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2019外国人特集

楽天・J.ブラッシュ インタビュー チームのために 「一発を狙うのではなく、甘い球を打ち返すことを大事にしている」

 

チームの得点力不足解消のため、今季から新たに加わった助っ人だ。下位打線からスタートすると、その存在感はジワジワと上昇し、チャンスでの一打で信頼感を得た。兄貴分のウィーラーとともに、明るいキャラクターでチームに溶け込んでいる“JB”。後半戦、犬鷲軍団巻き返しのキーマンとなる。
取材・構成=阿部ちはる 写真=阿部卓功(インタビュー)、BBM 通訳=安保健史


まだ満足していない


 来日1年目にして、すでに楽天打線の主軸となっている。開幕は七番で迎えたが、好調な打撃を評価され6月以降はクリーンアップを担うなど、チームには欠かせない存在となったブラッシュ。いかにして日本の野球にアジャストできたのか。まずは前半戦の戦いぶりを振り返ってもらった。

──日本に来て約半年が経ちました。日本人投手の印象はいかがでしょうか。

ブラッシュ コーナーにコントロールよく突いてくるのと、フォークやスプリット系の非常にいいボールを投げるピッチャーが多いね。すごくチャレンジが難しいところではあるんだけど、それも含めて楽しめていると思うよ。

──そんな中、前半戦だけで45四球。すでに日本人投手のボールを見極めることができている印象を受けます。

ブラッシュ もともと僕は出塁率の高さには自信があるんだ。ストライクゾーンじゃないところに来たボールをあまり振らないというのは、自分の強みの一つだと思っているよ。

──日本の投手に対応するため、打撃フォームや意識などで変えた部分はありましたか。

ブラッシュ 小さなことかもしれないけど、日本のピッチャーはタイミングがゆっくりというか、投球時にタメがあるので、少しスイングの始動を遅くするイメージは持っている。そういう小さなアジャストは必要だったと思っているよ。

──足を上げて打つブラッシュ選手は、タイミングを取るのに苦労することはないのでしょうか。

ブラッシュ まったく知らないピッチャーに対してというのは難しいけれど、ビデオを見たり、実際の試合の中でも事前に見て自分の中でタイミングを合わせることはできるので、タイミングは一番重要な部分ではあるんだけど、今のところ難しさはあまり感じていないよ。

──前半戦のご自身の成績は満足するものになっていますか。

ブラッシュ 自分の中でいい数字だなと感じている部分は多いよ。だけどスタートはすごく悪かったし、理想を言えばもっとできたんじゃないかと思う部分もある。自分自身に対する期待はもっと大きいものがあったので、今の数字に関しては満足しているとは言えないね。

──本塁打(21)と打点(62)ではいずれもリーグ3位と、好位置につけています(前半戦終了時点)。

ブラッシュ みんなが打っているときというのはその流れに乗せられる部分もあるし、彼らの打撃から試合中にヒントを得ることもできたりするからね。茂木(茂木栄五郎)、浅村(浅村栄斗)、ウィーラー、もちろんその3人だけではないけれど、彼らの打撃が好調なのも、その要因の一つになっていると思うんだ。それに打点というのは誰かが塁に出ていないと多く挙げられるものではないからね。そういった相乗効果というか、いいチーム、いいチームメートに恵まれたというのもあると思う。そういう意味では数字というのは個人のものではあるんだけど、ここまでの数字は自分だけではなくて、チーム全体で積み上げた数字じゃないかなと思っているよ。

一発を放って生還すると、相棒のウィーラーとハイタッチ。互いの存在が刺激となっているようだ


──ここまで21本塁打。長打への意識はありますか。

ブラッシュ あまりホームランを狙ったスイングはしないよ。3-0や2-0のカウントのとき、本当にたまに狙うこともあるけど、やはりホームランを狙うと力が入ってミスショットしたりファウルになってしまう。少しの狂いがいい球を打ち逃す、打ち損じることにつながっていくので、甘い球をしっかりたたくという基本的なことを心掛けている。それが結果的にホームランにつながることが多いからね。また、マイナー・リーグ時代のコーチに、「打ったホームランでお前が驚け」といつも言われていたんだ。だから狙うのではなく、甘い球を打ち返すことを大事にしているよ。

前半戦は本塁打を量産したが、その中でもチャンスでの一打が光っている


最大の目標は勝利


 日本独特の考え方や練習方法に戸惑いながらも、それを理解しようと努力を惜しまないのは、日本に来る前から日本の野球や文化について調べていたからだろう。エンゼルス時代のチームメートである大谷翔平からは、チームを決める上でも貴重なアドバイスを受けていたという。

──“野球”と“ベースボール”の違いをどこに感じていますか?

ブラッシュ バントやヒットエンドランが多く、外野手の守備位置も変わることが多い。日本ではそういった細かいことがゲームの中ですごくたくさん行われているから、プレーのスタイルではかなり違うと感じるね。

──練習面などで日本独特の方法に驚いたことなどはありましたか。

ブラッシュ 大きな違いとして、練習やトレーニングの考え方がすごく違うなと感じたよ。例えばアメリカだと、瞬発系のトレーニングを重視し、量より質がメーンの練習をする。でも日本ではどちらかと言うと量や(時間の)長さ的なものが重要視されているところがある。もちろんそういうところも重要だと思うんだけど、こういった量の多さというのは日本独特なんじゃないかな、と。日本の選手は本当によくトレーニングをするね!

──具体的にはどこでそれを感じますか。

ブラッシュ アメリカだと、試合前のバッティング練習は15〜20スイングくらい。でも日本では6分間打つんだ。これは本当に大きな違いだと思う。

──最初は驚きや戸惑いもあったのではないでしょうか。

ブラッシュ 日本に来る前に日本の野球の経験者にいろいろ聞いていたんだ。そのときに、「おそらく一番タフなのはスプリングキャンプはもちろん、シーズン中もとにかく練習が長いところ。そこは覚悟しておくように」と言われていたよ。

──エンゼルスで元チームメートの大谷翔平選手からも、いろいろとアドバイスをもらったそうですね。

ブラッシュ 日本のことに関してはたくさん話をしたよ。大谷とはバッティングのオーダーが近かったこともあり、よく見ていた。だから自分もすごく彼のファンになっていたし、日本のピッチャーが彼に対してどういったボールを投げるのか、そういうのも含めていろいろ話をできたのは良かったと思っているんだ。その中でも今一番自分の中でいいアドバイスだったなと感じるのは、「自分に合ったチームを探したほうがいい」ということ。「最初は絶対に難しいから、結果が出ないときにすぐ(二軍に)落とされてしまうようなチームではなく、たくさん機会を与えてくれるチームに行けば、必ず成功するから」と。そこはなるほどなと今感じているね。

──日米の違いで言うと、応援も大きな違いの一つだと思います。

ブラッシュ アメリカではヤンキースが来たとなると結構いっぱいになるけど、週末以外はあまり球場が満員にはならないんだ。でも日本ではいつもファンがたくさん球場に来て、初回の1球目から最後までみんなものすごくエキサイトしている。オーケストラ(音楽)もずっと休む間もなく鳴っていて、みんな楽しんでいるよね。そこはとても面白いなと思って見ているよ。

──日本の球場の中で印象的なものはありますか。

ブラッシュ 福岡(ヤフオクドーム)にはすごくエキサイトなイメージがあるね。その理由はおそらく、いつもいいゲームをするので、ファンの方々も試合中ずっと、すごい熱気を送ってくれるからではないかなと思うんだ。そういう意味で福岡がパッと今は出てきたけど、千葉ロッテとの開幕戦のファンの熱気やZOZOマリンスタジアムでの音量というのもすごく印象に残っているよ。ただ、プレーをするときにはここ(楽天生命パーク)がやっぱり一番好きだね。天然芝だし、屋根もないので、晴れているときはしっかりと太陽も青空も見える。このボールパークはすごく好きな球場だよ。

お立ち台で塩見貴洋[右]と恒例の「バーン!」。日本語のフレーズも覚えが早いという


──パ・リーグのチームの中ではソフトバンク戦での打率が一番高いです(.349、5本塁打)。球場の雰囲気の良さも影響しているのでしょうか。

ブラッシュ 一番いいチームということもあって、チーム全体でソフトバンクには負けられないという熱気や勢いみたいなものもあるんだ。7点差を逆転して勝利した試合もあったけど(5月8日、楽天生命パーク)、点差が開いてもみんなあきらめないで集中し続けるという空気があるので、自分も同じような雰囲気でプレーできているから打てているのかなと思っているよ。

──これから始まる後半戦の目標を聞かせてください。

ブラッシュ 個人的な目標というのは特にないんだけど、強いて言うなら前半戦と変えないことかな。いい球が来たら打って、悪い球は見逃すといった基本的なこと、今までやってきたことを続けることが大事になってくると思う。そしてイーグルスはプレーオフに行けるようなチームだと思っているし、自分も行きたいと思っているから、チームが勝つことが最大の目標だね。チームに貢献できるように頑張るよ。

安保健史通訳が語るJBの素顔 まじめな助っ人のお茶目な一面


安保健史通訳[右]英語もスペイン語も自由自在


 言葉を覚えるのが早く、チームメートがふざけて言った言葉でも一度で覚えてすぐに言葉にすることができるのがすごいなと思います。「なんで〜?」とか「いいよ〜!」とか一緒に言ってますね。コミュニケーションを取るのもすごくうまい選手ですよ。ただ、しっかりしているからあまり驚くようなエピソードはないんですけど、交流戦明けの練習日のときに、自分のロッカーに宋(宋家豪)君のユニフォームが入っていたらしく、まったく気づかずに「43」のユニフォームを着て練習していたことがありました。それを最初に気がついたのがウィーラーで、みんなに笑われていましたね。サイズは少し小さいはずなのになぜ気づかなかったのか……。お茶目な一面もあるんだなと驚きましたね。


PROFILE
ジャバリ・ブラッシュ●1989年7月4日生まれ。アメリカ領ヴァージン諸島セント・トーマス島出身。196cm106kg。2010年にMLBマリナーズに入団し、パドレスなどを経て移籍したエンゼルスでは大谷翔平とプレー。2019年に楽天に入団すると、6月からは四番を任されるなど、主軸として活躍中。浅村栄斗、ウィーラーらとともに、強力打線のキーマンとなっている。

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