツニッポン新聞社) 写真=前島進 着弾先はバックスクリーン左だった。5月15日のマツダ
広島。7対7の延長10回一死一塁で、
ヤクルト・
中尾輝のフォークをとらえた打球は、スタンドのファンの巨大なうねりを呼んだ。劇勝を呼ぶ13号。「最高でーす!」。鈴木は決めぜりふを3度絶叫し、必殺の一撃を振り返った。
「フォークの落ちがいいのは頭にあったので、がっつかず後ろにつなごうと思った。手応えは良かったです」
プロ野球タイ記録の4年連続サヨナラ弾。通算5本目で、
山本浩二の球団記録にも並んだ。特筆事項はまだある。先頭打者の8回にもバックスクリーンへ12号。5点差大逆転の口火を切ると、9回一死一、二塁でも適時打をセンターへ運び、同点劇に貢献した。
2発を含む4安打5打点。この時点でリーグ3冠に躍り出た。鈴木の進化を象徴する試合。打球方向に、昨季までとは顕著な変化が現れている。センターから右へ―。6月23日の時点で放った75安打のうち、半分以上の60%に当たる45本がその方向への打球だ。
昨季までは「ボクはどちらかと言うと、左中間に引っ張り込んで打つタイプ」とし、プルヒッターを自認していた。事実、昨季の安打135本のうち、左方向へのそれは86本を数え、中堅から右へは36.3%の49本に過ぎなかった。
「打席での意識は去年と同じ。後ろへつなぐ。それだけです。センターへ打とうと意識したことはないし、その方向への打球が増えた感覚もない。もちろん、本塁打を狙うこともないです」
伏線はあった。昨秋10月30日、日本シリーズ第3戦(ヤフオクドーム)。
ソフトバンクの左腕・ミランダからソロ本塁打を放った打席がそれだ。アウトハイの直球。それを“引っ張り込む”ことなく、敵地の右翼スタンドまで持っていった。後日、鈴木はこう語っている。
「思っていたスタイルとは・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン